夜の底
帰り路の、ずっと切れかけていた街灯の洋燈が切れてからが本当の夜の始まりだったのだ
ぱっと街灯が消えると寂しい小道にすうっと夜が入り込んできた
心許ない私の心を映すようにブーツの踵がこつこつと煉瓦を鳴らす
するといつのまにか、私の前には金色の髪を2つに結った少女が歩いているのだった
下ばかり見て歩いていたから気がつかなかったのね、それにしてもこんな時間におんなのこが1人なんて
少女は足早に路地を進む
左手に下げたハンカチのかかったかごからなにかぼんやり光るものが落ちた
ころり、と転がったその灯は少しの坂を転げて私の足元にこつんとぶつかった
「夜の底でも灯があるのね」
拾ったそれを上に放ると、小さな灯が空に灯った
夜の底