マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 2/2:その瞳は、決意の輝きを視る

にがつ

『妖精眼』――魔法の気配・魔力・実体を持つ前の幻想種などを把握できる妖精のみが持つ眼。

「『蒼の妖精眼』――それは〝貴方の決意の証〟であり、そして運命を切り拓く」

台本概要

◇台本名◇
 マギウス・アーティファクト-英国魔法幻想譚-
 #01 妖精眼-Gramsight- 2/2:その瞳は、決意の輝きを視る


□台本情報□
 ジャンル:魔法ファンタジー
 所要時間:35~40分
 男女比率 男:女:不問=2:2:1(合計:5名)

登場人物

 アルト・クナギリ
  性別:男性、年齢:18歳
  本作の主人公で、日本人の父親とイギリス人の母親を持つハーフ。
  母親の姓で名乗る場合は「アルトリウム・エムリス(Artorium Emrys)」。
  性根は温厚で優しく人情深く、他人が傷つけられるのを何よりも嫌う。
  突然届いた母・ニニアンからの手紙によって英国へと向かう。

 シオン・ティールグリーン
  性別:女性、年齢:17歳
  本作のもうひとりの主人公でもあり、ヒロインでもある魔法使い。
  女王陛下から政府や警察が対処出来ない魔法使い関連の事件を対処することを
  任された秘密組織『時計塔(とけいとう)騎士団(きしだん)』を統括(とうかつ)している。
  良家(りょうけ)令嬢(れいじょう)ではあるが、本性(ほんしょう)尊大(そんだい)かつサディストで他人の困る(さま)が好き。

 フィアンマ
  性別:女性、年齢:見た目は10代後半
  ニニアンにかつて仕えていた家事妖精(ブラウニー)で、リトアニアの家事妖精(ブラウニー)・ガヴィージャの子。
  炎を扱う魔法を得意とするが、起こると制御できない時がある。
  ニニアンの命でロンドンにある彼女の家で、アルトが来るのを待っていた。

 カルタフィルス
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半~30代前半
  〝首領(マジスター)〟と呼ばれる(なぞ)の男性の命令でアルトを襲撃(しゅうげき)する。
  使い魔として『ブラックドッグ』のグリムがいるが、奴隷(どれい)のよう(しいた)げている。
  正体は、3世紀にヨーロッパで伝説が広まり始めた神話上の不死の男である『さまよえるユダヤ人』。

 グリム
  性別:男性、年齢:見た目は10代後半
  カルタフィルスの使い魔である妖精(ようせい)で、イギリス全土に伝わる黒い犬の姿をした不吉(ふきつ)妖精(ようせい)『ブラックドッグ』。
  カルタフィルスに奴隷(どれい)(ごと)酷使(こくし)されているが、感情を(あらわ)にせず、そして反抗(はんこう)せず忠実(ちゅうじつ)に従っている。

 オベロン
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半
  アルトの夢の中で現れた、自身の事を『妖精王(ようせいおう)』と称する謎の青年。

 マジスター
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半
  カルタフィルスにアルトの殺害を命じた(なぞ)の男性。
  ふざけた言動、行動をとるが、その裏で何か(たくら)素振(そぶ)りも見せる。

上演貼り付けテンプレート

 台本名:マギウス・アーティファクト
     #01 妖精眼-Gramsight- 2/2:その瞳は、決意の輝きを視る
 URL https://slib.net/108105

 【配役】
  アルト・クナギリ(♂):
  シオン・ティールグリーン(♀):
  フィアンマ(♀):
  グリム(不問):
  カルタフィルス(♂):

  オベロン(♂):※カルタフィルスと兼役
  マジスター(♂):※アルトと兼役
  青年(♂):※アルトと兼役

アバンタイトル

シオン:初めまして、アルト・クナギリ――いや、アルトリウム・エムリスの方がいいかな?
    僕の名前は、ティールグリーン家の当主、シオン・ケイト・ティールグリーン。
    ――魔法使いだ。

アルト:魔法、使い……

シオン:そうだよ。
    キミが見ているのは、物語に出てくる空想の存在ではない。
    目の前にいる、現実の存在だよ。

アルトN:そう言って、目の前の少女は不敵(ふてき)()みを浮かべる。
     彼女の声には(いつわ)りを感じない。
     ただ当たり前の真実を()げる声。
     どんな夢物語(ゆめものがたり)でも、説得力がある声。

シオン:キミは本当におもしろい反応をしてくれるね。
    からかい甲斐(がい)がある。

アルト:それよりも、僕に一体何の用が……それに、『妖精眼(グラムサイト)』って……

シオン:それは――

<勢いよく部屋に扉が開き、フィアンマは焦った表情で入ってくる>

フィアンマ:アルト様!!

アルト:フィアンマさん?!
    そんなに(あわ)ててどうしたんですか?

フィアンマ:実は……きゃ! 誰ですか!?

シオン:こんにちは、家事妖精(ブラウニー)
    自己紹介をしたいところだが……今は、そんな余裕(よゆう)がなさそうだね。
    緊急事態なのだろう?

アルト:緊急事態……どういうことですか?

フィアンマ:逃げてください、アルト様!
      今すぐに――

アルトN:フィアンマの背後(はいご)にある廊下(ろうか)の窓ガラスに黒い物体が見えた。
     犬だ、黒い犬。
     獲物(えもの)(にが)さない狩人(かりうど)のような赤い目に、漆黒(しっこく)体毛(たいもう)
     (ねら)った獲物(えもの)を食いちぎるために、(するど)(きば)がついた口を大きく開けていた。

フィアンマ:えっ……

アルト:危ない!!

シオン:「停まれ(プロヒベーレ)

アルト:と、止まった……!

シオン:「燃えろ(ケナーズ)」!

アルトN:魔法陣(まほうじん)が展開され、そこから火の球が勢いよく放たれた。
     それはガラスを突き破り、黒犬を吹き飛ばす。

シオン:ボーっとしている(ひま)はないぞ!
    逃げるぞ!!

アルト:わかった!
    行こう、フィアンマさん!!

フィアンマ:は、はい!

シオンM:赤い目に、黒い犬……おかしい、〝奴ら〟は本来(ほんらい)ヒトを(おそ)わない(はず)だ。
     嫌な予感がする――


アルト:マギウス・アーティファクト、#01

フィアンマ:妖精眼(グラムサイト)、2/2、『その()は、決意の(かがや)きを()る』

Scene 01

グリム:「来たれ、地獄の女神の番犬たち(オルビス・インフェリンス・ヘカテイア・ウォッチドッグス)

グリムN:地面に手を付け、詠唱(えいしょう)する。
     そうすることで、自分の影から〝黒狗(ブラックドッグ)〟を産み出す。
     産み出された(いぬ)たちは次々と屋敷(やしき)へと()け出して行った。

カルタフィルス:これで12匹目か。
        流石(さすが)にここまでブラックドッグを召喚(しょうかん)しておけば十分だろ。
        どうだ、グリム。
        (いぬ)どもは(やつ)らを食い殺したか?

グリム:……いや、まだ。

カルタフィルス:あ?

グリム:〝モディ〟と〝ジャック〟の消滅(しょうめつ)を確認した。

カルタフィルス:ちっ、相変(あいか)わらず役に立たねぇなァ!
        この駄犬(だけん)が!!

<カルタフィルスはグリムを蹴りつける>

グリム:ぐっ……!

カルタフィルス:わかってるのかよォ!
        この! この!!

グリムN:こうやって癇癪(かんしゃく)を起こすと、暴力を()るうのはいつもの事だった。
     強制的に契約(けいやく)(むす)ばれた時からずっと。
     ただ、主従(しゅじゅう)関係を(むす)ばれている以上は反抗(はんこう)することは出来ない。
     いや、許されないことだ。
     この男は用心深く、裏切ったら死ぬように(のろ)いをかけている。

カルタフィルス:消えるしかなかったクズ妖精(ようせい)を救ってやったのは(だれ)だ?!

グリムN:お決まりの常套句(じょうとうく)を投げかけてくる。
     でも、それは事実だ。
     この男がいなければ、自分は消える運命だった。
     妖精(ようせい)である以上、自分が消える時は「必然(ひつぜん)の運命」として受け入れなければいけない。
     それが妖精(ようせい)(ルール)
     そのはずだった――

カルタフィルス:なあ?!
        何か言ったらどうなんだよォ!!

グリムN:罵倒(ばとう)暴力(ぼうりょく)を辞める気配(けはい)はない。
     この男は、何も言わずに強制的に俺を使い魔とする契約(けいやく)(むす)んだ。
     きっと奴隷(どれい)が欲しかったのだろう。
     けれども――

グリム:必ず……役立て、る……

グリムN:――あの時に「生きたい」と思ってしまったから。
     (ルール)を破ってしまった。
     これはその(ばつ)を受けているんだ。
     だからこそ――

カルタフィルス:ちっ……胸糞(むなくそ)が悪い、行くぞ!

グリムN:だからこそ、()たさなければいけない――!

Scene 02

<屋敷の中を走りかけるアルトたち>
<そんな彼らにブラックドッグが襲い掛かってくる>

シオン:「燃えろ(ケナーズ)」!

アルトN:次々と屋敷(やしき)侵入(しんにゅう)してきた黒狗(ブラックドッグ)たちを退治(たいじ)するシオン。
     1匹、また1匹と。
     展開された魔法陣(まほうじん)から放たれた火の球で。

シオン:ふぅ……これで5匹目か。
    さて、何匹いるとやら……

アルト:後ろ! 危ない!!

フィアンマ:させません!
      「纏え、炎の障壁(ギール・フランマ)」!!

アルトN:死角(しかく)からシオンに(おそ)()かった黒狗(ブラックドッグ)強襲(きょうしゅう)を、フィアンマが展開した炎のバリアで(ふせ)ぐ。
     バリアに触れた黒狗(ブラックドッグ)に炎が燃え移り、やがて消滅(しょうめつ)した。

シオン:やるじゃないか、助かったよ。

フィアンマ:……私の使命はアルト様をお守りすることです。

シオン:わかっているよ。
    そこまで頭が回らない人間ではないさ。
    僕を助けたのは、〝おまけ〟だろ?
    それよりも、家事妖精(ブラウニー)

フィアンマ:私には、「フィアンマ」という名があります。
      以後お見知りおきを、魔術師(ウィザード)

シオン:それはすまなかったね。
    それで、フィアンマ。
    今回の襲撃(しゅうげき)について、キミはどう思う?

フィアンマ:……ブラックドッグが(おそ)()かってくることが奇妙(きみょう)です。
      私を(おそ)うのなら理解はできますが、ヒトを(おそ)うのは信じられません。

シオン:やっぱり、キミもそう思うか。

アルト:あ、あのさ……『ブラックドッグ』ってなに?

シオン:『ブラックドッグ』は、イギリス全土に伝わる黒い犬の姿をした妖精(ようせい)だ。
    古代ギリシャにいた新月(しんげつ)の女神・ヘカテーの眷属(けんぞく)と言われており、
    「死の先触(さきぶ)れ」の側面を持つことから不吉(ふきつ)妖精(ようせい)とも言われている。

フィアンマ:(はる)か昔にヒトを殺した記録はあります。
      ……ですが、私たちの知る『ブラックドッグ』は墓地(ぼち)墓荒(はかあ)らしから守る墓守(はかもり)です。
      彼らは道に(まよ)った子供を助けたり、教会の葬儀(そうぎ)(かね)に合わせて遠吠(とおぼ)えを上げて
      死者の行き先を神父(しんぷ)に知らせたりするんです。
      不吉(ふきつ)妖精(ようせい)とは言われていますが、基本的に温和(おんわ)な性格をしているんです。

アルト:……確かに、それなら二人が奇妙(きみょう)と感じるのもわかる。
    けど、僕たちを(おそ)()かってきている『ブラックドッグ』は正反対だ……まさか……

フィアンマ:はい、つまり――

シオン:待った、二人とも。
    ――黒幕(くろまく)がお出ましだ。

カルタフィルス:おいおい、聞いていねぇぞ……ガキがひとりの話の(はず)だが……
        まあ、グリムの(イヌ)どもを退(しりぞ)けたと聞いた時は予感はしていたが……

グリム:……。

シオン:それはすまないことをしたね。
    悪党(あくとう)の仕事を邪魔(じゃま)するのが大好きなんだ。

カルタフィルス:おまえは……魔術師(ウィザート)か。
        ちっ、厄介(やっかい)だが関係ない。
        お前ら、全員を殺せばいい。
        (うら)みはないが、こちらも仕事なのでね。

シオン:そうか……なら!

カルタフィルス:なっ!

シオン:お前は私と戦ってもらうぞ!!

アルト:シオンさん!!

シオン:フィアンマ!
    お前は、そこのブラックドッグの相手をしろ!
    転移魔法を使って、私はこいつと共に遠くに飛ぶ!!
    『運命の()』を、頼んだぞ!!

フィアンマ:承知(しょうち)しました!
      アルト様は、私が守ります!!

グリム:……そこを退()け。
    同じ妖精(ようせい)同士で争いたくない。

フィアンマ:お断りします。
      主人を守るのが、私の使命です。
      傷つける者が人間であろうと、妖精(ようせい)であろうと関係ありません。
      私は自分の命を()けて、アルト様を守ります。

グリム:残念だな……でも、しょうがない。
    そうであれば、容赦(ようしゃ)しない。
    (つど)え、黒狗(くろいぬ)たち――「魔犬の顎は全てを喰らう(デクルティエン・バーゲスト)」!

フィアンマ:影が巨大な犬の形に……!
      「纏え、炎の障壁(ギール・フランマ)」!!

グリム:無駄だ。

フィアンマ:そんな!?
      炎を……()()んだ……!

グリム:お前らを(おそ)った(イヌ)たちとは違う。
    俺は墓守犬(チャーチ・グリム)ではあるが、バーゲストの血が流れている。
    バーゲストはブラックドッグの中で最上位(さいじょうい)の存在。
    それは全てを()らう存在(もの)だ。
    だから――

フィアンマ:あっ……あっ……

アルト:フィアンマさん!

フィアンマ:アルト様、私……最後まで……

グリム:まずは、ひとり。

Scene 03

シオン:さて、ここなら派手(はで)に暴れることが出来るだろう。
    森の中だ、一般人に私たちの存在や魔法を見られることはない。
    来なよ、全力で。

カルタフィルス:生意気(なまいき)小娘(こむすめ)が……()めるなよ……!

シオン:()めてはいないよ。
    キミが持つ魔力量に気付かない訳ではない。
    きっと、実力は魔法使いの中でも上位(じょうい)と言って良い程ね。
    でも……僕の敵ではないかな?

カルタフィルス:……いいだろう!
        そこまでの大言壮語(たいげんそうご)()いたんだ!!
        後悔(こうかい)することだなァ!!
        来い、雷雲(サンダークラウド)!!

シオン:雷雲(らいうん)が集まってくる……すごいな、天候を(あやつ)ることが出来るのか。

カルタフィルス:「壱の雷針(エナス・ベローナ)」 
        「弐の雷針(ディオ・ベローナ)
        「参の雷針(トリア・ベローナ)
        ――お望み通り全力で、高出力(こうしゅつりょく)(かみなり)魔法を()らわしてやるよ!!
        「雷鳴轟け、神の裁きである、稲妻の斧(ブロンティ・クリーシス・アストラ)」!!

カルタフィルスN:巨大(きょだい)(いかずち)が、目の前の小娘(こむすめ)に向かって落とされた。
         高出力(こうしゅつりょく)の魔力で形成された(いかずち)に、人間であれば(はい)ひとつも残さない。
         勝った、そう勝利を確信した。

シオン:……見事だ、正直(あなど)っていたよ。

カルタフィルス:なっ!

シオン:さすがの私も今回に関しては(きも)()やした。

カルタフィルス:どうして生きている!?
        馬鹿な……高出力の魔力が直撃(ちょくげき)したんだぞォ!!

シオン:簡単なことだよ、防御魔法を発動しただけだ。
    そして、それが勝った。
    単純明快(たんじゅんめいかい)だ。

カルタフィルス:なん、だと……?

シオン:じゃあ、次はこっちの番。

カルタフィルス:させるかァ!!

シオン:「停まれ(プロヒベーレ)

カルタフィルス:なっ、動けな……い……?!

シオン:言っただろ、僕の敵ではない、と。
    味わせてあげるよ、本当の雷魔法というものを。
    「天空を支配せし太陽神よ、(アウィル・デュ・)我が呼び声に応えよ(ハウル・エマーテ)
    「闇夜を切り裂く、一条の光の如し(ストレアーク・エスガーム)
    「我が手に宿れ、白き稲妻(グイン・サンダー)

カルタフィルスM:な、なんだ……これは……
         魔力量が俺の何倍以上だ?
         ……まずい!
         このままでは――

シオン:もう遅いよ。
    (われ)投擲(とうてき)す――「閃光の海獣骨槍(フラッチ・ゲイボルグ)」!!

カルタフィルス:ぐああああああああああああ!!

シオンN:閃光(せんこう)のように(ひか)(かがや)(やり)が、カルタフィルスを(つらぬ)いたと共に森全体が光と衝撃(しょうげき)に包まれた。
 勝敗(しょうはい)一瞬(いっしゅん)にして(けっ)した。
     しかし――

シオン:……しまった、調子に乗ってやりすぎた。
    まあ……森の半分を吹き飛ばしたとは言え、特に被害は出ていないし、魔法も見られていないし。
    うん、この被害状況だと……兄上殿の1時間説教コースが妥当(だとう)かな?
    やれやれ……

カルタフィルス:ああっ……

シオン:んっ?

カルタフィルス:ああっ……アアアアアアアアア!!

シオン:なっ!

カルタフィルス:俺は……私は……(ワシ)は……ここでマケ、負ケル……(わけ)、ニハ行かナインだァ……!

シオン:思ったよりもしつこい男なんだなぁ!

カルタフィルス:ワレの名前ハ……カルタフィルス……巡礼(じゅんれい)がオワルまでハ……立チ続けル……!!

シオン:カルタフィリス……〝さまよえるユダヤ人〟伝説の不死人(ふしびと)……!
    (まった)厄介(やっかい)な存在を相手にしたものだ!
    ならば、(たお)すことが出来なくても、捕まれば――

カルタフィルス:「(ジィ)……退去せよ(フィーゲ)……!!」

シオン:なっ……転移(てんい)魔法……!

カルタフィルス:イヒヒヒ……

シオン:間に合わな――

カルタフィルス:ケハハハハ!!
        飛ばした、トバシタ!
        つぎハ屋敷(やしき)のアイつだ……コロス、ころしてやる……!!

Scene 04

フィアンマN:炎の化身(けしん)処女神(しょじょしん)ヘスティアの分霊(ぶんれい)、女神ガヴィージャ。
       それが私の母親。
       その娘であれば母親と同様に神霊(しんれい)であった(はず)
       けれども……私は唯一(ゆいいつ)の失敗例だった。
       「神霊(しんれい)たる(かく)ではない」という烙印(らくいん)()され、下級妖精(かきゅうようせい)へと()ちた。
       神霊(しんれい)(ほむら)を使えるけれど、未熟(みじゅく)(わたし)には()が重いものだった。
       ――だから、(わたし)(だれ)にも必要とされない存在、欠陥品(けっかんひん)
       この世から消えようと思った。

青年:大丈夫かい?

フィアンマ:えっ?

青年:こんなところで寝込(ねこ)んでいるなんて……それに随分(ずいぶん)(よご)れている。

フィアンマN:命の(ともしび)が消えかけようとした時に、突然(とつぜん)現れた、ひとりの人間。
       本来であれば私の姿(すがた)が見える(はず)ない。
       でも、今の(わたし)にはそんなことを考える余裕(よゆう)はなかった。

青年:君は……あぁ、そうか、妖精(ようせい)なんだね。
   ならば……ニニアンに相談しないと。

フィアンマN:そう言って、彼は私を抱き上げてどこかへと向かった。
       ――この後、私はニニアン様と出会う。
       そしてニニアン様の眷属(けんぞく)となり、私は生き(なが)えることが出来た。
       妖精(ようせい)消滅(しょうめつ)するときは、「必定(ひつじょう)の事」として受け入れなきゃいけない。
       それが妖精(ようせい)(おきて)、それが運命。
       けれど――

青年:君はこのまま死んでいく運命でいいのかい?

フィアンマN:良い訳がない……まだ私は何も果たしていない。
       生きたい、生きて何かを果たしたい……!

青年:なら、その「生きたい」という気持ちが本物ならば……そんな運命、クソくらえだ!

Scene 05

アルト:うわあああああああああ!

フィアンマ:きゃ!

グリム:(かわ)された!?

アルト:いてて……ぐっ……!

フィアンマ:アルト様!!

アルト:良かった……間一髪(かんいっぱつ)で間に合った……

フィアンマ:何をしているんですか!
      腕から血が……!!

アルト:大丈夫、こんなのかすり傷、だよ……

フィアンマ:何を言っているんですか!
      今すぐ手当てを――

アルト:いや、そんな時間はない……ここは、僕に……任せてください……

フィアンマ:お待ちくださ――いっつ!
      足が折れて……まさか、さっきので……

アルト:ブラックドッグ!
    お前の狙いは、僕だろ?
    だから、彼女には手を出すな。

グリム:……驚いたな。

アルト:えっ?

グリム:使い魔を(かば)う主人なんて初めて見た。
    使い魔は道具だ、道具を守るなんて意味ない事だ。

アルト:道具……?

グリム:そうだ。
    俺たち下級妖精(かきゅうようせい)妖精(ようせい)としての(かく)が低い存在だ。
    せいぜい、魔術師(ウィザード)上級妖精(じょうきゅうようせい)(つか)えることしか生き残る道なんてない。
    それに妖精(ようせい)は死ぬ時に、どんな理不尽(りふじん)であっても、それを必然(ひつぜん)として受け入れなければいけない。
    妖精(ようせい)(おきて)だ。
    全ての事象(じしょう)必然(ひつぜん)だ、弱いからこそ死ぬんだ――

アルト:ふざけるな!

グリム:っつ!

アルト:何が(おきて)だ! 何が必然(ひつぜん)のことだ!!
    そんなのが運命ならば――クソくらえだ!!

フィアンマN:あの時の光景(こうけい)(よみがえ)る。
       あぁ、やっぱり。
       あなたは、あの人の子供なんですね。

アルト:それに()えるよ、キミはその運命に逆らったことで罪悪感(ざいあくかんt)を感じ、苦しんでいるのを!

グリム:お、お前に……お前に何がわかる!
    その口を閉じろ!!
    「魔犬の顎は全てを喰らう(デクルティエン・バーゲスト)」!!

フィアンマ:アルト様! 逃げて!!

アルトN:自分の行動に驚いている。
     (かな)(はず)もないのに、強い存在に無謀(むぼう)にも立ち向かう自分がいる。
     でも……不思議と恐怖を感じない。
     ……きっと、事の重大さに理解できない(おろ)か者なのかもしれない。
     だけど、これ以上、自分のせいで誰かが傷つくのが嫌だった。
     影が(せま)る、自分を食い殺す黒狗(くろいぬ)(せま)ってくる。
     逃げることは出来ないだろう。

オベロン:全く、キミには本当に驚かされるよ。

アルトM:えっ?
     頭の中から声が……そして、この声……

オベロン:無謀(むぼう)にも立ち向かう蛮勇(ばんゆう)は感心するけど……このままだと、死ぬよ?
     (さく)はあるのかい?

アルトM:無いですよ……さっきまでは、ね。

オベロン:えっ?

アルトM:説教するために来たんじゃないんでしょ?
     【妖精王(ようせいおう)】オベロン。

オベロン:プッ! 全く、言うじゃないか!
     やっぱりキミは本当におもしろい、物語を此処(ここ)で終わらせるのは()しい。
     ――アルト、君に、〝ある言葉〟を教えよう。
     ただ、それを口にしたら最後……君はもう後戻りは出来ない。
     かつての平凡(へいぼん)な人生は終わりを()げ、過酷(かこく)な運命が待ちうけるだろう。
     死ぬ事よりもつらいことかもしれない。
     それでもいいのかい?

アルトM:……不安なのは正直あります。
     けど……この選択は、自分の心に(ちか)ったものだ!!

オベロン:わかった。
     ()げる(こと)()は〝キミの決意の(あかし)〟であり、そして〝運命を切り(ひら)く力〟だ。
     さあ、(とな)えろ! 精一杯(せいいっぱい)大きな声で!!

アルト:「開け、蒼の妖精眼(ラピス・ラズリ)」!
    「その()は、決意の(かがや)きを()る」!!

フィアンマ:その言葉――!

アルト:簒奪(さんだつ)――「炎女神の怒りたる浄化の炎(ミヌス・カヴィージャ・フローレン)」!

グリム:なっ……!

フィアンマ:あの炎は……お母様の……!?

グリム:バーゲストの影を……燃やし()くした……
    くっ! 炎が、こっちにも!
    ここまでか……

アルト:炎よ、(しず)まれ!

グリム:炎が消えた……どうして……?

アルト:僕はキミを殺さない。

グリム:バカなのか!?
    俺を殺さないとお前は――

アルト:殺さない。
    意思は変わらない。

グリムM:な、なんなんだ……アイツのまっすぐな()……
     なんなんだ……

カルタフィルス:ギャハハハハハハハ!
        お笑いグサだなァ!!

グリム:この声は……カルタフィ――ぐっう!

<カルタフィルスがグリムに蹴りを入れる>

アルト:グリム! 何をするんだ!!

カルタフィルス:あたリ前だァろ?
        役立たずのツカイ魔なんて生きる価値モない。
        安心シロヨ?
        次ハお前ヲ殺してやるカラァ!!

アルトM:来る!
     さっきの力を使えば――えっ?
     身体が……

フィアンマ:手出しをさせない!

カルタフィルス:しゃらくせぇ!!

<カルタフィルスの投げナイフがフィアンマの肩に刺さる>

フィアンマ:ぐうっ!
      ナイフが肩に当たったぐらい……うそ……麻痺(まひ)の効果が付与(ふよ)されている……!
      動くことが……アルト様!

アルトM:ま、ずい……動けない……

カルタフィルス:おいオイ、さっきの威勢(いせい)のヨサはどうシタ?
        うごカナいなら、コろしてヤルヨォ!!

フィアンマ:いやああああああああ!!

アルトM:ダメだ……間に合わな――

グリム:「魔犬の顎は全てを喰らう(デクルティエン・バーゲスト)」!

カルタフィルス:ああああアアアアアアアア!!
        おレの腕がああああああ!!
        グリム、おまエエエエエエエエ!!

グリム:アンタには……命を救ってもらった、恩がある……
    だけど……ソイツにも命を、救ってもらった……!

アルト:グリム……

グリム:ぐっ……ぐああああああああ!!

アルト:グリム!!

カルタフィルス:バカな奴ダ!!
        強制ケイヤクの(のろ)イを忘れてイタノカ?
        ハンコウすれば、お前ハ(のろ)い死ヌ!!

グリム:ああああああああああ!!

アルト:やめろ……

カルタフィルス:アハハハハハハはははははは!!

アルト:やめろおおおおお!

カルタフィルス:オッ、立つコトが出来タか!
        ダガ……フラフラと無様(ぶざま)だな!!

アルト:『開け……蒼の妖精眼(ラピス・ラズリ)――』

カルタフィルス:殺してヤルヨぉおおおお!!

フィアンマ: 「 纏え、炎の障壁(ギール・フランマ)」!!

カルタフィルス:こんな炎! キカナイ!!

フィアンマ:っつ!

アルト:『その()は……』

アルトN:この能力を使うことの負担は想像以上で、意識が飛びそうだった。
     けど――

アルト:ここで、(あきら)めたら……一生(いっしょう)後悔(こうかい)することになる……!!

カルタフィルス:シツコイ奴めええええええ!!

アルト:『その()は、決意の輝きを()る』!
    照準固定(しょうじゅんこてい)! 座標把握(ざひょうはあく)!!
    来い! シオン・ケイト・ティールグリーン!!

シオン:……やれやれ……呼び戻すのなら、もう少しマトモな方法を考えたまえよ。

アルト:あはは……ごめん……

シオン:まっ、ヘマをしたのは私だからね。
    責任はとるさ――『時計塔(とけいとう)騎士団(きしだん)』、騎士団長(グランドマスター)としてね。

カルタフィルス:どうして、お前が此処(ここ)にィ?!

シオン:おや?
    驚きのあまりに正気(しょうき)に戻ったのかい?
    私だって驚いているさ。
    それはさておき、戻ったところで申し訳ないが、気付(きづ)け薬を()らってもらうよ。

カルタフィルス:や、やめ――

シオン:私は最高に、今! 機嫌が悪いからね!!
    『我が(こぶし)宿(やどれ)れ、(いかずち)――集束雷撃(フォーカス・トニトルス)』!!

カルタフィルス:ぎゃああああああああああ!!
        
シオン:そこで寝ていろ。
    目が覚めた時は牢屋(ろうや)の中だがな。
    さて……

アルト:遅い、ですよ……シオンさん……

シオン:すまないな、もう大丈夫だ。
    フィアンマもよくやった。
    これですべて――

アルト:い、いや……まだ、終わっていない……

シオン:ちょっと! 無理に立つんじゃない!!

アルト:最後にやらなきゃいけないことが――

フィアンマ:アルト様! あぶない!!

アルト:フィアンマさん……ありがとう……大丈夫かい?

フィアンマ:ご自身のことを心配して下さい!
      今にも倒れそうじゃないですか!!

アルト:うん……ごめん……でも、彼を助けなきゃ……

シオン:アルト、あのブラックドッグを助けるのか?
    少なくともキミを殺そうとした奴だぞ?

アルト:…………

シオン:それに、奴にかけられた(のろ)いは強力なモノだ。
    いくら君が不思議な力を持っていたとしても、それを取り(のぞ)けるかどうかわからない。
    もしかしたら、君までも(のろ)いにかかるかもしれない。

アルト:それでも、彼のおかげで……こうやって僕は生きている……
    だから、彼を助ける……それだけだよ。

シオン:ハァ……大馬鹿者め、満身創痍(まんしんそうい)(くせ)にかっこつけて……
    ミスター・お人好し、ちょっと待ってろ。
    『ティール』――せめて(のろ)い対策の加護(かご)ぐらいをつけておかないといけないだろう。

アルト:ありがとう……優しいんだね。

シオン:いいから、早く助けてあげなよ。

アルト:うん……フィアンマさん、肩を貸してください。

フィアンマ:かしこまりました。

シオン:――まったく、私もヒトの事が言えないな。

Scene 06

グリムN:(なつ)かしい夢。
     まだ、自分がただの黒い犬でいた時の記憶。
     飼い主はとてもお人好しで、困っている誰かを見つけては必ず助けていた。
     いつかは悪い奴に(だま)されるんじゃないかとヒヤヒヤしたのを覚えている。
     でも――そんな彼が大好きだった。
     毎日が楽しくして幸せな日々だった。
     だから――死んでしまった時はとても悲しかった。
     「どうして自分を置いて()った!」――何度も何度も悲しみの遠吠(とおぼ)えをあげた。
     そして、雨の日も、雷の日も、雪の日も(はか)(そば)に居続けた。
     ある日の事だった――

オベロン:君が話題の墓守犬(チャーチ・グリム)か。

グリムN:『妖精王(ようせいおう)』と自称(じしょう)する胡散臭(うさんくさ)い男が話しかけてきた。

オベロン:君も気付いているんじゃないのかい?
     自分がただの犬じゃないということに。

グリムN:『妖精王(ようせいおう)』はそう言って、俺が妖精(ようせい)・バーゲストの()であることを伝えた。
     〝妖精(ようせい)(くに)〟に来ないかと(さそ)ってきたが、俺は断った。

オベロン:残念だよ……まあ、やっぱりそうなるか……
     それじゃあ! お元気で――おっと、忘れてた!
     君にひとつ、伝えたいことがあったんだ。

グリムN:そう言って、奴は愉快(ゆかい)そうな()みを浮かべてこう言った。

オベロン:〝彼女〟の言った通りならば、教えてあげないとね。
     ――君は、近い未来にひとりの人間に出会うだろう。
     人間と、妖精(ようせい)と、そして世界を救う『運命の()』。
     人間と妖精(ようせい)の間に産まれ、『蒼の妖精眼(ラピス・ラズリ)』を持つ人間にね。
     そして、キミの一生涯(いっしょうがい)の友となるだろう。
     そこに眠る、飼い主にソックリなお人好しさ!


(間)


グリム:んっ……ここは……

フィアンマ:気が付きましたか?

グリム:お前は、あの人間の――ぐっ!

フィアンマ:無理をなさらないでください。
      さっきまで(のろ)いで苦しまれていたんですから。

グリム:えっ……そうだ、俺は!
    カルタフィルスに逆らって、(のろ)いが発動して……どうして生きているんだ?

フィアンマ:アルト様……マスターのお陰です。

グリム:マスターって……アイツが助けてくれたのか……?

フィアンマ:本当にびっくりしました。
      (のろ)いを浄化(じょうか)させるだけではなく、あなたと契約(けいやく)するなんて……

グリム:えっ?!

フィアンマ:(のろ)いを解除しても、あなたは消滅(しょうめつ)する運命でした。
      ですが、マスターはあなたを死なせまいとするために契約(けいやく)を結んだのです。
      全く、本当にお人好しなんですから……

グリム:契約(けいやく)……

フィアンマ:お着替えはそこに置いてありますから。
      動けるようになったら、居間に来てくださいね。
      
グリム:……行っちまった。
    俺、また助けられたんだな……『妖精王(ようせいおう)』が言った通りなのかな?
    アイツが――

Scene 07

シオン:まったくキミという人間は!

アルト:それは何度もゴメンって言ってるじゃん!!

シオン:いざ、威勢(いせい)よく向かったとは言え、何も(さく)が無かったとは。
    たまたま妖精眼(ようせいがん)に『浄化』の能力があったから良かったものの
    ――それがなかったらどうするつもりだったんだ、キミは?

アルト:えーっと、それは……

シオン:まったく、(あき)れてモノが言えないよ。
    それじゃあ、いくら命があっても足りない。
    自殺志願者(じさつしがんしゃ)なのかい?

アルト:ごめん……次は気を付けるよ、シオンさん……

シオン:……いまいち信用できないがな。
    どうせ、またやるんだから。
    まあ、いい。
    それよりも、だ。アルトリウム・エムリス。
    私が君を(たず)ねた理由を伝えなければいけない。
    結論から言うと――君の力を貸して欲しい。

アルト:えっ?

シオン:正確に言うと、キミの『妖精眼(ようせいがん)』の力を、ね。
    私は、いや、我々は〝ある物〟を探している。
    ――『マギウス・アーティファクト』、謂わば「魔法道具」というやつだ。

アルト:『マギウス・アーティファクト』……魔法道具……

シオン:魔法は秘匿(ひとく)すべきモノであり、魔法道具は魔法が使えない者にも同等の力を(さず)ける。
    それが何処(どこ)かに存在(そんざい)するのだが……厄介(やっかい)なことに中々見つけられなくて困っている。
    そこにキミが現れた!
    君が持つ『妖精眼(ようせいがん)』は、魔法の気配・魔力・実体を持つ前の妖精(ようせい)などの幻想種(げんそうしゅ)把握(はあく)できる。
    これは私たちにとって助け船だ。
    だからこそ、君に協力を要請(ようせい)する。

アルト:…………。

シオン:もちろん、タダとは言わない。
    対価として、ニニアン・エムリスについて。
    キミの母君(ははぎみ)についての情報を集めることに協力しよう。

アルト:それは……!

シオン:この取引は私にとっても、キミにとっても悪い話じゃない(はず)だ。
    もちろん、私は約束を守る人間だ。
    どうする?
    見知らぬ地で、独りで情報を集めるのは困難なことだと思うけど?

アルト:……わかりました。
    此処(ここ)に来たのも、母さんについて調べるためです。
    自分の力が役に立てるのなら。

シオン:随分(ずいぶん)と早い返答だな。
    もう少し悩むモノだと思ったのだが。
    安請(やすう)()いしすぎる人間なのか?

アルト:なんで困っているんですか……まあ、本当だったら悩むと思うんですけど。
    ……でも、シオンさんの言う通り、悪い話じゃないですし。
    それに――

シオン:それに?

アルト:拒否権(きょひけん)なんてないんですよね?

シオン:どうして?

アルト:……すいません、『蒼の妖精眼(ラピス・ラズリ)』が勝手に起動していて。
    その、心の中が……()えちゃったので……

シオン:キミ! セクハラだぞ!!
    デリカシーがないんだな?!
    このバカ!!

アルト:ごめんって!!

シオン:……次、また心の中を()たら容赦(ようしゃ)しないからな!
    それよりも、他に何が()えたのか?

アルト:い、いや、特に――

シオン:ほ・ん・と・う・だ・な?

アルト:(※勢いよく頷く)

シオン:そ、そうか……なら、いい!

フィアンマ:よ・ろ・し・い・で・す・か?

アルト:うわぁ!?
    フィアンマさん、いつから……

フィアンマ:どうやら、お楽しみでしたので、邪魔(じゃま)したら悪いなって思ったんですけどね!

アルト:えーっと……フィアンマさん?

フィアンマ:なんでしょうか?

アルト:どうして、怒ってるんですか?

フィアンマ:怒っていません!

アルト:怒っているじゃないですか!

グリム:……あ、あのさ。

アルト:グリム!!
    良かった、目が覚めたんだ……!

グリム:あっ……ああ、まあ何とか。

アルト:本当に良かった、無事で……良かった……

グリム:大袈裟(おおげさ)な奴だな……それよりも聞きたいことがあるんだけどさ。

アルト:なんだい?

グリム:どうして、俺を助けたんだ?

アルト:えっ?

グリム:俺はアンタを殺そうとした。
    それにアンタを助けたのだって、借りを返しただけだ。
    ……別に、そこまで、しなくても。

アルト:違うよ、グリム。
    僕がキミのことを助けたかっただけだ。

グリム:えっ?

アルト:自分勝手なことをしたって理解はしているさ。
    けど……なぜだろう、「このまま死なせちゃいけない」って思って。

シオン:ブラックドッグ、そこにいる青年は底抜(そこぬ)けのお人好しなんだよ。
    自分も(のろ)いがかかるかもしれないのに、それを一切考えず、君を助けた。

グリム:お人好し……アンタ、名前は?

アルト:アルトリウム、まあ周りからはアルトと呼ばれているけどね。

グリム:……アルト、そうか。
    なあ、アルト……俺を、アンタの使い魔にしてくれないか?

フィアンマ:えっ!?

グリム:強制契約(きょうせいけいやく)ではなく、正式な契約(けいやく)として。

アルト:もちろん、嬉しいけど……キミはそれでいいのかい?

グリム:……アンタには二度も助けられた。
    それに、あのヒトにそっくりだからな。

アルト:あのヒト?

グリム:何でもない……なんだ、その手は……

アルト:握手(あくしゅ)だよ、友人として。

グリム:だから、俺は使い魔だって――

アルト:それでもだ。

グリム:……意外と強情(ごうじょう)なんだな。

アルト:よく言われるよ。
    (あらた)めてよろしく、グリム。

グリム:あぁ、こちらこそ。
    私の主人(マイ・マスター)

シオン:ガヴィージャの末娘(すえむすめ)に、バーゲストの()……大したものだ。
    妖精眼(グラムサイト)を持つとは言え、2柱の妖精(ようせい)を使い魔にするとは……
    おや~? どうしたんだい?
    さっきよりも不機嫌そうな顔をしちゃって~

フィアンマ:ナンデモアリマセン。

シオン:……独占(どくせん)、出来なくて残念だったな。

フィアンマ:なっ! ななななにを言っているんですかー!!

シオン:嫉妬(しっと)の感情が駄々漏(だだも)れだ。

フィアンマ:くううううう!

シオン:君も主人に似て愉快(ゆかい)なヒト……いや、妖精(ようせい)だなぁ〜

フィアンマ:うるさい! です!!

シオン:あはははは!

シオンM:……そういえば、すっかり忘れていたが。
     カルタフィルスを逃してしまったのはどうするか……
     まあ、でも霊核(れいかく)に致命的な一撃を与えることが出来たから、消滅(しょうめつ)までは時間の問題だろう。
     ただ……何故(なぜ)、アルトを(ねら)ったか?
     あの口振りだと、『蒼の妖精眼(ラピス・ラズリ)』のことは知らなかった。
     ……本当の黒幕(くろまく)がいる。
     だけど、それは(だれ)だ?

Scene 08

カルタフィルス:ハァ……ハァ……
        くっそ……どうして傷が治らない……!
        いってぇ、いってぇよぉ……
        俺は不死身(ふじみ)である(はず)だ……どうして……意識が朦朧(もうろう)とするんだ……

マジスター:それは君の霊核(れいかく)にヒビが入っているんだよ。
      カルタフィルス。

カルタフィルス:マジスター……いや、アレイス――ぐふっ!

マジスター:良くないな、実に良くない。
      役に立たないキミに僕の名前を言う権利はないよ。
      ……それにバカだね~
      呪詛(じゅそ)をかけようとしたのかもしれないけど、今のキミでは造作(ぞうさ)にもないよ。
      物語を(そら)んじる詩人のほうが圧倒的に言葉のほうが重い。

カルタフィルス:あっ、あっ……剣が胸にィ……

マジスター:さようなら、さまよえるユダヤ人。
      此処がキミの巡礼(じゅんれい)の最終地点だ。
      ……貧民窟(ひんみんくつ)のくらーい、暗い……光が届かない場所だけどね。

カルタフィルス:あぁ、消える……身体が消える……いやだ、嫌だ嫌だ嫌だ……

マジスター:……消滅した、か。
      まあ、今回は失敗に終わったけれども、大きな収穫だ。
      やっぱり弱い相手を(なぶ)るよりも、力ある者を(なぶ)るほうがボクには性に合う。
      ただ、暫くは休眠することにしよう。
      種は()いた。
      ――『運命の()』よ、是非とも予言の(うた)(かな)えておくれ。
      最後に全て台無しにしてあげよう。   

(END)

マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 2/2:その瞳は、決意の輝きを視る

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 2/2:その瞳は、決意の輝きを視る

妖精と、人間の間に産まれた子。 それは妖精と、人間と、そして世界を救う『運命の仔』。 イギリスを舞台にした魔法ファンタジー劇、開幕します! ※声劇台本です。

  • 自由詩
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-24

CC BY-ND
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CC BY-ND
  1. 台本概要
  2. 登場人物
  3. 上演貼り付けテンプレート
  4. アバンタイトル
  5. Scene 01
  6. Scene 02
  7. Scene 03
  8. Scene 04
  9. Scene 05
  10. Scene 06
  11. Scene 07
  12. Scene 08