黒猫とサイダー

夏の暑い日中に
公園の中の日陰にあるベンチで
サイダーを飲みながら涼むのが僕の日課だった
海水浴にいったり夏祭りで花火を見たり
そんないかにも夏らしいことが出来なくても
僕は十分に夏を楽しんでいた
ちょっとばかし耳障りな蝉の声と
澄み切った青空に昇る入道雲
そして喉に突き刺さるこのサイダーが
僕の夏を彩った
こうしていると嫌なこともスーッと忘れていく気がする
ある日一匹の黒猫がそばにやってきた
何の気無しにベンチにちょびっとサイダーを垂らしてやった
一舐めすると首をプルルって震わせる
ちょっと面白くてクスッと笑った
しばらくしてもその黒猫は離れず僕の隣でサイダーをペロペロ
野良猫にしては人懐っこいな、と思ったけど

なんとなく僕と同じ理由でここにいる気がした

もうすぐ夏が終わる
黒猫も僕も他のみんなも
いつもの日常に戻る
こんな世の中で何もできない夏だったけど
小さな幸せを楽しむこともたまには大事
この夏のサイダーは美味かったな、黒猫

黒猫とサイダー

黒猫とサイダー

こんなご時世でこそ過ごした夏を想って。

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-31

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