生活

 地球という星の、可能性めいたものと、ティースプーン一杯ほどの、絶望感のミックス。街の心音。廃墟で重ねた、くちびるの温度。きみとわたしの、事切れた恋愛に救いはなく、二十三時に信仰している神さまに、跪いて許しを乞う誰かのつめたい指先の、ゆくえ。
 コンビニで、ふだんは食べないカップラーメンを買う。飲まないビールを買う。カップラーメンとビールの組み合わせは、なんて罪深いのだろうと心のなかで、大袈裟に嘆く。
 星は再生します。
 自己治癒能力があります。
 にんげんもそうです。
 免疫力。基礎体温。ストレス発散。睡眠。夜更かしはだめ。暴飲暴食も。ヘルシー志向。糖質制限。ダイエット。禁煙。健康診断は毎年受けましょう。体調が悪いときは無理せず休んでというけれど、ほんとうに休むと機嫌が悪くなる上司がいてムカつくという、インターネットのかきこみ。月経痛を理解してくれない社会。
 レジを打っているひとが、肉まんいかがですかぁと声をかけてくる。
 カップラーメンと、ビールと、チョコレートと、たばこと、それから、なんだかむしゃくしゃしてかごにいれた、コンドームと、肉まん。
 じゃあピザまんをひとつくださいと、わたしは美しく清らかで穏やかな女神になったつもりで微笑んだ。

生活

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-06

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