皇位継承

浅野浩二

ここは、ある国である。日本でないことは間違いない。ここを強調しておきたい。
なんせ、皇室について書くと、宮内庁がうるさい。もっとも、この程度の内容なら、宮内庁も、何も言ってこない。のは、明らかである。
ある立憲君主制の国である。天皇がいたが、君臨すれども統治せず、であった。天皇制は、この国が、国家として成立した2000年、前から代々、続いている。さらには、それ以前の、この世が出来る、神話の時から続いているが、その神話の内容の真偽は、疑わしい。
このような長い期間のエンペラーがいる国は、世界でも、この国だけである。
ある宮家があった。その宮家の、父親は、今生天皇(現天皇)である。
今生天皇には、男の子供が二人、いて、彼は、次男である。
なので、皇室典範からすると、彼は、二番目の、次期天皇候補である。
長男である、皇太子殿下より、歳は、五歳、年下である。
1990年、次男である弟は、皇太子殿下より、先に結婚した。
物凄く、美しい人と。
その時の、国民の喜びようといったら、なかった。
もちろん、祝賀パレードでは、二人が、二人の結婚を祝福する、沿道の国民に、手を振って、答えた。
しかし、当然のごとく、国民の目は、美しい新婦にだけ、向けられていた、ことは、言うまでもない。
皇太子は、口惜しがった。
「あーあ。残念。先を越されたな」
と、皇太子は、呟いた。
皇太子の妻となると、将来の、妃殿下となり、鼻が、痒くても、?くことも、出来ない立場になり、公務で、追われる毎日になり、そんな、堅苦しい、人生は、誰も送りたくないから、なかなか、結婚相手が見つからなかった、のは、仕方のないことである。
しかし、ようやく、皇太子にも、結婚相手が見つかった。
そして、弟に、三年、遅れて、1993年に、結婚した。
もちろん、皇太子の新婦も、美しい人だった。
しかし、祝賀パレードでは、弟の結婚の時の、国民の、熱狂よりは、劣っていた。
それは、当然、国民は、新婦にしか、興味がないから、そうなるのは、当然といえば、当然である。
・・・・・・・・・
弟の宮家は、その時、すでに、二人の子供を産んでいた。
しかし、残念なことに、二人とも、女の子だった。
皇室典範から、すると、天皇の皇位継承は、男である方が、歴史的にみても、絶対、いいのである。
二人の、女の子は、すくすくと、優しい父と母と、SPに、見守られながら、育った。
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国民は、皇太子夫婦に、男の子が、生まれることを、切に望んだ。
皇太子妃殿下も、やっと妊娠して、子供を産んだ。2001年である。
しかし、残念なことに、生まれたのは、女の子だった。
学者や、政治家たちも、皇位継承問題に頭を悩ませた。

弟も、皇位継承問題に頭を悩ませた。
「よし。ここは、ひとつ、オレが、頑張ってみよう」
と、弟は、思った。
それで、毎晩、頑張った。
「あなた。いい歳をして、どうしたの?」
と、妻は、問いかけた。
ともかく、弟は、毎晩、頑張り続けた。
何を頑張ったかを、具体的に書くと、宮内庁が、不敬だと、怒るから、具体的には、書けない。
当然、天照大御神に、
「神よ。どうか。妻に、男の子を宿して下さい」
と祈りながら。
その祈りが、天照大御神に届いたのであろう。
ついに、妻は、男の子を宿した。
そして、10月10日、して、美しい妻は、男の子を産んだ。
下の姉より、12歳、歳が離れていた。
名前は、久、とつけられた。
国民も喜んだが、学者たちも、
「よかったー。これで、皇位継承問題で悩まなくてすむ」
と、ほっと、肩の荷を降ろした。
生まれた男の子は、すくすくと、育った。
美しい母親と、優しい、二人の姉に見守られながら。
上の姉は、しっかり者で、子供の頃から、自分の身分を、何となく、気づいていて、記者が集まってくると、「こんにちはー」と、笑顔で挨拶した。
妹も、美しくて、優しい母親と、上の姉に見守られながら、すくすくと元気に育った。
しかし、美しい母親の遺伝子が、下の娘に、もろに、伝わって、下の妹は、育つにつれて、どんどんと、美しくなっていった。
メディアも、国民も、海外の国々も、下の妹ばかりを、注目して、写真を撮った。
「お姉ちゃん。ごめんね。私ばかり、注目されてしまって」
ある日の夕食の時、妹が、ボソッと呟いた。
「いいわよ。私。そんなこと、全然、気にしてないわ。それより、あなたのような、綺麗な妹をもつことが出来て、私は、嬉しいわ」
と、優しい姉は言った。
・・・・・
一方、歳の離れた、弟も、すくすくと、育っていった。
幼稚園は、皇室の子女には、異例で、お茶の水大学付属幼稚園に入った。
ある時。
チャボの飼育を当番でしている時、友達に、
「いいなー。君は。働かなくていいんだから」
と、羨ましそうな口調で言われた。
「なんで僕が働かなくてもいいの?」
少年は、疑問に満ちた目で聞いた。
「だって、君は、将来、天皇になるんだよ」
友達は、言った。
「天皇って何?」
少年は、聞いた。
「日本の象徴さ。君の、おじいちゃん、みたいな、立ち場の人に、将来、君は、なるんだよ」
友達は、そう説明した。
「ええ。そうなの?でも、おじいちゃんも、色々と、忙しいみたいだよ。外国の貴賓と、会ったり、国事行為とやらを、やったり。日本の、どこかで、震災が起こったら、いつも、かけつけているから・・・」
少年は、言った。
「そうだね。確かに、そうだね。考えてみれば、天皇や、皇族も、楽じゃないね。鼻クソを、ほじくりたくても、ほじくれないんだから。おなら、を、したくても、我慢しなくちゃならないんだから」
友達は言った。
「僕。鼻クソを、ほじくりたくても、ほじくれないの?おなら、を、したくても、我慢しなくちゃならないの?」
少年は聞いた。
「そうさ」
「でも、僕、家では、鼻クソを、ほじくっているし、おならも、しているよ」
「家では、出来るんだよ。人前に出たら、出来ないのさ」
友達は、そう説明した。
「嫌だなー。そんなの」
少年は、言った。
「でも、君が天皇になるのは、ずっと、先のことだよ。まず、君の、伯父さん、つまり、君のお父さんのお兄さん、が次の天皇になるんだ。今から、最低30年は、君は、天皇にならなくて、すむね」
友達は、そう説明した。
「そうなの。それを聞いて、安心したな。お姉ちゃん達も、皇族は、堅苦しくて、嫌だー、って、毎日、言ってるよ」
少年は、言った。
「ねえ。ずっと、先の話だけど、君が天皇になったら、僕を、君の侍従長に、してくれない?」
「僕に、そんなこと、出来るの?」
「出来るさ。ねっ。友達のよしみで。天皇の侍従長なら、楽そうだし・・・」
「わかったよ。じゃあ、将来、僕が天皇になったら、君を侍従長にしてあげるよ」
「約束だよ」
「うん」
そう言い合って、二人は、指切りゲンマンを歌った。
・・・・・・
そうこうしているうちに、少年は、お茶の水大学付属幼稚園を卒業した。
そして、その年の春、少年は、お茶の水大学付属小学校に入学した。
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少年は、小学校で、女子生徒に引っ張りだこ、だった。
「ねえ。久君。将来、私と結婚して」
と、ほとんど、全校の女子生徒が、少年に、言い寄った。
しかし、少年は、何と、答えていいか、わからなかった。
・・・・・・・・・
ある時。少年は、家で、パソコンで、インターネットを見ているうちに、エッチなサイトに辿り着いた。
少年は、股間の一部分が、固く、大きく、なってきた。
それで、股間の一部分を、揉んでみた。
そうすると、だんだん、気持ちよくなってきた。
・・・・・・
少年は、それが、クセになってしまった。
学校でも、綺麗な女の先生を見ると、股間の一部分が熱くなってきた。
ある日の夕食の後。
下の姉が、少年の部屋に入ってきた。
上の姉は、イギリスの大学に留学中で、いなかった。
「久君。どうしたの。この頃、変よ。悩み事があったら、聞くわ。話して」
下の姉が、歳の離れた、幼い、弟に聞いた。
弟は、正直に、悩みを話した。
姉は、黙って聞いていたが、
「わかったわ」
と言って、弟の頭を、優しく撫でた。
そして、弟の部屋を出ていった。
・・・・・・・・
翌日の放課後。
トントン。
「久君。入っていい?」
戸の外から、姉の声が聞こえた。
「うん。いいよ」
少年が、戸を開けると、見知らぬ、きれいな女の人が、ニコッと、微笑んで、立っていた。
姉は、その女性を、少年の部屋に入れた。
「久君。紹介するわ。この人は、私の同級生で、私の友人なの」
姉は、そう弟に紹介した。
「こんにちは。久君。私。国際キリスト教大学の一年生で、お姉さんの友達です」
と、ペコリと頭を、下げて、挨拶した。
「は、はじめまして。久です」
と、少年は、顔を真っ赤にして、挨拶した。
「話は、お姉さんから、聞きました。久君が悩んでいると・・・。私でお役に立てることがあれば、と思いまして・・・やって来ました」
女性は、そう挨拶した。
弟は、顔を真っ赤にしている。
「それじゃあ。二人で、仲良くして」
そう言って、姉は、部屋を出ていった。
・・・・・・・・・・
それ以来、その女性は、頻繁に、久の家に来るようになった。
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元号が変わって、少年の伯父の、皇太子が天皇になった。
・・・・・・
しかし、ある国に、表敬訪問として、訪れるために、乗った飛行機が墜落してしまった。
飛行機には、新陛下も久の父親も、乗っていた。

こうして、久が天皇になった。
久は、お茶の水大学付属小学校の時に、親しかった同級生の女性と結婚した。
二人の間に、子供が生まれたが、女の子ばかりで、男の子は、生まれなかった。
久も、月日の経過と共に、歳をとっていった。
学者や、政治家たちは、また、皇位継承問題で頭を悩ませるようになった。
しかし、ある女性が、マスコミに名乗り出た。
彼女は、
「私には、子供がいます。男の子です。その父親は、天皇陛下であらせられます」
と、堂々と言った。
マスコミは、吃驚した。
しかし、DNA鑑定から、間違いなく、父親は、天皇であると、証明された。
学者たちは、皇位継承問題が解決されて、ほっと肩の荷を降ろした。
「ふふふ。成功。成功」
テレビを観ていた、久の姉は、子供の時と変わらない子供っぽい笑顔で、ペロリと舌を出した。


「この話はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません」


平成27年5月15日(金)擱筆

皇位継承

皇位継承

  • 小説
  • 短編
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-09-05

Copyrighted
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