途方もないものからゆりかごまで

雪水 雪技

途方もないものからゆりかごまで
  1. 違う軸の上で
  2. 途方もないものからゆりかごまで
  3. 水脈
  4. 曖昧な思い出を埋める
  5. 天体模型は救難信号を送る
  6. 全てをゆるせたのなら
  7. 架空の二日酔いにて
  8. 恥じらいの紀行文
  9. refrain
  10. 穏やかな水槽をのぞいて
  11. この眼を信じるのなら
  12. 優先順位
  13. それでも掴むのなら
  14. かつて善人役だった私に
  15. 葡萄酒に救済を祈りながら
  16. クレヨン
  17. 閉ざされた居場所で独白を
  18. 断ち切っては後悔して
  19. 癒えないものの祈り
  20. 途方もない計画

違う軸の上で

君とは言語も意思疎通も
何もかも変わったということ

よく見せられた夢の中で
悟りに近い心地になる

私はひとりで
途方もない未完の中
狂わずにうたう人間だ

君がどこで何を思っても
私の宇宙に届くことはない

だから互いに不可侵で
だからどこまでも自由である

棄てたものをも力に変えて

途方もないものからゆりかごまで

ゆりかごの中で
みずいろの夢を見た

卵はみどりいろをして
孵化するとき砂時計をまわす

巣にこもったまま
飛び立てない日々は

途方もない安心と
途方もない不安が

マーブル模様になる空だった

姿が変わろうとも
私が飛ばない理由は
いつも私の中で寝息をたてる

ゆりかごの中で育つ夢を

水脈

無意識の棘は
心臓に入り込む

朝焼けと一緒に
胸はただれていく

痛みはどこかへと連れていくか
それともここへつなぎとめるか

わからないまま
海にもぐって
万能薬を探す

全てを許しても
譲らないものがある

それを煎じて飲む朝に
涙は棘を追いやるから

体の水脈は澱みなく今日も

曖昧な思い出を埋める

架空の思い出は
端末を肥えさせ
アルバムは劣化する

思い描くことは自由だから
沈む前に託した記憶媒体
さようならも言わずに
姿を消した文明たち

架空の思い出たちは
消えた記憶を補完する

パズルは永遠に完成しない
だからみんな諦めたり
ムキになったりする

麦わら帽子から
いつかのピース

天体模型は救難信号を送る

はじめてつくった天体模型
惑星の並びはばらばらだった

ひとつも興味がなかったのは
誰も迎えにこないから

どこにいても退屈で苦しくて
朝からSOSを送っているのに

いつも答えを出しみては
次には疑いだしている

回答欄すら見失う
誰もまるつけしないから

ちぐはぐの天体が
私に落ちてくる日

全てをゆるせたのなら

天体を抱いてねむりたい
大きくなった真我は
空間を泳いでいる

寂しいばかりの景色が
砂嵐に消えていく

オアシスにて
ラクダと過ごす

ひかげは優しさ
ひなたは寛容さ

体からの子守唄
旅のさなかで
覚えた歌を

光よりも早く届けたい衝動
天体劇場のチケット片手に
まるい宇宙を見つめて

架空の二日酔いにて

夢の中の引き金は
とてもかるくて
言われるがまま
撃ち抜いていた

破裂音で目覚める朝には
抜け落ちていく気がした

影は変わらずくっついて
私の実体を証明している

夢の中の正義感は
今朝の罪悪感

夢で開けた酒たちは
美酒だった気がするのに

何にも酔えないまま
現実が撃ち抜く痛みだけ

恥じらいの紀行文

誰にも読まれないために
作った文字と絵柄にて
夢の中で組み立てた文章
自分だけの言語で表現する

何世紀も燃やされることなく
何処かへ旅に出た手稿は
解読されることを恐れる

閉ざされた私の世界は
理解されないオーパーツ

安堵する今日

ニュースで見た遺跡の文字
同じ思いで刻まれた様相

refrain

不安定な音階が
夢の中でリフレイン

火の中から守り神
占い師の前で呟いた本音

既にカードは並べられ
伏せられたまま目を覚ます

信じるためのちからを
歩き出すためのたのしみを

何が覆っているのだろう

舞台から降りて
放浪を始めた時に
はじめて聞いた波音

信じたいと泣いた真昼

穏やかな水槽をのぞいて

草稿がただよう
部屋の中には
魚が一匹泳いでいる

誰も扉を開けてはいけない

この世界は流れる
ただよう草稿たち
魚も私も渦にのまれる

不条理だけが秩序の部屋で

眠りだけが優しかった
涙も流せないほど
不明瞭な窓の外より

この水槽の部屋はおだやかだった

この眼を信じるのなら

置いていく前に
教えてほしい

ついていけない私に
送るものなどいらないから

ガラス玉みたいな惑星に
お前が焦がれたことを知っている

私は触れられぬ芸術品より

傍らに乱雑に並べた
チープなレプリカでよかった

全部棄てて行くことが
互いの本懐だとしても

最後はその目で見たものを

優先順位

きざまれた物語
一番ちかい悲鳴を聞いて

どれか救えるのならと動く指先に
満身創痍の心が叫ぶ

いちばんを、わたしに
そうしなさい、そうでありなさい

誰かを助けられるなんて
思っては駄目よ、と天気予報

わたしを、わたしを見て
鏡の中で嗚咽する

誰からも奪わない
だからわたしも、

それでも掴むのなら

夕波が部屋までおしよせ
私の心をさらおうとする

どうぞ遠くまで
波まかせに

心は引き剥がされることなく
相変わらずわたしとひとつだ

何を期待していたのだろう

ひりつく日々に
泣き出したい今日に

捧げてしまおうとする
それは、厭と言う心に

言い訳も思い浮かばぬまま

かつて善人役だった私に

この舞台裏で泣いている
その人の声が聞こえて
私は自分の役をおりる
いつも、そうだった

人と人が擦れ合うのが
激痛になる日には
もう動けなくなる

嘘をつく人より
嘘を嘘と思わない人

悪人より
悪意の不在の人

恐ろしくて、いつも、
私はうまくできなくなる

声を殺して、
泣いている、私へ

葡萄酒に救済を祈りながら

赤い楽譜に囲まれて
私だけのタイトルを付ける

報われなかった音たちが
奔放な幻想を魅せる

似たような感情に苛まれ
どこにも安らぎがなくても

猫たちが歌う夜に迷う
ワインの色をした目を見つめて

この幻想が終わる前に
私の願い事を言おう

クレヨン

きみを塗りつぶした
クレヨンが折れた

気にしないで、
そう言って
破いた画用紙

いつか画鋲でとめられる
それと同じことだと
きみとはじめて話した金曜日

多分夢だとわかっていたけど
初めて出来た友達に開いた心

月曜日に荒らされないように
鍵をかけて出かけた先で

新しいクレヨンが売れた

閉ざされた居場所で独白を

真夜中に嫌なものをスクロールして
精神汚染のまま何かをさがしている

きもちわるいのは、私

知っているならタチが悪い
だから、ごめんなさい

切った電源が、
再び点灯しないよう

よくよく見張りなさいとの声

隙間に何も入れてはならぬ
硬く閉ざしたモノローグに
誰もアクセス出来ない夜半

断ち切っては後悔して

日々のできごとが
積み重なるのは幻

今日と昨日は続かない
いつも最新の型になる

それは辻褄が合わない
昨日の約束も無くなる

クレーム殺到で
昨日と今日は繋がる

配線は混濁する意識
望んだことがらに
がんじがらめ

だから切った
繋がるものを

そして、
やはり寂しいと
問い合わせる今日

癒えないものの祈り

遮断されたものが
吹き出して

まだ痛む場所がある

どんな言葉なら届くのか
自分でもわからなくなる

もう誰とも繋がらない
そう泣き叫んだ日

わからないことがわからなかった

アルコールや仲間意識
麻痺させていた日々のツケ

今は贖罪ではなく救いであれと
願った午後、分離した私へ届けた

途方もない計画

この先にさらなるものを生む
両手を広げて笑って魅せた

春夏秋冬の喜びと感傷を
天秤にかけたりしない

天と地のどちらが重くて
海と陸のどちらが偉いか

そんな瑣末なことにこだわらない
こだわっていたことを懐かしみたい

そんな話をしながら
花を植えた今日

土のにおいと
咲いた笑みに

途方もないものからゆりかごまで

途方もないものからゆりかごまで

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-09-06

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