制裁

あおい はる

 はじまりの音は、詩の、孤独を紡いで光る、だれかのこころのなかの吐息。
 おわった世界から、すこしだけこぼれおちた、愛みたいなもの。つめたくなった、ただの残滓を、やさしいひとがかきあつめている。すてるのではない。あなたたちのために、保管しておくのだ。こわれないように、急速冷凍で。愛をしらないまま生きようとしている、かわいらしいあなたに。
 ぼくらは、寂びれた教会で、永遠に添い遂げることを誓い合った。しろくまは、慈しみ深い眼差しで、ぼくの指先に、小鳥が啄むようなキスをして、ぼくは、そのおおきなからだに抱きついて、しろくまの生をめいっぱい感じた。ゆるしてくれなくてもいい。愛をするふたりに、だれかのゆるしなどいらないと思った。ステンドグラスが、月明りを透かして、床板の上で穏やかに揺れて、ひとつ、またひとつと、埋没してゆく、どこかの街から、痛みだけが取り除かれて、かわいた砂になったときの虚しさを想像する。ぼくらをゆるさない、朝のバケモノは、平等におとずれるはずの夜明けを、ぼくらにはくれない

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-09-15

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