時間を棄てたあとに

雪水 雪技

時間を棄てたあとに
  1. 無重力トリップ
  2. 谷を越えた日
  3. 真空の中で
  4. 1999年遺物
  5. 後期的反抗期
  6. 遅ればせながら
  7. 知らないみずたまり
  8. 亡霊は波に乗れた
  9. 臨界点
  10. 幾億の手法にて
  11. 時間を棄てたあとに
  12. さいごのお散歩
  13. 楕円形とわたし
  14. 溶けてまざる日
  15. 誰かの夢にて
  16. 有史以来の汚名にかえて
  17. 決めたことたち
  18. お菓子のかなしみ
  19. 輪郭線のなかに
  20. 陥落したあとのこと

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無重力トリップ

炎を囲んで
談笑とダンス
どこへも行けそうと、
夜空に途方もない希望を見た祖先

天地は分離されつくられた
いつかの創世記をノートにとって

果てしない空想に耽る
青い星と私が浮かぶ

光と闇は別れを惜しむ
境界は私を守るからする

ごめんと呟いた現世

夢の中を歩いては
浮遊と重力の合間に

谷を越えた日

機械の腕は星を抱く
あたたかな腕は伸びる

機械の羽根は空を泳ぐ
成層圏を抜けて宇宙を目指す

機械と私の境目が
曖昧になっていく

肉体が大気へ戻る時
私の行方を手紙に書くから

どうか心配しないでと
機械の心は思いやりを再現する

真空の中で

気泡は苦しめる
密閉した心には
何も入れるまいと
硬く閉ざしたまま

息苦しさはいつまでか
扉を開けば傷がついて
使い物にならなくなる

わかりあえないことを知っていても
それは防壁にはなり得ないから

大波が押し寄せては私を追いやった

お別れを呪文にした日
愛想笑いはおまじないになる

1999年遺物

目の前に落ちてきた
恐怖の大王、その影だ

怯え泣いている影へ問う

何故、落ちてきた
今更、国道の上へ

耐えきれなかったことは
語られなくなったこと
忘れ去られていくこと

縋る影を振り払えない
そんな私の弱さを与えよう

今日からふたつだ
内緒話をしよう

お前の輪郭を繕う予言を語ろう

後期的反抗期

吹雪の海を
魚群の中を
月明かりを頼りに
必死に泳いでいた

人のかたちを捨てて
人のこころをもって
もがくように進んだ

何もかも棄て去って
ようやく得た自由は
過酷で、雷鳴に耳を塞がれ
叫びは、風に掻き消される

何処へも向かわないで
大陸を棄てて海を棄てて

ただ、あらがって

遅ればせながら

何度頷いても
気が付けば首を振っている

雨に洗っても
雪に埋めても

どんな手段も拒む
心臓に近い所で
うずくまる

合理は無くて
調和と分離のみがあるだけ

理屈は無くて
情緒でしかものを見られない

不要なものなどあっただろうか

遅ればせながら、生きづらい私へ

知らないみずたまり

朦朧とする雨季
日々の色はただ淡い

かすれていく文字は追わない

書きたくないことは
書かないと決めた夜

書きたいことは
雨に滲んでいく

遠くからひびく鼓笛
焦燥を脱いで駆ける

雨季に沈んでいく
あらゆる芸術が
水溜りの中で
混ざり合う

知らない色に仕上がる
嫌いではない色彩に落ちる

亡霊は波に乗れた

鮮やかな夢が
容易く形骸化した時代

都会のメトロ
酔っ払いがばら撒いた
名刺たちは白波のように
私の足元に押し寄せるから

すくって渡した日
午前零時には22歳の私の亡霊
反射的偽善者の私、渇いた六月

過酷の後に迎える朝へ絶望

感受性を救った文芸の笑み

成仏した夢に
日付をこえて

臨界点

粒子をあつめて
仲良しという名の
囲いをつくった

次第に息苦しさを訴え
ゆらぎは大きくなる

その日が来て、
熱をもって
囲いを壊して、
気体になって

空へ飛散した

破壊されたビーカー
呆然とする実験結果

個性の化学反応を記録
同調の限界を観測

取り残された理想郷
神さまも旅に出た日

幾億の手法にて

大き過ぎた生きものを
諦めずに描きつづけた

曖昧のかいぶつと呼ばれた
大き過ぎる概念に命を見た

その日から、

鉛筆を走らせている
渾身の線でとらえる

生涯も命も捧げて
健気に描いている

幼年の目で
青年の目で
壮年の目で
老年の目で

全ての目を向けて
選ばなかった道に感謝をして

時間を棄てたあとに

海の底に
はじまりがあった

あの日投げた
すべての元凶と幸福

神話は不確かなままに
語り継がれ線になった

星を繋ぐときに
いつも聞いた音楽がある

どこから流れるかも
確かめないまま

五線譜の上に落とした

幸福の讃美と
不幸の嘆きを

同じ瞬間に矛盾なく紡ぐ
始祖とつながる今に結ぶ

さいごのお散歩

散歩をする魚
尾びれをうまく
つかえないままに

みどりいろした公園
日のあたる広場

あおい空をはじめて見た真昼

おおきな目玉に歓喜のひかり

海にかえるまえ

街並みはゆうぐれに染まる

もう会えなくなるけれど
どうかお元気で、

魚はそう言って
おおきくはねて
海の底へかえってゆく

楕円形とわたし

天から降る白い本
ページが開いて光さす

一節をきれいに誦じて
微笑んだ女神の顔は知っていた

天は何かをお祝いしてるのに
私はずっと泣いている

愉快な時間をひとりで泣く
楕円形の生命が私を慰める

雪が降る前のみずいろの空
薄いみどりの風景
楕円形と私は水彩
地上と溶け合う運命の子

溶けてまざる日

日の下にまるくなる命を
目を細めて見ていたのは
私なのか、ほかの意識か

わからなくなる午前中

境界はあいまいなのに
輪郭ははっきりとする

それが背骨だと知った午後

お茶を淹れて振り返れば
誰もいない、いつかの風景

迷子か旅人かを問われ

どちらでもあるから
心をひりつかせると笑う

誰かの夢にて

空を舞う蝶は
再び蛹に戻る

そうして
終わらない時間を
神さまと過ごしていた

寂しい虫の声を
救えない心苦しさ
月明かりの思慕を
詩聖は桃色の空に見た

夢の中の夢にて逢う
いつかの感傷的事変も

全て渦の中心に向かう
ひとつの意識に戻る

千年生きても
万年住んでも

今も、お変わりなく

有史以来の汚名にかえて

見えているもの
描こうとして
その切なさに
耐えかねて

月夜のあなたは何に泣く?

幻想の煙の中
ある戴冠式は
洞窟の中にて

眩い光
誓いと別れ

あまりにも残酷な結末を
私は知らずに生きていて

あなたに救済はありましたか?

あなたの微笑涙を堪えて

最期の失意が罰
通じ合う瞬間は永遠に

決めたことたち

青い流れ星の下
うつむいて
膝を抱える

飛躍前夜は
ひとりで涙する
新しい日々が胸に入り込む

日差しに向き合うために
今は涙を流してかたくなる

頑なな心がほどけていく
夢見た日が近づいている
不安と焦燥に頭を下げて

新しいものになる日
目は腫れたまま
涙を溜めても

そうなると決めた日

お菓子のかなしみ

バームクーヘン曰く
土星の輪を見た文明
太陽を見つめた人類

閃きはいつも
足元にあるから

慎重に歩いた私、
速度を上げたあの人

分岐点でお別れ
何も悲しくなかった
笑顔で手を振った日

樹齢を数えて寂しくなる
小さな生き物だったころ

輪の上を泣きながら歩けば
あの分岐点が胸を刺した

輪郭線のなかに

大人は泣きながら
あめだまを転がす

どうして、が、増えた
星が見えなくなった今日

わるいのはだれ?

どうして、が、増えた
滲んでゆくいつかの憧れ

みんなせーので指をさす

どうしても、それは
こえたくなかった

わるいけどかえるね

わたしは
大人の中にいて
ずっと寂しい色をして

陥落したあとのこと

目覚めた後のこと
何も考えてなかった

時計の針が合わさって
生まれたい気持ちが重なる

途方もないことをして
砂の上から宇宙を見ていた

隔てるものを取り払って
無防備になるほど

星の光は注がれる
そうして同時に刺さるから

わたしの隠れ家の中で
ねむりに落ちる

同じこと繰り返して

時間を棄てたあとに

時間を棄てたあとに

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-09-01

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