恋した瞬間、世界が終わる -第37話「勇気の扉 -来るべき一瞬のために-」-

hougen

恋した瞬間、世界が終わる -第37話「勇気の扉 -来るべき一瞬のために-」-

第5部 来るべき一瞬のために編「第37話 勇気の扉 -来るべき一瞬のために-」

ーーかつての田舎道が見えてきた
 
 私の故郷によく似た光景だった

 
田んぼ

虫の音

カエルの声ーー
 
私の気持ちはそれで落ち着き、澄み渡った
 
 
ココの顔が浮かんだ

振り返ってみても、そこには道があるだけ。
誰の姿もなく、誰かの面影が立つこともない。

「ゲコゲコゲコゲコ」×1000

カエルの合唱隊が私の不安をもう一度、退けた。
今は前へと歩を進める時だ。


子供の頃、散歩道があったーー
 
私は歩くことが好きだった

何かに身を預けて進んでゆく感覚が好きだった。
自分の歩みが大地の上で一体となるのが好きだった。
こうして一歩一歩の感触が残る。
自然そのものが味方であるように感じた。

散歩道のコースは、あるところで曲がり道へと差し掛かる

分岐はなく、ただ、曲がり道へ。
その曲がり道は先を隠すような小道となっている。
それは一体、どこへ繋がるのだろうか?と。
子供の頃の私は不思議に思っていた。

その小道の先へと向かうには“勇気”がいる
 
好奇心だけでは入ってはならない。
子供の頃そんな雰囲気を毎回感じて入らないまま。
小道の先を知らずに田舎から離れていった。


だからこうして

かつての散歩道が私にまた訪れたのは、
今、来るべくして差し掛かった曲がり道だと。

その先にある小道へと、進んでゆくべきだと悟った。

胸ポケットにある“一輪の花”が、心強かった。


曲がり道へと入り歩みを進める

道幅は狭くなり植物の背丈が伸びてゆく。
低空飛行の鳥が地面の上を駆ける。
空気が冷やりと身体を撫でる。
鳥居のように控えた木々が待機する。

鳥の声が木々の間をすり抜ける。
そして、森の声が鳴る。
踏み入れた脚から循環する大地の音が聞こえる。

山林の中を私は進んでいる。
そんな感覚だ。
木々の隙間から熊が出てくる。
そんな恐怖が頭をよぎる。

木の葉が揺れ、木々がざわめき立つ。
何かに見られている。
気配だけが生々しく五感に刺さる。
一輪の花が胸ポケットにあることを確かめる。
手に伝わる感触により不安を退け、前へと進む。

深く潜ってゆく

色の濃さと、薄さ。
新旧が入り混じった自然の皮膚。
木漏れ日が一歩一歩の先を示す。
色艶で溢れて。

渓谷へと私は着く

自然が段差を作る。
水音が次第に増して聞こえる。
越えなければならない川が眼の前に現れる。
穏やかな流れを見て、今のうちにと思う。
川の中へ足を入れる。
膝下まで浸かり、水の流れが足をとる。
岩壁の奥に行かなければならない。

まとわりつく水の流れ。
気づいたら、身体が震えている。

寒いから?

小刻みになって震えている


夕暮れが始まる

木々の間に、ざわめきが走る。
自由の終わりを告げる気配に、鳥が逃げ出し空を駆ける。
木々の間から光の線が闇を秘め、体の影を地面に映す。

時間がないように感じる

早く、と。
気配が際立ち、身に迫る。
足早になった私は地面を駆ける。
容色を失いつつある地面。
そこからはもう木々は通り過ぎる過程に。
呼吸と律動でいっぱいになる。
余裕がもう失われる。

辺りはいつしか単調な色に変わっている

残酷に時を告げる

“黒”に染めてゆくーー

  

恋した瞬間、世界が終わる -第37話「勇気の扉 -来るべき一瞬のために-」-

次回は、10月中にアップロード予定です。

恋した瞬間、世界が終わる -第37話「勇気の扉 -来るべき一瞬のために-」-

ココ・シャネル アリュール 地上の上 路上 ログアウト マニュアル ビートニク 恋した瞬間、世界が終わる

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-18

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted