消費税10%増税物語

令和元年10月1日(火)、消費税が、10%、に増税された。
ある町の、ラーメン屋、(幸楽園)、のことである。
店主である、M氏は、もう、自分のラーメン屋、(幸楽園)、の、経営は、無理だと、あきらめた。
なぜなら、他の、ラーメン屋の、チェーン店、(バーミヤンなど)、では、10%の、消費税を、課されても、それを、そのまま、加算した、料金、として、しまうと、客足が遠のいてしまうから、それを、恐れて、今までの、値段で、ラーメンを売ろうと決めたからである。
ラーメン屋のチェーン店でも、10%の消費税は、もちろん、かかるが、それは、コストとして、とらえ、コストが上がることによって、店の利益は、下がるけれど、採算は、とれるので、ラーメン屋の経営は、出来るのである。
しかし、幸楽園、では、今まで、何とか、経営できていたが、チェーン店、(バーミヤン)、に、客を奪われて、どんどん、経営が、苦しくなり、とうとう、損益分岐点となり、さらには、操業停止点、を、下回ってしまった。
そこに、さらに、消費税の、10%の、増税である。
M氏には、美しい妻、(サチ子)、と美しい娘、(洋子)、がいた。
M氏には、B氏、という、東証一部上場の、一流企業の、取締役である、従兄弟がいた。
B氏は、昔、若い時、М氏が、サチ子と結婚する前の時、内心、サチ子を、愛していた。
サチ子も、内心、B氏、を、愛していた。
二人は、互いに、相手を心の中で恋していたが、M氏は、気が小さく、サチ子に、愛を告白することが、出来なかった。
М氏は、(もし、サチ子、さんに、愛を告白して、断られたら)、と思うと、恥ずかしくて、生きていけない、と思っていたのである。
サチ子は、そのため、M氏、と、結婚した。
結婚して、翌年には、娘の、洋子、が、生まれました。
洋子は、すくすく、と、成長して、美しい女子高生になった。

令和元年10月25日、のことである。
M氏は、従兄弟の、B氏、と、ほとんど、話したことが、なかった。
M氏が、今の妻、サチ子、と、結婚した、18年前、に、B氏が、二人を祝福するために、結婚式に出席したのが、二人が会った最後の日だった。
しかし、結婚した翌年、娘の、洋子、が、生まれ、すくすくと、育ち、中学生になった、ある日、妻、サチ子、は、夫に、自分の思いを、正直に、言った。
もう、結婚して14年も経っていることだし、娘も、父親も、母親も、好きで、また、父親も、母親も、娘を目の中に入れても痛くないほどに、愛していて、幸せな家庭を、築いてしまっているので、夫に、自分の心を正直に、話しておこうと、思ったからである。
「あなた。今だから、正直に言うけれど・・・。私は、あなたが、好きだわ。でも、本心では、あなたの従兄弟の、Bさん、も、好きだったの。愛する、度合い、は、あなた、と、Bさんで、ほとんど同じだったわ」
と、妻、サチ子、は、言った。
「そうだったのか。僕も、そうではないかと、うすうす、思っていたんだ」
と、夫は、言った。
「でも、Bさんは、私に、何も言わないでしょう。だから、私に、愛を告白した、あなた、と、結婚することにしたの」
と、妻、が、言った。
「そうだったのか。でも、まあ、今となっては、昔のことだからね。別に、何とも思っていないよ」
と、夫が、言った。
それから、3年が、経った。
昭和天皇が、退位し、皇太子が、天皇となって、「令和」、の時代になった。
娘は、すくすくと、美しく、育ち、高校生になったが、M氏の経営する、ラーメン屋、(幸楽園)、は、大手の、ラーメン、チェーン店に、圧され、経営は、どんどん、悪くなっていった。

ある日のことである。
М氏は、従兄弟の、B氏に、電話をかけた。
「やあ。B君。久しぶり。久しぶりに会わないか?」
と、М氏。
「やあ。М君。久しぶりだね。会ってもいいが、何の用かね?」
と、B氏。
「それは、会ってから、話すよ」
とМ氏。
「わかった。会おう。ところで、いつ、どこで会う?」
とB氏。
「今日、君の仕事は、何時に終わる?」
とМ氏。
「今日は、午後5時に、仕事は終わりだ」
とB氏。
「じゃあ、今日の、午後5時に、君の会社のビルに行くよ。僕は、1階のロビーで、待っているよ」
とМ氏。
「わかった」
とB氏。
М氏は、午後3時に、家を出た。
そして、電車に乗って、B氏の、会社のビルの、1階のロビーで、B氏を待った。
時刻は、午後4時30分、である。
午後5時になると、従兄弟の、B氏が、1階のロビーに、手を振りながら、やって来た。
「やあ。久しぶり」
と、B氏が言った。
「君と会うのは、18年、ぶりだね」
と、M氏が言った。
「そうだね。君の結婚式に出た時、以来だね」
と、B氏が言った。
「ちょっと、喫茶店に入って、話さないか?」
と、M氏が、誘った。
「ああ」
と、B氏も、同意した。
二人は、近くの、喫茶店、ルノアール、に、入った。
二人は、窓際のテーブルについた。
そして、サンドイッチ、と、アイスティー、を、注文した。
「久しぶりだね」
と、M氏。
「ああ。君の結婚式、以来だね」
と、B氏。
「君の会社の経営は、どうかね?」
と、M氏が聞いた。
「まあ。順調だね。安倍政権は、大企業を、優遇してくれているからね。内部留保は、たっぷりあるし、大企業の法人税の税率は、低いからね」
と、B氏が言った。
「じゃあ、10月からの、消費税10%の増税も、こたえないんだね?」
と、M氏が聞いた。
「そうだね。ほんの多少は、厳しいが、それで、会社が、潰れることは、まず、考えられないね」
と、B氏は、言った。
「そうか」
と、M氏は、納得したような顔で、言った。
「ところで、君の、ラーメン屋、は、どうなんだね。消費税10%の増税は、こたえるんじゃないのか?」
と、B氏が聞いた。
「いや。大丈夫さ」
と、M氏は、本当は、大丈夫では、ないのに、ウソを言った。
「そうか。それは、よかった」
と、B氏は、嬉しそうな顔で、言った。
「ところで、君は、僕の妻、サチ子、のことを、どう思っているかね?」
と、M氏。
「どうって、一体、何を、どう思う、ことなのかね?」
と、B氏は、顔を真っ赤にして、言った。
(彼は、今でも、サチ子、を愛している)
と、M氏は、B氏の、赤面した顔から、確信した。
「実はね。5年ほど、前に、サチ子、が、僕に言ったんだ。(私は、僕と君を、同程度に愛していた。そして、君が、自分に何も言わないから、僕と結婚することに決めた)、とね」
と、M氏は、言った。
「そ、それは、本当か?」
B氏は、身を乗り出して、目を白黒させて、言った。
(彼は、今でも、サチ子、を愛している)
と、M氏は、B氏の、あわてた様子から、そう確信した。
「ああ。本当さ」
と、M氏は、言った。
「そうだったのか」
と、B氏は、ガックリと、肩を、落とすような、後悔の念に、悔やんでいるような、口調で、言った。
(彼は、今でも、サチ子、を愛している)
と、M氏は、B氏の、がっかりした様子から、そう確信した。
「君は、僕の妻のことを、どう思っているのかね?」
と、M氏。
「今だから、言うが・・・。実は・・・僕は、サチ子、さんを、好きで好きで、しょうがなかったんだ。しかし、恥ずかしくて、サチ子、さんには、告白できなかったんだ」
と、B氏。
「今は、どうなんだね?」
と、M氏が聞いた。
「今でも、好きさ」
と、B氏は、心のわだかまり、が、とれたように、はっきりと言った。
「実を言うと、今でも、僕が、独身をつらぬいているのは、サチ子さん、が、好きだから、なんだ。僕は、本当に好きでもない女性と、結婚する気には、なれないからね。社会人になって、世間的な立ち場上、結婚した方がいい、と、両親に、強く言われて、C子さんと、見合い結婚したけれど、結局は、続かなかったね。1年で、離婚してしまったよ。それは、僕が、C子さんを、愛していなかったからさ。僕が、本当に好きなのは、サチ子さんだけなんだ」
と、B氏は言った。
「そうか。それを聞いて、安心したよ」
と、M氏。
「安心した、というは、どういう事なのかね?」
と、B氏は、眉を寄せて、聞いた。
「もしも、の話だよ。もしも、僕が、交通事故にあって、死んだら、その時は、サチ子、と、結婚してくれないかね?」
と、M氏。
「物騒なことを、言わないでくれ。君は、健康で、仕事も、順調なんだろう?」
と、B氏。
「ああ。順調さ。でも、何が起こるか、わからない、世の中だ。毎年、どこかで、豪雨災害、が起こっている日本だ。首都直下地震だって、明日、起こるかもしれない日本だ。いつ、どこで、高齢者ドライバーが、突っ込んてくるか、わからない日本だ。万一のことを、考えておいても、悪くはないだろう?」
と、M氏。
「それは、確かにそうだがね」
と、B氏。
「では、もし、僕の身に、何かあったら、僕の妻、サチ子、の面倒をみてくれないかね?」
と、M氏。
「ああ。いいとも。喜んで、面倒みさせてもらうよ」
と、B氏。
「それを聞いて、安心したよ。約束は、守ってくれよ」
と、M氏。
「ああ。必ず、守るとも」
と、B氏。
「そろそろ、出ようか?」
「ああ」
そう言って、二人は、喫茶店、ルノアールを出た。

家に帰ると、妻の、サチ子、が、掃除していた。
「あなた。お帰りなさい。どこへ行っていたの?」
妻は、掃除機を止めて、夫を見た。
しかし、夫は、黙っている。
夫は、黙って、食卓の椅子に座った。
妻の、サチ子も、食卓の椅子に座った。
「まあ、ちょっと散歩だ」
と夫。
「今年の10月から、消費税が、10%、増税されたわね。あなた。うちは、大丈夫なの?」
と妻。
夫は、妻に、心配をかけないよう、店の経営のことは、隠していた。
「いや。今だから、言うが、もう、(幸楽園)、は、やっていけそうもないんだ。もう、店じまいして、何か、他の仕事を、探さなくては、ならないな」
と夫。
「そうだったの。そんなこととは、知らなかったわ」
と妻。
「オレは、ラーメン、中華料理、一筋に生きてきたからな。どこかの、中華料理屋、で、働こうと思う」
と夫。
「そう。(幸楽園)、が、なくなってしまうのは、残念ね」
と妻。
「まあ、仕方がないさ」
と夫。
「ところで、お前は、今でも、オレの従兄弟の、Bを好きかね?」
と、夫が聞いた。
「何を突然、言い出すの?」
と妻。
「まあ、いいじゃないか。Bを、好きなのか、どうか、答えてくれ」
と夫。
「え、ええ。好きよ」
と、赤面した妻。
「オレよりか?」
と夫。
「いえ、そんなことは、ないわ」
と妻。
「じゃ、オレより、下か?」
と夫。
「そうでもないわ」
と妻。
「じゃあ、お前の気持ちは、どうなんだ?本当のことを教えてくれ」
と夫。
「そうね。映画、(シェーン)、で、ジョン・スターレット、の妻の、マリアンが、夫の、ジョン・スターレット、と、シェーン、の、両方を、好きになってしまうでしょ。あれと、同じよ。甲乙つけがたいわ。あるいは、竜虎相譲らず、というか、不倶戴天の二人、というか、両横綱、というか、両雄並び立たず、というか、武田信玄と上杉謙信、というか、どんぐりの背比べ、というか・・・・そんな感じで、決められないわ」
と妻。
「そうか」
と夫。
「ねえ。ママ。ママには、パパ以外にも、好きな人がいるの?」
と、娘の洋子が、入ってきた。
「あら。洋子ちゃん。聞いていたの?」
「うん」
と娘。
「ねえ。ママ。ママには、パパ以外にも、好きな人がいるの?」
「そ、それは・・・」
妻は答えられなかった。
「洋子」
「なあに?パパ」
「お前は、私の従兄弟の、Bおじさん、が、好きか?」
父親が娘に聞いた。
「ああ。Bおじさん、のことだったのね。ママが、好きな人って」
勘のいい娘はすぐに、察知した。
「お前は、Bおじさん、が、好きか?」
再度、父親が娘に聞いた。
「好きよ。私。前、一度、Bおじさんの、家に行ったことが、あるわ。Bおじさんの、息子の、純君も、優しくて好きだわ。あの時、純君は、勉強を、わかりやすく教えてくれたわ。そして、その後、ボーリング場にも、連れていってくれたわ。とても楽しかったわ」
と娘。
「ああ。そうね。数年前に、あなたは、Bおじさんの、家に行ったことがあったわね」
と妻。
「そうか。それなら、よかった」
と夫。
「でも、どうして、そんな事、聞くの?」
と娘。
「・・・・」
父親は、黙って、それには、答えなかった。

父親のM氏は、中華料理店のコックの募集を探した。
幸い、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で、コックの募集を、M氏は、見つけた。
以前から、その募集を、М氏は、知っていた。
なので、B氏は、その募集に応募した。
採用するか、どうか、の面接が行われた。
M氏は、そこで、自慢の、ラーメン、を、作ってみせた。
もちろん、M氏の、(幸楽園)、は、中華料理店なので、ラーメン以外でも、チャーハン、や、餃子、五目焼きそば、チャーシュー麺、麻婆豆腐、ホイコーロー、なども、作っていたので、それらをも、作ってみせた。
試食した、採用担当の係りの人達は、「美味い。美味い」、と言いながら、言って、食べ、M氏を、即、採用とした。
こうして、М氏は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地で、コックとして働くようになった。
防衛省市ヶ谷庁舎の、自衛隊員達にも、M氏の、作る、中華料理は、大人気となった。
ある時。
昼食の後、1等陸佐が、М氏の所に、やって来た。
「Мさん。総監が、私も、Mさんの、作るラーメン、を、ぜひ食べてみたい、と言っているのです、作って頂けないでしょうか?」、
と、厨房のM氏に、依頼に来た。
「どうかね、総監のために、ラーメン、を、作ってくれないかね?」
と、1等陸佐が、M氏に言った。
「わかりました。それでは、腕に寄りをかけて、お作り致しましょう。しかし、今日はもう、昼食の時間は終わってしまいましたから、明日でも、よろしいでしょうか?」
とМ氏は聞いた。
「ええ。構いません」
と、1等陸佐は言った。
「わかりました」
とМ氏は、言って、その日は、5時に、仕事を終えて、家に帰った。

その翌日である。
その日は、令和元年11月25日だった。
「では、行ってくる。サチ子。もし、万一、交通事故とか、不慮の事故で、オレが、死ぬようなことがあっても、その時は、B氏と、再婚してくれないか?」
と夫。
「あなた。何をあらたまって言うの?」
と訝しそうな表情で言う妻。
「お父さん。行ってらっしゃい」
と、嬉しそうな無邪気な娘。
「洋子。体には、くれぐれも気をつけてくれ」
と夫。
「うん」
と娘。
父親は、娘の洋子を、ギュッ、と、抱きしめた。
「では、行ってくる」

М氏は、陸上自衛隊市ヶ谷駐屯地に行き、厨房に入り、昼食のための、中華料理を、作り出した。
そして、昼食の時間になった。
自衛隊員達は、「旨い。旨い」、と、言いながら、М氏の、中華料理を食べた。
昨日の、1等陸佐が、М氏の所に、やって来た。
「Мさん。総監用の、ラーメン、を、一つ、頂けないでしょうか?」
1等陸佐が、聞いた。
「ええ。用意は、出来ていますよ。あとは、麺をゆで上げるだけです」
と、М氏は、言った。
「ぜひ、お願い致します」
と、1等陸佐。
「わかりました」
とМ氏。
М氏は、麺を、ゆで上げ、スープの中に、入れた。
そして、チャーシュー、煮卵、のり、を、乗せた。
「はい。出来ました」
とМ氏。
出来上がった、ラーメン、を、1等陸佐、が、
「どうも、ありがとうございます。総監室に、持って行きます」
と言って、受け取ろうとした、所を、M氏は、止めた。
「いえ。私が、総監室に、お届け致しましょう。総監が、私の、ラーメン、を、食べて、どんな、感想を言うか、ぜひ、聞いてみたいのです」
とM氏。
「そうですか。それでは、ちょっと、そのことを、総監に聞いてみましょう」
と1等陸佐、が、言って、内ポケットから、携帯電話を、取り出して、ピッピッピッ、と、操作した。
「もしもし。総監。Mさんが、ぜひ、自分が、直々に、総監に、お届けしたいと言っているのですが・・・いかが、でしょうか」
と、1等陸佐、が、言った。
すぐに、1等陸佐、は、
「はい。わかりました」
と、言って、携帯電話を切った。
そして、M氏を見た。
「総監は、ぜひ、あなたに、会いたい、と、言っておられます。ラーメン、を、すぐ、持って行って下さい」
と、1等陸佐。
「わかりました。では、すぐに、総監に、ラーメン、を、お届け致します」
M氏は、出前用の倹飩箱に、ラーメン、を、入れると、すぐに、総監室に、倹飩箱を持って走って行った。

トントン。
「誰かね?」
総監室の中から、声がした。
「Mです。ラーメン、を、持ってきました」
すると、すぐに、総監室の戸が開いた。
「ああ。Mさん。どうぞ、どうぞ。お入り下さい」
「失礼します」
そう言って、М氏は、総監室に入った。
「あなたの中華料理は、自衛隊の隊員達の間で、大人気ですよ」
と総監。
「総監。そんなことより、ラーメン、を、早く、食べて下さい。ラーメン、が、のびてしまいますよ。お話は、その後で、お願い致します」
とM氏。
「ああ。確かに、そうですな」
М氏は、倹飩箱から、ラーメンを取り出して、総監に差し出した。
「どうぞ」
総監は、
「では、頂きます」
と言って、ラーメンを食べ始めた。
総監は、「旨い。旨い」、と、言いながら、ハフハフ、熱いラーメン、を、食べた。
ラーメンを、食べ終わると、総監は、
「はー。食った。食った。美味かった。久しぶりに、美味い、ラーメンを食った」
と、ポンポンと、腹を叩いた。
「そうですか。そう言ってもらえると、私も、作り甲斐がありますよ」
と、M氏は言った。
「Мさん。この、ラーメン、の、ダシは、何なのですか?」
と、総監が、にこやかな顔つきで聞いた。
しかし、М氏は、その質問には、答えなかった。
М氏は、サッと、急いで、出前用の倹飩箱を開けた。
倹飩箱の中には、縄と、調理用の出刃包丁が、入っていた。
М氏は、すぐさま、縄と、出刃包丁を取り出して、油断している、総監を、後ろ手に捩じり上げて、手首を縛り、そして、総監の体を、椅子に縛りつけた。
「М(三島)さん。一体、これは、何のまねだ?何の冗談だ?ふざけているのか?」
М氏は、三島、という名前だった。
総監の言葉を無視して、三島は、総監室にある、椅子、や、机、本棚、などを、総監室の、戸の前に、置き、人が入って来れないよう、バリケードを作った。
まさか、総監室で、そんな、出来事が起きている、とは、思いも寄らなかったので、自衛隊の隊員達は、それに、気づかなかった。
「三島さん。一体、これは、何のまねだ?何の冗談だ?人質ごっこか?ふざけているのか?」
と、総監。
「本気だ」
と三島。
「気が狂ったのか?」
と総監。
「正気だ」
と三島。
三島が、バリケードを、作り上げた時、ようやく、総監室で、大きな物音がするのに、気づいて、数人の自衛官達が、総監室の前に、やって来た。
自衛官の一人が、総監室の窓ガラスを叩き割った。
総監室の中で、総監が、縛られているのを、見て、自衛官は、驚いた。
「三島さん。これは、一体、何のマネだ?」
自衛官の一人が、聞いた。
「総監を人質にとった。これは、クーデターだ」
と三島は、血相を変えて言った。
「本気なのか?」
と、自衛官。
「正気だ」
と三島。
「これに書いてある事をのめば総監の命は助けてやる」
と三島は、要求書の紙を自衛官に渡した。
それには、こう書かれてあった。
(一)11時30分までに全市ヶ谷駐屯地の自衛官を本館前に集合せしめること。
(二)私、(三島)、の演説を清聴すること。
(三)11時30分より13時10分にいたる2時間の間、一切の攻撃妨害を行わざること。一切の攻撃妨害が行われざる限り、当方よりは一切攻撃せず。
(四)この条件が完全に遵守せられて2時間を経過したときは、総監の身柄は安全に引渡す。
(五)この条件が守られず、あるいは守られざる惧れあるときは、私、(三島)、は直ちに総監を殺害して自決する。
と、五つの、要求が、書かれてあった。
ここに至って、自衛隊員たちは、三島が本気であることを、悟った。
「わかった。条件を呑もう。その代わり、総監には危害を加えるな」
と、自衛官の一人が言った。
自衛官達は、すぐに、自衛隊の上層部に、それを、伝えるため、急いで、走り去った。
11時40分。市ヶ谷駐屯地の部隊内に、
「業務に支障がない者は本館玄関前に集合して下さい」
というマイク放送がなされ、その後も放送が繰り返された。
部隊内放送を聞いた自衛官約1000名が、続々と駆け足で、総監室の前のバルコニーの前に、に集まった。
ジリジリジリー。
正午を告げるサイレンが市ヶ谷駐屯地の上空に鳴り響いた。
太陽の光を浴びて輝く調理用の出刃包丁を右手に持った三島がバルコニーに立った。
三島の頭には、「七生報国」、と書かれた日の丸の鉢巻が巻かれていた。
「何だあれは」
「ここの食堂のコックだ」
「ばかやろう」
などと口々に声が上がる中、三島は、バルコニーを、縁どっている、少し高くなっている囲いの段上に立った。
三島は集合した自衛官たちに向かい、白い手袋の拳を振り上げて絶叫しながら演説を始めた。
「自衛隊の諸君。オレは、悲しみ、と、憤り、を持って、ここへ来た。今の日本で、自衛隊だけが、武士の魂を持っていると、オレは信じていた」
と、三島は叫んだ。
「お前は誰だ?」
と、自衛隊員。
「オレは一介のラーメン屋、だ」
と、三島。
「降りろー」
と、自衛隊員。
しかし、三島は、演説を続けた。
「おまえら、聞けぇ! 静かにせい、静かにせい! 話を聞け! 男一匹が命をかけて諸君に訴えているんだぞ。今、日本人がだ、ここでもって立ち上がらねば、自衛隊が立ち上がらなければ、諸君は永久にだね、ただアメリカの軍隊になってしまうんだぞ。それが、わかるかー。2015年(平成27年)、9月19日、集団的自衛権を認める、安保法制が、与党である、自民党、公明党、の、強行採決によって、可決された。あの時のことは、諸君も知っているだろう。自民党推薦の弁護士達でさえ、集団的自衛権は、憲法違反だと言ったんだぞ。オレは、あの時から、自衛隊が、怒るのを待っていた。集団的自衛権を認める、とは、どういうことか。それは。日本を攻めてこない、日本にとって何の恨みもない国に対しても、同盟国のために、同盟国の利益のために、戦争をしてもいい、ということだ。こんなことは、憲法違反であることは、明らかだ。どうして、それに、気づいてくれなかったんだ。それにだ。イラク戦争、南スーダン、の自衛隊の活動の日報は、ちゃんとあるのに、政府は、それは無い、と、ウソをつき続けた。これは、シビリアンコントロールの無視以外の、何だと言うのだ。2015年(平成27年)、9月19日、から、オレは俺は自衛隊が怒るのを待ってた。4年、待った。しかし、諸君は、立ち上がらない。自衛隊にとって建軍の本義とはなんだ。それは日本を守ることだ。日本を守るとはなんだ。日本を守るとは、天皇を中心とする歴史と文化の伝統を守ることだ。戦後、日本は、驚異的な経済繁栄をし、GDPで世界第2位の経済大国になった。しかし日本は、経済的繁栄にうつつを抜かして、ついには精神的にカラッポになった。そして、1986年12月、から、1991年(平成3年)3月までの、バブル景気でも、経済的繁栄に、うつつを抜かし、そして、とうとう、1991年(平成3年)3月には、バブルが、崩壊し、地価も株価も暴落して、経済的にも、カラッポになった。それからは、現在に至るまで、失われた30年だ。銀行は、不良債権をかかえ、貸し渋りし、零細企業は、どんどん、倒産していった。デフレ不況は、バブル崩壊から、癒えることなく、現在まで、続いている。国債の発行残高は、897兆円だ。もはや、日本は、国債を発行し続けなければ、やっていけない国にまでなってしまった。2012年12月26日、第2次安倍内閣が発足した。景気を回復させる、と豪語して、異次元の量的緩和を行った。しかし、その本当の目的は何か。それは、見せかけの株価を上げるためだ。そして、大企業のみを、優遇し、政府が、企業と癒着して、自民党を長期政権に維持させることが、本当の目的だ。現政権の、腐敗、を、諸君は何とも思わないのか。内閣人事局で、自分の意のままに出来る、官僚をつくり、国民の税金を私物化し、平気で、ウソをつき、公文書の改ざん、まで、行っている。司法も、内閣人事局によって、政府が、牛耳って、政府の意のままにしている。もはや、これは、民主主義国家ではない。独裁国家だ。そこに、さらに、消費税10%の増税だ。政府は、それを、社会保障の財源に充てる、などと、まことしやかな事を言っている。しかし、それは、ウソだ。消費税増税の本当の目的は、イージス・アショア、だの、ステルス戦闘機、だの、アメリカの言いなりになるための、軍事費増強のためだ。そして、大企業、官僚、そして、あらゆる役人、の既得権益を守るためだ。そこでだ。オレは、自衛隊が、政府に対して怒るのを待っていた。2.26事件の将校達のように、自衛隊が、腐った独裁政権を、倒すクーデターを起こす日を、オレは、待っていた。オレは4年待ったんだよ。オレは4年待ったんだ。自衛隊が立ちあがる日を。しかし、いつまでたっても諸君は、立ち上がらない。諸君は武士だろう。武士ならばだ。違憲である、集団的自衛権を、どうして守るんだ。どうして、アメリカの手先になって、アメリカの戦争に協力しようとするんだ。どうして、正義を求めず、悪を容認して、権力者にペコペコするんだ。これがある限り、諸君は永久に救われんのだぞ。諸君の中に、一人でもオレと一緒に立つ奴はいないのか。一人もいないんだな」
三島は、そう演説した。
しかし、三島が演説している間、自衛隊の隊員たちは、
「降りろー」
「てめえ。それでも、男かー」
「たかが、ラーメン屋のおやじ、が、偉そうなことを言うなー」
と、野次を飛ばすだけだった。
「諸君の中に、一人でもオレと一緒に立つ奴はいないのか。一人もいないんだな。諸君が立ちあがらないということに、見極めがついた。これで、オレの自衛隊に対する夢はなくなったんだ。それではここで、俺は、天皇陛下万歳を叫ぶ」
そう言って、三島は、バルコニーを、縁どっている、少し高くなっている囲いの段上から、降りて、バルコニーの中に立った。
三島は、皇居の方向に体を向けた。
そして。
「天皇陛下万歳!」
「天皇陛下万歳!」
「天皇陛下万歳!」
と、両手を高く上げて、天皇陛下を讃える万歳を三唱した。
そして、総監室にもどった。
総監室には、総監が、後ろ手に縛られ、椅子にしばりつけられていた。
三島は、総監を、チラッと見た。
「三島さん。やめろ。こんなことをして、何になるんだ?あんたの作る、ラーメンは、美味い、と、評判なんだぞ」
と、総監が、言った。
「こうするしか、仕方がなかったんです」
と三島は言った。
そして、三島は、皇居の方角に向かって、正座した。
そして、上着を脱いだ。
三島は、ボディービルをしていたので、見事に引き締まった、肉体だった。
そして、三島は、出刃包丁を、自分の腹に当てた。
「三島さん。やめろ。やめるんだ」
総監は、叫んだ。
「三島さん。やめろ。あんたの、ラーメン屋、の経営が、苦しい、というのなら、官邸に頼んで、1億円でも、補助金を出してもらうように頼んでやる」
と、総監は言った。
しかし、総監は、後ろ手に縛られ、椅子にしばりつけられているため、どうすることも、出来なかった。
「いえ。結構です。こうするしか、仕方がなかったんです」
と、三島は、淡々と答えた。
「よく見ておけ。これが武士の死にざまだ」
三島は、総監に向かって、言った。
「うおおおおおおー」
三島は、出刃包丁を、腹に突き刺した。
腹から、ピューと、血が噴き出した。
三島は、苦痛をこらえながら、腹を、真横に、真一文字に、かき切った。
腹から、ドクドクと、血が溢れ出した。
そして、腹を切った後、三島は、震える手で、出刃包丁を、腹から抜いて、自分の首に当てた。
「うおおおおおおー」
大声で、叫びながら、三島は、最後の力を振り絞って、思い切り、自分の首の右を、出刃包丁で、切った。
頸動脈が、切れ、首から、ピュー、と、血が噴き出した。
大量出血のため、意識が朦朧としてきて、三島は、ガックリ、と、倒れ伏した。
意識を失う前の、ほんの一瞬、日輪が、三島の瞼の裏に赫奕と昇った。
三島が、前のめりに、倒れ伏したのを見て、総監室の前で、控えていた、自衛隊の隊員達が、どっと、入ってきた。
「総監。大丈夫ですか?」
と、隊員の一人が聞いた。
「私は大丈夫だ。それより、三島さんの、方を、至急、診てくれ」
と、総監は言った。
言われるまでもなく、バルコニーの前に、いた、警察官、や、医師が、入ってきた。
医師は、三島の脈を測った。
「まだ、脈は、止まっていません。急いで、近くの病院に、連れて行かなくてはなりません。救急車が、バルコニー前に控えてあります。すぐに、近くの病院に運び込まなければなりません」
と、医師は言った。
すぐに、担架が、運び込まれ、三島は、担架に乗せられて、自衛隊員らによって、総監室から、運び出された。
腹と右の頸動脈から、血が、流れ続けている。
「あなた。死なないで」
テレビ放送されて、それを見て、タクシーで駆けつけた、妻の、サチ子が、駆け寄って来た。
「三島くん。死んではダメだ」
テレビ放送されて、それを見て、タクシーで駆けつけた、従兄弟の、B氏が、駆け寄って来た。
しかし、三島は、目をつぶって、動かない。
だが、まだ、かろうじて、呼吸はあった。
三島は、救急車に、乗せられた。
「私も連れて行って下さい」
妻の、サチ子が言った。
「私も連れて行って下さい」
従兄弟の、B氏が言った。
「あなたがたは、この人と、どういう関係なのですか?」
救急隊員が聞いた。
「私は、この人の妻です。この方は、夫の従兄弟です」
と、妻の、サチ子が言った。
「わかりました。どうぞ、お乗り下さい」
救急隊員に言われて、妻のサチ子、と、従兄弟の、B氏は、救急車に乗り込んだ。
ピーポーピーポー。
救急車が、走り出した。
「救急車が通ります。車を道路の端に車を寄せてください」
医師は、切られた頸動脈の下を、結紮して、出血を食い止めようとした。
そして、すぐに、ヴィーンDの、急速輸液が、なされた。
その時である。
三島の口が、わずかに動いた。
「さ・・・さ・・・サチ子。す・・・す・・・すまない。び・・・び・・・Bくん。さ・・・・さ・・・サチ子を頼む」
それは、死にゆく者が、力の限りを振り絞って、出した言葉であった。
近くの××大学医学部付属病院に、着いて、三島は、すぐに、ICUに運びこまれた。
「奥さん。ご主人の血液型は、何型ですか?」
救急の医師が聞いた。
「夫の血液型は、A型です」
サチ子が、答えた。
「よし。A型の輸血をしろ」
医師達は、三島に、A型の、輸血を始めた。
そして、医師達は、心電図のモニターをつけた。
しかし、心電図のモニターは、ツー、と、いつまで経っても、平坦なままで、動き出すことはなかった。
血圧も、無かった。
医師達は、三島の、睫毛反射、対光反射の消失、心音、呼吸音、の消失、橈骨動脈で脈拍の消失、を、確認した。
医師達は、後ろに控えている、妻、と、従兄弟のB氏に、向かって、
「ご臨終です」
と、厳かな口調で、言った。
「あ、あなたー」
サチ子は、泣きじゃくりながら、夫の手を握りしめた。
B氏も泣いていた。
「申し訳ありませんが、司法解剖しますので、二人とも、ICUから、出て下さい」
救急医が言った。
「は、はい」
サチ子、と、従兄弟の、B氏は、ICUから出た。
「奥さん。三島さんのことだから、きっと、自宅に、遺書があるはずだ」
B氏が言った。
「そうね。遺書があるかも、しれないわね」
と、妻、サチ子も、言った。
二人は、タクシーで、三島の家に行った。
三島の部屋には、机の上に、「天人五衰」、と、書かれた、封筒があった。
「きっと、これが遺書だわ。私、直観でわかるの。あの人、老いることを嫌っていたから」
と、サチ子が言った。
「開けてみましょう」
B氏が言った。
「そうね」
サチ子も、同意した。
二人は、「天人五衰」、と、書かれた、封筒を、開けてみた。
それには、こう書かれてあった。
「愛する、妻、サチ子よ。私は、今日、死ななくてはならない。今の、日本の腐敗があまりにも、ひどいからだ。私が諌死することで、日本が良くなってくれることを祈る。私の暴挙を許してくれ。サチ子よ。私が、死んだら、従兄弟の、B君、と、再婚してくれ。それと。きっと、この遺書は、B君も、読むだろう。B君。どうか、妻の面倒をみてくれ。それと、娘の面倒も。あつかましい、お願いだが、よろしく頼む。法的に定められている、100日後、になったら、出来るだけ早く、結局してくれたまえ」
二人は、顔を見合わせた。
そして、二人とも、赤面した。
まず、最初に、B氏が口火を切った。
「奥さん。実は、一カ月ほど前に、三島さん、が、(久しぶりに会わないか)、と、電話してきて、喫茶店で、会った事が、あるんです。その時、三島さんが、私に、今でも、あなた、を、愛しているか、と、さかんに、聞いてきたんです。そして、三島さんは、自分が死んだら、あなたの面倒を、見てくれ、と言ったんです。その時は、なぜ、そんな突拍子もないことを、聞くのか、わからなかったんですが、今日、やっと、わかりました。こういう事だったんですね」
と、B氏が言った。
「Bさん。実は、私もそうなんです。一カ月ほど前に、夫が、今でも、Bさん、を好きか、と、さかんに、聞いてきたんです。その時は、なぜ、そんなことを聞くのか、疑問でした。私は、正直に、(今でも、Bさんを好きです)、と、言いました。その時は、何のために、そんなことを、聞くのか、不思議でした。が、こういう事のためだったのですね」
と、サチ子が、言った。
「奥さん。いや、サチ子さん。私と結婚して、もらえないでしょうか?」
とB氏。
「ええ。私の方こそ、お願いします。私は、あなたを、愛していますし、あなたと、結婚することが、夫の願望ですもの」
と、サチ子が言った。
「ありがとう」
B氏は、サチ子、の、手を握りしめた。
「でも、Bさん。主人は、100日を過ぎたら、すぐ、結婚してくれ、と言っていますが、主人を、弔うため、一年間、は、喪に服して、一周忌、までは、待っていただけないでしょうか?」
サチ子が聞いた。
「ええ。構いませんとも。私も、そうすべき、だと思っています」
とB氏は言った。

三島の訴えは、自衛隊には、聞こえなかったが、国民には、届いた。
日本国民、全員が、立ち上がった。
「三島さんの、死、を、無駄にするな」
と、国民は、叫んだ。
連日、国会前、首相官邸前、そして、全国、津々浦々で、1000万人を、越す人が集まった。そして、
「安倍やめろ」
と、コールした。
安倍晋三は、焦った。
安倍晋三の、自民党総裁としての任期は2021年9月末日まであるが、党内では、4期目の続投を、主張する声もあった。
ともかく、2021年までは、解散総選挙がないのだから、あと、2年は、確実にやれるはずだった。
しかし、連日の、国会前での、1000万人規模のデモである。
香港のように、国民と警察との、衝突まで、起こり出した。
自民党は、焦り出した。
自民党から、離党者が、出始め、その数は、どんどん、増えていった。
石破茂、と、水月会のメンバーも、自民党を離党し、立憲民主党に、入党した。
連立政権だった、公明党も、自民党についていては、旗色悪しと、判断して、与党から、離脱した。
自民党は、焦り出した。
このままでは、2021年の、解散総選挙で、議席を、大きく減らしてしまう可能性が高い。
野党、である、立憲民主党。国民民主党。日本共産党。社民党。れいわ新撰組。N国、は、今まで、以上に、ガッチリと、スクラムを組んで、野党共闘で、安倍政権への批判を強めた。
そして、衆議院に、内閣不信任決議案を提出した。
公明党の与党からの、離脱と、自民党議員の、離党、そして、野党への、入党に、よって、もはや、衆議院では、自民党は、議員定数の過半数を、大きく、下回っていた。
なので、内閣不信任決議が、可決された。
内閣不信任決議が可決された時は、内閣総辞職、による、自民党の延命という手もあったが、権力にしがみつきたい、安倍晋三は、解散総選挙に打って出た。
しかし、その結果は、みじめな自民党の惨敗だった。
安倍晋三は、選挙区である、山口4区でも、立憲民主党の立候補者に、大差で敗れた。
比例での、復活当選もなかった。
こうして、立憲民主党。国民民主党。日本共産党。社民党。れいわ新撰組。N国、が、連立与党となり、立憲民主党の、枝野幸男が、第99代、内閣総理大臣となった。
公明党も、日和見党、と党名を変え、連立与党となった。
そして、組閣が行われた。
その内訳は。
首相。枝野幸男
官房長官。小川彩佳。
財務相。金子勝。
総務相。山本太郎。
法相。鈴木宗男。
厚生労働相。小池晃。
農相。穀田恵二。
経済産業相。玉木雄一郎
国土交通相。大塚耕平。
環境相。復興相。武田邦彦。
文部科学相。関口美奈。
外相。福島みずほ。
防衛相。志位和夫。
国家公安委員長。鈴木奈穂子。
沖縄北方相。背山真理子。
経済再生相。蓮舫。
五輪相。杉浦友紀。
一億総活躍相。長妻昭。
防災相。石破茂。
不倫ガソリン相。山尾志桜里。

組閣にあたっては、財務大臣は、民間から、慶応大学経済学部名誉教授、で、立教大学大学院特任教授の、金子勝氏、が選ばれ、環境大臣は、中部大学総合工学研究所特任教授の、武田邦彦氏が、選ばれた。
そして、国会が開かれ、安倍政権の時に、強行採決で、決められた、安保法、共謀罪(テロ等準備罪)、特定秘密保護法、などの、悪法が、どんどん、廃止されていった。
消費税10%の増税も、廃止され、辺野古の基地建設は廃止され、普天間基地は、取り払われ、原発は廃止され、どアホのミクスは、廃止され、北方領土は、択捉島、国後島、色丹島、歯舞群島、の、4島、全部が、日本に返還された。
そして、森友学園問題の、土地取引、で、安倍晋三の御意向を、忖度した、佐川宣寿、ら、財務省の官僚たち、と、安倍晋三元首相、と、その妻、安倍昭恵夫人、そして、加計学園問題での、加計孝太郎、の、証人喚問が行われた。
もちろん、かれらは、「知らぬ。存ぜぬ。記憶に無い。データは消去した。刑事訴追のおそれがあるので答弁は控える」、と言って、何も答えなかった。
しかし、東京地検特捜部が、彼らを、起訴して、彼らは、全員、有罪判決となった。
こうして、日本は、世界で一番、平和で、経済的にも、豊かな国となった。



令和元年10月12日(土)擱筆

消費税10%増税物語

消費税10%増税物語

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更新日
登録日
2021-09-01

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