7 days

 都会の腐食は、じわじわと、熱が上がるみたいに、ひろがってゆくので、いっそのこと、切り落とせばいいと云ったのは、ネネだったか。残酷を、絵に描いたようなひとだと、だれかがネネのことを評して、まよなかに、狂って作動するセキュリティシステムが、奇声にも似た警告音を発する。わたしたちは、咲いたばかりのちいさな花で、天使の輪を編んで、想像が、理想を超えるとき、つめたい宇宙もそっと寄り添って優しく、体温をうばいさっていくのか。
 もうすぐ撤去される、電話ボックスのなかからみる朝陽は、やわらかさも、なんのまじりけもなく、あたらしい朝、うまれたての今日のおとずれを告げて、こわくなったわたしは、あと七日で崩壊する世界のことを描いた歌を聴く。ネネは、月の夜に砂に還って、わたしの好きだったきみは、あらゆるかなしみを集約した身体で、氷のなかで眠っていて、西の方の高層ビルは黒く変色し、すこしずつ低層になって、たゆたうのは輪郭のないさびしさだけだった。
 はやく、駅前のパンケーキやさんに行きたい、と祈るように思いながら、わたしは電話ボックスのガラスのかべに、ひたいをおしあてる。

7 days

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-09

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