Aの10

 ゲームからログアウトした俺はしばらくベッドの上で横になっていた。しかし眠気がまったく出てこない。

( ゲーム中ずっと寝てたから当然か )

 俺は寝るのをやめてベッドから起き上がった。

 すでに空腹なので、朝食の準備をする事にした。

 皿の上にご飯をのせ、鮭フレークをのせ、その上にマヨネーズをかける。そして最後は刻み海苔をかけて最高の朝食が完成した。

 俺は朝食を食べながらパソコンを起動した。

 今もゲームの事で頭がいっぱいだった。

( 所持金を増やさないとな )

 公式サイトのゲーム・マニュアルを開き、基本項目を見たり質問コーナーの内容を確認した。

 やがて気になる項目が見つかった。

《 各地の大都市には職業紹介所が設置されています。スキルカードを提示すれば、職業を紹介してもらえることがあります 》

 かなり重要な情報だった。

 ただしベルリンにも存在するか分からないので、実際に自分で確かめるしかない。

( 今日は日曜日で、バイトは午後から…… )

 もはやゲームが本当の居場所だと思えるような感覚になっている。

 朝食を食べ終えて朝のニュースを見たあと俺はもういちどアイマスクを装着してベッドに入った。

 ・ ・ ・

 宿屋に戻った俺はすぐに建物の外に出た。

( やっぱり人に聞くのが早いよな )

 支給されたスマホはあまり役に立たないと分かっている。

 すぐ近くに老人が歩いていた。

「すいません。職業紹介所はどこにありますか?」

「ああ。すぐ近くだよ。この通りをまっすぐ進んで先の交差点を右に曲がりなさい。そしたら見えるよ」

 優しい雰囲気の老人だった。

「ありがとうございます」

 俺はすぐにお礼を言って歩き始めた。

 徐々にテンションが上がって来てやる気がみなぎってくる。

( 良いNPCじゃないか…… )

 そう思いつつ道を歩いて行くと、レンガ造りの大きな建物が見えてきた。他の建物と明らかに違うのが分かる。

 看板は見当たらないが、この建物に間違いないと思った。正面の入口から人が出入りしている。

 俺は建物の中に入ってみた。


【作者紹介】金城盛一郎、1995年生まれ、那覇市出身 

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  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-24

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