桃色のうみ

細胞
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直前久々のバスタ新宿へ。
深夜バスにのって海へ。
閉館間近の水族館にいくと魚たちが泳いでいた。煌めいていた。命がひかっていた。蛍が光っていて、光ってるからきれいなんじゃなくて、生きてるからきれいだとおもった雨の夜を思い出した。
天井も多い尽くす水槽。透明な緑、透明な青。張り付いた。
エイがニコニコで寄ってくる。人は返事がないこともあるけど、魚は返事をしてくれる気がして、疲れてるなってちょっと思ったけど魚に話しかけながら水族館を歩く。

境界線
彼岸
海の生き物にとって陸は死の国。

川辺や海辺にいたけれど、この夏は川に入ったり、海に入ったりした。
そこの柔らかさを知る。包まれているように優しかった。
どっちも生きている、光ってる、
うみ、光っている、陸、光っている
少なくとも今この瞬間は、冷たい水、柔らかな水
嬉しくて口ずさみながら波打ち際を歩いた。
朝顔がプリントされたワンピースを着たまま、海の中に潜り泳いだ。波が柔らかかった。お母さん、と思った。波の上に浮かぶ。送られてきたばかりのテキストを声に出す。波の音でかき消される。
「母が寝たふりをしている!妹が寝たふりをしている!」
8月の太陽光が肌を刺す。
目眩がして、目の前に黒い滲みが揺れ出し意識が朦朧とする。浜にあがると身体が重くて、そこに足があること手があること、頭があって、胸があることを思い出す。朝顔が咲いている。私の身体から朝顔が伸びてゆく。
ドキドキと鼓動の音。ドクンドクンと波が寄せたり返すよりも速く鳴ってた。

海の家に行って乾かした。黒く日焼けをしたお兄ちゃんが生ビールをくれた。OASISがかかっていた。ビーチパラソルの下で一緒に飲んだ。服のまま入っちゃったの?うん、ここで乾かしてきな!
ぼたぼたと滴り続け、私の下に小さな水溜りができる。とても久々に飲むビールの泡は柔らかく、すぐに酔いがまわり目の前が印象派絵画のように、淡くなる。桃色の海。








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テキスト 赤司琴梨 

母が寝たふりをしている
妹が寝たふりをしている
父が寝たふりをしている
祖母が寝たふりをしている
この家の人たちはわたしが映画館から帰ると一斉に立ち上がって私を驚かせるのを待っている
 
映画がはじまるのは10時からですか?
もう駅に着いてしまいました
あと2時間どうやって暇を潰そうか
どの店も食べ物売ってない
空いているのは塾とホテルと映画館
(座り込まないでください!)
去年の夏も体調不良のため島に渡るのを諦めました
乗れなかった飛行機がゆらゆらと飛んでいく
西から迫ってくる雷雨を避けて家の中に入ると
昔住んでいた家の中では男の人が料理をしていた
鍵をかけたドアノブがガチャガチャと音をたてる
つまり、強盗です
男の人は大丈夫大丈夫といっている
ずっと呼んでいるのに包丁を動かし続けている
こんなにたくさん半月型のにんじんを作ってどうする?
ピーマンの千切りをつくってどうする?
ここには用意された肉も魚も貝もない

今日の映画は台湾の田舎が舞台だった
見たことのない港が見える
東に歩いていくと白くて大きな事務所が見える
そこから窓の外をみると飛行機が小さく見える

ノートには、うまくかえれるように、カエルの絵が書いてある
つまらなくて死にそうでした、と東京で言う予定の人の名前を書いてみる

物を落としてばかりでした
吠える犬を睨んでしまいました
道を通り抜けても、通り抜けても
働いている人ばかりでした
 
「この港の防波堤は去年の夏、
台風で波に壊されてからほとんど修繕されていません」

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楽ステ5周目
台本メモ 

テキストあかし アレンジまり

母(お母さんになるかも)が寝たふりをしている
妹が寝たふりをしている
父が寝たふりをしている
祖母が寝たふりをしている
この家の人たちはわたしが映画館から帰ると

 間


いなくなっている


 
映画がはじまるのは10時からだって
もう駅に着いちゃった
あと2時間どうやって暇を潰そう
どの店も食べ物売ってないよ?

空いているのは塾とホテルと映画館
 
塾(ケン)ホテル(ケン)映画館 (パ)
塾(ケン)ホテル(ケン)映画館(パ)

 (ケンケンパをしながら)

ケン、ケン、パ
ケン、ケン、パ


  気絶するように地面に眠る

  しばらく 間

(座り込まないでください!)
 
 静かに起き上がりながら

去年の夏も体調不良のため島に渡るのを諦めました
乗れなかった飛行機がゆらゆらと飛んでいく
西から迫ってくる雷雨を避けて家の中に入ると
昔住んでいた家の中では男の人が料理をしていた
鍵をかけたドアノブがガチャガチャと音をたてる
つまり、 (少しの間) あなたは誰ですか?

男の人は大丈夫大丈夫といっている
ずっと、呼んでいるのに

ずっとずっと呼んでいるのに

包丁を、
動かし続けている

こんなにたくさん半月型のにんじんを作ってどうする
ピーマンの千切りをつくってどうする
ここには用意された肉も魚も貝もない

今日の映画は台湾の田舎が舞台だった
見たことのない港がうつる
東に歩いていくと白くて大きな事務所が見える
そこから窓の外をみると飛行機が小さく見える

ノートに、うまくかえれるように、カエルの絵を書いてみる。
つまらなくて死にそうでした、と東京で言う予定の人の名前をなぞる。

物を落としてばかりでした
 
吠える犬を睨んでしまいました


...


道を通り抜けても、通り抜けても 



通り抜けても


通り抜けても、通り抜けても

通り抜けても  

 (働いている人ばかりでした)
 
通り抜けても

通り抜けても通り抜けても!通り抜けても、、


通り抜けたら


...

うみ!
(どんな海かいう)

----(アドリブ)

 ストップ

わたしはいませんでした



...

...
  
...
待って!
行かないで!

この港の防波堤は去年の夏
台風で波に壊されてからほとんど修繕されていません!!

だから
行かないで!!!

塾に行かないで!
ホテルに行かないで!
映画館に行かないで!

うっとうずくまる


 (それでも)

猫を見つけて撫でる
抱き上げる 

「好きだよ」

蛍を見つける 手でキャッチ
手を前にだしてみんなに向けて

「好きだよ」 っていえたらいう (場に任せる。いえなかったらそのままでいい )



終わり

桃色のうみ

桃色のうみ

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-25

Copyrighted
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