初恋
それはある冬の日だった。私は近くのコンビニへいった。もちろん私は、カップラーメンにお湯をそそいでつくる以外、何も料理などつくれないので、いつものようにコンビニへ弁当をかいにいった。アルバイトの店員の女の子が二人いる。二人できりもりしている。最近は女二人で何かやるというのがはやっている。もちろん、店の服はキタない。それが逆説的に美しい。ジーパンと、ほどよく茶色にそめた髪が似合っている。私はひそかに思う。彼女の手にふれられる品物になれたらと。その店には多くの男達が出入りする。彼女達はその店で女王のように君臨する。そしてどの男をも愛さない。しかし、その氷のようなつめたさ、冷静な立ち振るまいがまた魅力的なのだ。私はカッパエビセンとカールとコーヒー牛乳とカップヤキソバと弁当の入ったカゴをレジにだす。
「あたためますか?」
と聞くので、相手をみずに、
「はい」
と答える。電子レンジがビーとまわる音がする。彼女はバーコードをチェックして、代金のボタンをかろやかなリズムでピピピのピッとおす。
「1137円です」
私は1150円わたす。彼女はまたピピピのピッとやって13円おつりをわたしてくれる。私は冬は手がカサカサになる。が、おつりをうけとる時、ほんの一瞬、彼女の手先が私の掌にふれるが、うるおいのあるみずみずしい手。私はおつりをサイフにしまって品物の袋をもって店をでる。彼女は営業用スマイルで、
「ありがとうございました」
と言う。私はポーカーフェイスをよそおっているが心の中では、
「さようなら。きれいなおねえさん」
と言っている。こうして僕の初恋はおわった。
初恋