ぼくらがひとりでいる理由

孤独に思われたかのようなひふ
痛みがひとりでにうずくまる
きみのかげに隠れて、
ちりぢりになった夢の
縫い目になる

あまだれが、しづかに終わる
透明な膜が
ぼくらを包んで離さない

普段は目にすることのできない
それぞれが抱えた痛みが
たましいの内側から発光して、
梅雨の鋪道を照らしている

傘のハンドルが社会とぼくの心の距離
象徴して瞬く、さよならの合図

手を伸ばして
きみのからだに触れようとするほどに、
この雨傘がぼくときみの距離
遠のかせている

魂の奥底に眠るやわらかな心
世界から隠しておきたくてぼくら

生まれてから死ぬまでずっと、
傘を
手放せないでいる

ぼくらがひとりでいる理由

ぼくらがひとりでいる理由

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-09-05

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