きせつはお淑やかな

雪水 雪技

きせつはお淑やかな

知らなかったあじ

甘過ぎた飲料水に潜んでいる
砂糖たちの内緒話が
泡になって浮上する

私は秘密を知ってしまい
心臓があばれまわる始末
飲み過ぎたあの液体、恨めしく

秘密はどれも知りたくなかった
知りたいことはここにはなくて
いつもどこか遠い時代のこと

それは秘密だから
誰にも言わず

今日も飲みほす

めいどいん

枯れ木に咲かせる花を考える仕事
当たり前のものを添えるため
何千もの言葉が飛び交った

季節の節々の会議に
鳥たちは騒がしくて

議事録はヒヨドリの声ばかりひろう
木々は大人しく微笑み意見しない

いつも難航しながらも
季節への歓喜を示すデザインの完成

神さまは笑う
人々も笑った

銀河のポストの色は

星々を座らせて
物語を演じさせる

それは楽しい時間だった
いつまでも空を見ては
笑ったり泣いたりして

世の中のこと少し忘れて

似たようなことを
有史以前から繰り返して

乙女座へ書いたファンレター
いつか届けと投函した
白い銀河のポストへ

途方もなく繰り返して迎えた今日へ

着替える日中夜

朝を脱いで
真昼のシャツを着る

あたためられたシャツに
心臓はあたたかくなる

ぼんやり眺める窓の外
日差しはぼやかされて
空は白くはにかんでいる

冷たい雫を落とすかどうか
雲のうでは迷っている

どうぞ、どしゃ降りをくださいな

微笑んだ瞬間、
冷たい雨はあたたかな土へかえる

埋め合わせたかったもの

くじらを釣る夢を見た
ともだちになろうとこころみた

僕が海にかえれないから
くじらは陸をあきらめたから

僕ら互いに空洞ができて
吹き抜ける風の音で
おはなしをする

さみしいのはなぜだろう
隙間を埋めようとするから

魂の会話を聞き取れず
摩耗する日々につかれたら

夢の中で再開しよう

ナイトシアター

アルコールに浸されたお菓子は
酔っ払って歌いだす

今夜のキッチン大賑わい
みんなラム酒の匂いに酔いだした

SF作品が食器棚にて上映中
お皿は宇宙の夢を見る

アルミの円盤は
床に転がっている

未知との遭遇
日常のスパイス

からいおさとうをひとさじ乗せる
曲がったスプーンに非日常を見る

自己完結

割れた心は戻らないから
新しい破片をくっつける

私はきれいだとおもって
みんなは歪だと言った

すれ違いが増えて
みんなから離れて

それでも夜風の心地よさ
雨の音のやさしさ
それをわかる心

人の感傷が隙間に入り込み
人の言葉ですぐにヒビが入る

合理から離れる程に
私は私を受容した

きせつはお淑やかな

お淑やかな雨が降る
やさしく涼しい秋の午後

木々のみどりはつづく
潔くいろづく日まで

気温は下がりつづけて
残暑は巣篭もり中らしく

季節の足音がする
いつもより早足だ

みのりおおき日よ、来たれ
まだまだそだつ僕らを見ていて

感謝を喜びを
深まる季節よ、
ひとつひとつ、
伝えさせて

和解

存在の限りなさ
存在の行きどまり

どこも同じで
未来と過去は
枕の上で討論会

文字に起こせば
紙がつぶれそうな
途方もない言葉数

夢を見ていたのは
叶えるために

大事なこと
忘れないで

つづいていくもの
のこしていくもの

私の時間と仲良くしよう

散らばる秒針

たくさんの懐かしいはステージの上
あらゆる年代をわかせている

大きな笑いがおきて
大人たちは上機嫌な子供にもどる

迷い込んだモノクロの世界
みんながいつかにもどる時刻

私の時間は何処だろう
あの日聴こえた音
あの日感じたもの

目を覚ませば
皆の頭の上に
変わらずに在るものたち

墨あわく

霧の中の大きな岩の上
桃を食べる太公望

竹の匂いは
雨季の訪れを告げていた

水無月には水墨画の世界に
ひとりのわらべが入り込む

ここの桃は年中熟れている
いつでもおいでと笑う仙人

兎がとんで満月浮かぶ
薬屋さんはお団子つくる

今日はお酒を飲みましょう
夜風も酔いに浸る長月の晩

散らかしたおもちゃ

知らない街で遊ぶ
夢の中を繰り返す
だんだんと浮かぶ
架空の地図

見覚えは無いのに思い出す

知らない人たちを
知っている夢の中
交じり合って
わらい合って

午前0時に店を出ると
すぐに午後になる空

休む間もなく歩き出す
終電を何度も見送って

興じたものたちが
枕元に散らばる朝

わたしをつづる私へ

夜風がめくる
白いページに
朱色のインク

誰かへ
わたしへ
つづる文字

あどけない季節は
いつかの夕闇にのまれて
目を開けたら今日になる

月明かりをたよりに
つづきのものがたり
今夜も紡いで千夜を超えて

ほんとうの今日を見つけて

受取拒否した重荷

雨の中
たくさんの宿題を抱えて
とぼとぼと濡れて歩いた

息つく間も無く来る電車に
みんなと乗るのが嫌だった

だから入る
知らないお店
知らない場所に
知らない思い出
なぜかあたたかい

それはここが夢だから

夢の中の思い出は膨らむ
膨張するもう一つの世界

あとは宿題を投げ出す勇気だけ

朝日はビーズになる

冷たい朝の水滴に
今朝までの夢が映り込む

まるい世界に果てのない不条理

連ねて円をつくる

七色、それ以上の
色彩が目に飛び込む

ひとつひとつの世界が
眩くかがやいて

宝石たちより希少な
多面体のきらめきを

手首に巻いて、祈る朝

焦土の上で別れよう

朝から夕闇がなだれ込んで
今朝の空は光がつよくて
現代を忘れた色をしている

人混みの色も変わる
私の見ている景色は
いつのものか定まらない

太陽がふたつあるみたいに
光ばかりが強くなって
新しい色が生まれて

朝焼けと夕焼けに
焼かれた街の上で
平静を保つ生活者

笑う日差しと睨む私

寂しい鳥箱

長いあいだのこと
おしゃべりも無く
話し相手を探す鳥

人の言葉は難しく
人の言葉は厳しく
人の言葉は刺々しく

やがて疲れ果て
飛ぶこともやめて
古びた巣箱で過ごす
朝も昼もずっと篭って

寂しいけれども
とても怖いから
仄暗い巣箱の中

頼りない電波塔を眺め

繋がらない電話をかけ続けて

時間にたゆたえ

開いた日記帳から
破片が落ちる
成し遂げられなかった
なげきの硝子

集めて小瓶のなか
太陽の光に当てる

少しずつ
少しずつ

破片につけられた
いつかの傷たちは
癒えてゆく

許すことは
飲み込むことでは無かった

時間の流れに横たわって
私のために祈る日々に浸る

許すことは祈ること

無常を塗りつぶすもの

今日見た赤が
明日には黒になる

毎秒の不安定を隠すため
日は常であると
言い聞かせる

虹は消える
雲は流れる

生きることは
成長して老いてゆくこと

誰かが叫んだ無常を
電車の音がかき消して

誰もがすました顔で
常なる日を思い込み

何も知らないふりをして
迫る1秒ずつやり過ごす

残酷な仕打ち

雨が染め上げた
コンクリートの黒を
日はさっさと消し去る

白白とした道の上
たしかに雨は降った
私は雨に濡れていた

それなのに
もう乾いてしまった

何事も無かったかのように
午後の日差しは全てを消した

雨など無かったかのように

日はさんさんと残酷に

私だけは覚えていよう

きせつはお淑やかな

きせつはお淑やかな

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-16

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted
  1. 知らなかったあじ
  2. めいどいん
  3. 銀河のポストの色は
  4. 着替える日中夜
  5. 埋め合わせたかったもの
  6. ナイトシアター
  7. 自己完結
  8. きせつはお淑やかな
  9. 和解
  10. 散らばる秒針
  11. 墨あわく
  12. 散らかしたおもちゃ
  13. わたしをつづる私へ
  14. 受取拒否した重荷
  15. 朝日はビーズになる
  16. 焦土の上で別れよう
  17. 寂しい鳥箱
  18. 時間にたゆたえ
  19. 無常を塗りつぶすもの
  20. 残酷な仕打ち