マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 1/2:妖精眼の青年と魔法使いの少女と

にがつ

『妖精眼』――魔法の気配・魔力・実体を持つ前の幻想種などを把握できる妖精のみが持つ眼。

「ようこそ、現代も尚残る神秘の領域へ――」

台本概要

◇台本名◇
 マギウス・アーティファクト-英国魔法幻想譚-
 #01 妖精眼-Gramsight- 1/2:妖精眼の青年と魔法使いの少女と


□台本情報□
 ジャンル:魔法ファンタジー
 所要時間:25~30分
 男女比率 男:女:不問=3:2:0(合計:5名)

登場人物

 アルト・クナギリ
  性別:男性、年齢:18歳
  本作の主人公で、日本人の父親とイギリス人の母親を持つハーフ。
  母親の姓で名乗る場合は「アルトリウム・エムリス(Artorium Emrys)」。
  性根は温厚で優しく人情深く、他人が傷つけられるのを何よりも嫌う。
  突然届いた母・ニニアンからの手紙によって英国へと向かう。

 シオン・ティールグリーン
  性別:女性、年齢:17歳
  本作のもうひとりの主人公でもあり、ヒロインでもある魔法使い。
  女王陛下から政府や警察が対処出来ない魔法使い関連の事件を対処することを
  任された秘密組織『時計塔(とけいとう)騎士団(きしだん)』を統括(とうかつ)している。
  良家(りょうけ)令嬢(れいじょう)ではあるが、本性(ほんしょう)尊大(そんだい)かつサディストで他人の困る(さま)が好き。

 ニニアン・クナギリ=エムリス
  性別:女性、享年:30歳
  アルトの母親で、事故で亡くなっている。
  突然届いた彼女の手紙がアルトの元に届いたことで、アルトは英国へ向かう。

 フィアンマ
  性別:女性、年齢:見た目は10代後半
  ニニアンにかつて仕えていた家事妖精(ブラウニー)で、リトアニアの家事妖精(ブラウニー)・ガヴィージャの子。
  炎を扱う魔法を得意とするが、起こると制御できない時がある。
  ニニアンの命でロンドンにある彼女の家で、アルトが来るのを待っていた。

 カルタフィルス
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半~30代前半
  〝首領(マジスター)〟と呼ばれる(なぞ)の男性の命令でアルトを襲撃(しゅうげき)する。
  使い魔として『ブラックドッグ』のグリムがいるが、奴隷(どれい)のよう(しいた)げている。
  正体は、3世紀にヨーロッパで伝説が広まり始めた神話上の不死の男である『さまよえるユダヤ人』。

 オベロン
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半
  アルトの夢の中で現れた、自身の事を『妖精王(ようせいおう)』と称する謎の青年。

 マジスター
  性別:男性、年齢:見た目は20代後半
  カルタフィルスにアルトの殺害を命じた(なぞ)の男性。
  ふざけた言動、行動をとるが、その裏で何か(たくら)素振(そぶ)りも見せる。

上演貼り付けテンプレート

 台本名:マギウス・アーティファクト
     #01 妖精眼-Gramsight- 1/2:妖精眼の青年と魔法使いの少女と
 URL https://slib.net/108102

 【配役】
  アルト(♂):
  オベロン / 〝マジスター〟(♂):
  シオン / アナウンス / N②(♀):
  フィアンマ / ニニアン(♀):
  カルタフィルス / 運転手 / N①(♂):

アバンタイトル

アルト:ここは――

アルトN:気が付いたら、知らない場所にいた。
     見たことがない、(いろど)り豊かな花が水平線の彼方(かなた)まで咲き(ほこ)り、(ちゅう)に浮かぶ神殿(しんでん)のような建物。
     目に映る光景が現実離れとしたモノは明らかだった。

オベロン:驚いたかい?

アルトN:声がした方向に顔を向ける。
     そこには(おだ)やかな()みを浮かべる、ひとりの男性。

オベロン:うんうん、その顔を見たかったよ。
     初めまして、アルト・クナギリ。

アルト:あ、あの!

オベロン:しっー!
     キミは、此処(ここ)では声をあげていけない。
     〝彼ら〟が集まってきてしまうから。
     いいね?

アルト:(※素直に従い、声を出さずに頷く)

オベロン:賢明(けんめい)な判断に感謝するよ。
     シェイクスピアも言っていたからね。
     ――「賢明に、そして、ゆっくりと。速く走る者たちは、つまずきますからな」
     さて、ここからは真面目になる時間だ。

アルトN:そう言って、先程の様子とは一転(いってん)して真面目(まじめ)な顔になる。
     どこか威厳(いげん)を感じさせられ、まるで王様と話している気分だった。

オベロン:(なんじ)()る光景は、やがて訪れるであろう未来の世界。
     此処(ここ)到達(とうたつ)するは時期(じき)尚早(しょうそう)だ。
     世界の裏側を知り、そして(おの)が運命を切り(ひら)く仲間に出会わなければいけない。
     ――とまあ、簡単に言うと「キミが此処(ここ)に来るには、世界を知らなさすぎる」っていうことさ。

アルトN:そして、再び優しい()みへと(もど)る。
     あまりの雰囲気(ふんいき)のギャップに差がありすぎて困惑(こんわく)してしまう。

オベロン:あはは、本当、彼にそっくりだ!
     若き日の父君(ちちぎみ)を思い出すよ。
     でも、目元は……うん、〝彼女〟と同じ(あお)(ひとみ)だ。
     おっと、いけないいけない。
     うっかりと色々と(しゃべ)ってしまうところだった。
     さて、そろそろ夢が終わる時間だ。
     目が()める前に、(ぼく)の名前を()げておこう。
     ――(ぼく)の名前はオベロン、【妖精王(ようせいおう)】オベロンだ。
     異邦(いほう)の旅人よ、歓迎するよ。
     ようこそ、現代もなお残る神秘(しんぴ)領域(りょういき)へ――


(間)


アルト:んっ……あれ……?
    今のは――

アナウンス:この飛行機は、ただいまからおよそ15分でロンドン・ヒースロー空港に着陸する予定でございます。
      ただいまの時刻(じこく)は午前8時30分、天気は晴れ、気温は20度でございます。
      着陸に(そな)えまして、皆さまのお手荷物は、離陸の時と同じように――

アルト:夢、だったのか……それにしても、不思議なことが立て続けに起きるなぁ……

アルトN:やがて飛行機は到着する。
     (ぼく)は〝ある目的〟で〝この国〟を――イギリスを訪れた。
     目を向けた先の1通の便箋(びんせん)――届くはずのない、死んだ母さんからの手紙に(みちび)かれて。



アルト:マギウス・アーティファクト、#01

シオン:妖精眼(グラムサイト)、1/2、「妖精眼(ようせいがん)の青年と魔法使いの少女と」

Scene 01

N①:イギリスのロンドン中心部、ウェストミンスター。
   ウェストミンスター宮殿(きゅうでん)にある一室(いっしつ)にて、ひとりの少女が上機嫌(じょうきげん)に誰かと電話をしていた。

シオン:そうか、(つい)に〝彼〟が来たのか。
    もちろんだよ、予定通り、私一人で会いに行く。
    おやおや、可愛い妹が危険な目に合うんじゃないかと心配なのかい?
    優しくて心配性(しんぱいしょう)兄上殿(あにうえどの)だ。

N①:そう言って、少女は机に置かれていた〝調査書〟に目を通す。

シオン:だけれども、安心したまえ。
    兄よりも優秀な妹だからね、私は――フフッ、そこで()えて否定しないのが、兄上殿を愛らしいと感じるよ。
    まあ、でも確かにその心配には同意するよ。
    規格外(きかくがい)の存在だ……なにせ、ヒトと妖精(ようせい)の間に産まれた子なんて聞いたことがない。
    正直、私はとてもワクワクしているよ。
    なぜかって?
    当たり前じゃないか! 面白いに決まっている!!

N①:ドンっと勢いよく〝調査書〟が置かれた。
   〝調査書〟の題名(タイトル)は、『アルト・クナギリこと、アルトリウム・エムリスの経歴について』

Scene 02

N①:ロンドン・ヒースロー空港から電車に()られて1時間。
   場所は、ロンドン西部にあるウェスト・プロンプトン駅。
   大通りに立地(りっち)している駅舎(えきしゃ)のため、のどかな街並(まち)みではあったが多くの人で(にぎ)わっていた。

アルト:手紙には、のどかで静かな街だって書いてあったけど……結構栄えている。
    住所は書いてあるけど……タクシーの運転手に場所を聞いてみるか。
    ――すいまーせん、此処(ここ)に行きたいんですけど……わかります?
    えっ、車で30分!?


(間)


運転手:それにしても、お兄さん、旅行者?
    めずらしいね~

アルト:はい、日本から来ました。

運転手:日本人なの?! 
    めっずらしいね~
    この街にあんまり来ないからさ!
    もしかして……心霊(しんれい)スポット(めぐ)りが好きだったりするの~?

アルト:心霊(しんれい)スポット?

運転手:えっ?
    『幽霊屋敷(ゴースト・ハウス)』に行きたいって言うから、てっきりそうだと思ったんだけど。

アルト:『幽霊屋敷(ゴースト・ハウス)』?

運転手:そうだよ、『幽霊屋敷(ゴースト・ハウス)』!
    いなくなった主人を待ち続けるメイドの幽霊(ゆうれい)が出るらしいんだ。
    目撃者もそれなりにいるしね。
    それに、幽霊(ゆうれい)だけじゃなく、ウィル・オ・ウィスプも出るらしいよ~
    火の玉だよ、火の玉!

アルト:そ、そうなんですね。

運転手:なんだい、お客さん、本当に何も知らないのかい?

アルト:はい、その『幽霊屋敷(ゴースト・ハウス)』……亡くなった母の実家なので……

Scene 03

N①:アルトがロンドンに向かう3週間前。
   それは突然(とつぜん)届いた。

アルト:(だれ)からだろう……宛先(あてさき)が書いていない……
    んっ、手紙が入っている。

N①:封筒(ふうとう)には2枚の手紙――何の変哲(へんてつ)もない手紙で、すべて英語で書かれていた。

アルト:「親愛なる私の誇らしい息子、アルトリウムへ」
    「この手紙が貴方(あなた)(もと)に届いたということは、私はこの世にいないでしょう」
    ――これ、もしかして……!

N①:「信じられない」という顔を浮かべる。
   けれども、手紙を書いたのは数年前に()くなった母親だということがわかる。
   手紙を読み進めていく。

ニニアン:「悲しい思いをさせてしまってごめんなさい」
     「出来ることなら、最後まで貴方(あなた)を守りたかった」
     「不甲斐(ふがい)ない母を許してください」
     「――これから行う選択は不本意(ふほんい)ではあるけれども」
     「貴方(あなた)には生きて欲しい」
     「だから、私は選択します」
     「アルト、イギリスに向かいなさい」
     「そして、手紙の最後に書いてある住所に向かいなさい」
     「お母さんが生まれ育った屋敷(やしき)があります――」

アルト:「――そこに、あなたを助けてくれる〝彼女〟がいます」
    「あなたに神のご加護(かご)を、ニニアン」
    どういうことだ……もう一枚は……なにこれ?
    何の詩だろう……

ニニアン:「此処(ここ)に (うた)われるは 予言の(うた)
     「妖精(ようせい)と 人間と 世界を救う」
     「救国(きゅうこく)(かみ)たる 赤き龍に 選ばれし()
     「その名は 『運命(うんめい)()』」
     「(こわ)い (こわ)い ()しき 妖精(ようせい)が やってくる」
     「天使と (うそぶ)き (わたし)たちを ()いに来るのさ」
     「だけど 大丈夫 (わたし)たちには 勇者がいる」
     「いざ (いさ)ましき ロンディニウムの騎士(きし)を (ひき)いて」
     「時計塔(とけいとう)の (かね)を 鳴らせ」
     「西の大聖堂(だいせいどう) から 世界の裏側へ」
     「希望の (かね)()を 聴かせておくれ」
     「世界に 祝福を 白き邪龍(じゃりゅう)に 永久(とこしえ)の眠りを」
     「さあ (まわ)せ (まわ)せ 運命の歯車(はぐるま)を」

Scene 04

アルト:お邪魔(じゃま)しまーす……って、誰もいないよね~
    それにしても、あの話、本当なのかな?

運転手(回想):いなくなった主人を待ち続けるメイドの幽霊(ゆうれい)が出るらしいんだ。

アルト:……ううっ、寒気(さむけ)が!
    ホラーとか苦手なんだよなぁ……てか、本当にいるのかな?
    誰もいなさそうだけど……なに!?
    今、(とびら)が開く音がしたような……んっ?

N②:アルトがなんとなく(まど)の方をチラリと目を向けると、人影(ひとかげ)が見えた。
   ひとりのメイド服姿の女性、ゆっくりとした足取(あしど)りでガラス()りの建物に入っていく。

アルト:メイド……本当にいた、幽霊(ゆうれい)……どうする?
    でも、生きている人間の可能性もあるし……よし、行ってみよう!


(間)


アルト:うわぁ……すごい……

N②:ガラス()りの建物は、庭園(ていえん)だった。
   それも植物園と見違(みちが)える程、多種多様な綺麗(きれい)な花や樹木(じゅもく)が植えられ、
   ひとつひとつ丁寧(ていねい)手入(てい)れされていた。
   すると――

フィアンマ:「此処(ここ)に (うた)われるは 予言の(うた)
      「妖精(ようせい)と 人間と 世界を救う」
      「救国(きゅうこく)(かみ)たる 赤き龍に 選ばれた()

アルト:この歌、どこかで……

N②:鼻歌(はなうた)()じりに聞こえてくる声。
   アルトはゆっくりと声の(もと)へと向かう。

フィアンマ:「(こわ)い (こわ)い ()しき 妖精(ようせい)が やってくる」
      「天使と (うそぶ)き 私たちを ()いに来るのさ」
      「だけど 大丈夫 私たちには 勇者がいる」
      「いざ (いさ)ましき ロンディニウムの騎士(きし)を (ひき)いて」
      「時計塔(とけいとう)の (かね)を 鳴らせ」

N②:そこには、メイド服を着た小柄(こがら)な女性がひとり。
   ご機嫌に鼻歌を歌いながら、植物たちに水をあげている。

フィアンマ:「西の大聖堂(だいせいどう) から 世界の裏側へ」
      「希望の (かね)()を 聴かせておくれ」

アルト:あ、あの……

フィアンマ:「世界に 祝福を 白き邪龍(じゃりゅう)に 永久(とこしえ)の眠りを」

アルト:あの、すいません!

フィアンマ:「さあ (まわ)せ (まわ)せ 運命の」――えっ?

アルト:あっ。

アルトM:しまった! 普通に話しかけちゃった!!
     ど、どうしよう……すごくジッと見ている。
     不審者(ふしんしゃ)だと思われている?
     やばい、こういうときって()(わけ)が思いつかな――

フィアンマ:あっ……あっ……

アルト:ちょっと待ってください!
    決して(あや)しい人間じゃ――

フィアンマ:アルト様、ですか……アルトリウム・エムリス様ですか……?

アルト:えっ、どうして、(ぼく)の名前を――うわ!

フィアンマ:間違いありません!
      ニニアン様にソックリなお顔に、『(あお)妖精眼(グラムサイト)』!
      間違えるはずありません!

アルトM:抱きつかれた!
     そして、顔が近い!!

フィアンマ:お待ちしておりました、あなたが再びこの地に訪れるのを!!

Scene 05

N②:ロンドン・ウェストミンスター地区、ハイド・パーク。
   時刻は夜の7時。
   普段(ふだん)、多くの人で(にぎ)わう公園は、夜の(やみ)静寂(せいじゃく)に包まれていた。

カルタフィルス:おい、来たぞ。

マジスター:んっ……おおっ、時間ピッタリだ!
      遅刻魔(ちこくま)であるキミにしては(めずら)しいことがあるものだ。

N②:そうベンチに座る銀髪の男性が愉快(ゆかい)そうな声でそう言う。
   一方で、背後に立つ、髪を腰まで長く伸ばした長身痩躯(ちょうしんそうく)の男は不機嫌(ふきげん)な顔でいた。

マジスター:相変わらず、ノリが悪い男だ。
      まあ、いいや……カルタフィルス、キミに新しい仕事を頼みたい。

カルタフィルス:それよりも!

マジスター:どうしたんだい?

カルタフィルス:なあ、〝首領(マジスター)〟!
        いつになったら、俺は(のろ)いから解放されるんだ?
        今度こそ()いてくれるんだろうなァ?!

〝マジスター〟:(※ため息を一回つく)

カルタフィルス:(おれ)はこれ以上、彷徨(さまよ)い続けるのは(つら)いんだ!
        いつまでたっても再臨(さいりん)(とき)は来ない!!
        「協力してくれたら解放する」――アンタはそう言ってくれたよなァ!!

〝マジスター〟:カルタフィリス……落ち着きなよ。
        シェイクスピア、『ロミオとジュリエット』第二幕。
        ――「賢明に、そして、ゆっくりと。速く走る者たちは、つまずきますからな」
        要は「()いては事を仕損(しそん)じる」と言う事だよ。

カルタフィルス:くっ!

マジスター:安心しなよ、僕は約束を守る。
      それに今回でキミの仕事は終わり。
      (のろ)いから解放してあげよう。

カルタフィルス:本当か!? 俺は、一体、何をすればいいんだ……?

マジスター:ウェスト・プロンプトンに〝幽霊屋敷(ゴースト・ハウス)〟と呼ばれる屋敷(やしき)がある。
      そこに向かい――その屋敷(やしき)の主人である青年を殺すんだ。

カルタフィルス:なっ!?

〝マジスター〟:そんなに驚くことかい? 簡単な話だろ?
        それに〝人殺し〟自体は初めてのことではない(はず)だ。

カルタフィルス:しかし、それは今までのは異教徒(いきょうと)だったからだ……!

マジスター:どんなに言い訳をし、正当化してもヒトを(あや)めた事実は変わらない。
      カルタフィルス、まさか、キミ……出来ない、と言うつもりかい?

N②:〝首領(マジスター)〟の(おだ)やかな声が暗く低いモノへと変わった。
   カルタフィルスはそれに底知(そこし)れぬ恐怖(きょうふ)を覚え、全身を(ふる)わせ(おび)える。

カルタフィルス:や、やる! やり()げてみせる!!

マジスター:……うん、いい子だ。
      そう言ってくれると信じていたよ。
      報告を楽しみにしている。

カルタフィルス:……クソが!
        ちっ、そんなところに()(たっ)ているんじゃねえよ!
        駄犬(だけん)が!!

N②:カルタフィルスは、彼の使い魔である少年に()りをいれる。
   (アザ)だらけの姿(すがた)から、少年にとって彼からの暴力は日常茶飯事(にちじょうさはんじ)であることがわかる。
   ()られても抵抗(ていこう)する事なく黙っており、彼の後をついていく。

マジスター:使い魔とは言え、幼い少年に暴力をふるうとは……元は賢者であった(はず)の者が、今では愚者(ぐしゃ)へと()()てている。
      愚者(ぐしゃ)愚行(ぐこう)(おか)すのは滑稽(こっけい)でしかないが、賢者(けんじゃ)愚行(ぐこう)(おか)すのは悲惨(ひさん)でしかない。
      ()たして、彼は理解しているかな?
      ――「此処(ここ)に (うた)われるのは 予言の(うた)
        「妖精(ようせい)と 人間と 世界を救う」
        「救国(きゅうこく)の 神たる 赤き龍に選ばれた()
        「(こわ)い (こわ)い ()しき 妖精(ようせい)が やってくる」
        「天使と (うそぶ)き (わたし)たち 全てを ()いに来る」

N②:そして、悪魔(あくま)彷彿(ほうふつ)させる邪悪(じゃあく)()みを浮かべる。

マジスター:「()(あらた)めた 罪人(ざいにん)に 首を切り落とされて」
      「『運命の()』は 永遠(えいえん)に さようなら」
       ――こっちのほうが愉快(ゆかい)(うた)だよ、フフッ。

Scene 06

アルト:――うん、眠れない。
    ベッドはすごくフワフワして気持ちいいけど、部屋が広すぎて落ち着かない……
    それにしても――


(間)


フィアンマ:どうぞ。

アルト:ありがとうございます。
    (※紅茶を飲む演技をした後に)この紅茶(こうちゃ)、おいしい。
    それにグレープフルーツの香りがする。

フィアンマ:H.R.ヒギンスのブルーレディです。
      マロウとマリーゴールドの花がブレンドされたフレーバーティで、店一番(みせいちばん)の人気の紅茶です。
      ちなみに、H.R.ヒギンスは英国王室御用達(イギリスおうしつごようたつ)のお店なんです。

アルト:なるほど、それならおいしいのも納得。
    フィアンマさんのお気に入りの紅茶なんですか?

フィアンマ:はい、でも……私のお気に入りと言うよりは、ニニアン様が大好きな紅茶だったんです。
      ご健在(けんざい)だった時、私が()れた紅茶をよく()めてくれていました。
      あの御方(おかた)の笑顔を見ると、とても幸せな気持ちになるんです。
      「喜んでもらえるように頑張ろう」って。

アルト:母さんが、好きな紅茶だったんだ……初めて聞いた。

フィアンマ:アルト様……す、すいません、私としたことが……

アルト:大丈夫ですよ、気にしないでください。
    それに母さんのことを知らないのは当然なんです、あんまり一緒にいる時間が少なかったので。
    (うれ)しいんです、自分が知らない母さんの事を知れて。
    だから、フィアンマさんが知っていること、(ぼく)に教えてください。

フィアンマ:アルト様……

アルト:あと、「様」をつけなくて大丈夫ですよ。

フィアンマ:い、いえ! そういう(わけ)にもいきません!!
      アルト様は、ニニアン様のご子息(しそく)なのですから!
      私にとっては(つか)えるべきご主人様なのです!!

アルト:……ということは、ご主人の命令は聞いてもらえるんですか?

フィアンマ:もちろんです! なんでも聞きます!!

アルト:言いましたね、なんでもって言いましたね?
    それじゃあ、主人として命じます。
    今後、僕の事を「様」付けで呼ばないでください。

フィアンマ:うっ……それは……

アルト:お願いしますね。

フィアンマ:か、かしこまりました……圧を感じさせる笑顔は旦那様(だんなさま)にソックリです。

アルト:父さんのことも知っているんですか?

フィアンマ:もちろんです。
      旦那様は、私の命の恩人なんです。
      ニニアン様と日本に戻るまでの短い期間でしたが、とても楽しかった日々であったことを覚えています。
      人間の社会だけではなく、考古学(こうこがく)についても色々と教えていただきました。
      ニニアン様の伴侶(はんりょ)として相応(ふさわ)しい素敵(ステキ)な方で、私のような下級妖精(かきゅうようせい)に対しても物腰(ものごし)が低かったのが印象的でした。

アルト:えっ……

フィアンマ:どうかしましたか?
      なにか、すごく驚かれていますが……

アルト:い、いま……妖精(ようせい)って……

フィアンマ:はい、そうですよ。
      そういえば、正式な自己紹介をしておりませんでした。
      私の名前は、フィアンマ。
      炎の女神・ガヴィージャの末娘(すえむすめ)であり、()くなられたニニアン・クナギリ=エムリス様の眷属(けんぞく)かつ、家事妖精(ブラウニー)。
      以後お見知りおきを、〝私のご主人様(マイ・マスター)


(間)


アルト:うーん……『妖精(ようせい)』ってアレだよな?
    ファンタジーの漫画やゲームに出てくる『妖精(ようせい)』だよね?
    当たり前のことを話すように言うから、何も言えなかった。
    あっー! もう!!
    訳が分からない!!

シオン:悩み事かい? ミスター?

アルト:うん……悩み事と言うか、なんて言うか――あれ?

シオン:やあ、ステキな夜だね。

アルトN:窓の(わく)腰掛(こしか)ける、ひとりの女の子。
     綺麗な(あか)い髪のロングヘアーがなびき、小悪魔(こあくま)のような蠱惑的(こわくてき)()みを浮かべていた。
     彼女が持つ雰囲気(ふんいき)は「高貴(こうき)」の一言で、何処(どこ)()かれる部分があった。

シオン:おや? これはつまらないな~
    キミの事だから、驚いたリアクションひとつでもしてくれるかと思えば。
    まさか、ハトが豆鉄砲(まめでっぽう)を食らったようなマヌケ(づら)を見ることが出来るとはね。
    私としては、それはそれで面白いんだけれども……サプライズの予定だったから、
    この結末(けつまつ)には(きょう)ざめだよ。
    よっと!

アルトN:茫然(ぼうぜん)としていた自分の元に少女はやってくる。
     見定(みさだ)めるかのような目付(めつ)きで自分を見つめる。

シオン:おお! これが『妖精眼(グラムサイト)』!!
    正真正銘(しょうしんしょうめい)の、本物の『妖精眼(ようせいがん)』!
    妖精眼(ようせいがん)()した義眼(ぎがん)を見た事はあるが、やはり本物は違うな!!

アルト:えーっと、その……

シオン:あぁ、申し訳ないな。
    つい本物を見てしまったことで興奮をしてしまった。
    初めまして、アルト・クナギリ……いや、アルトリウム・エムリスの方がいいかな?
    僕の名前は、ティールグリーン家の当主、シオン・ケイト・ティールグリーン。
    ――魔法使いだ。


(END)

マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 1/2:妖精眼の青年と魔法使いの少女と

この物語はフィクションです。

登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

マギウス・アーティファクト #01.妖精眼 1/2:妖精眼の青年と魔法使いの少女と

妖精と、人間の間に産まれた子。 それは妖精と、人間と、そして世界を救う『運命の仔』。 イギリスを舞台にした魔法ファンタジー劇、開幕します! ※声劇台本です。

  • 自由詩
  • 短編
  • ファンタジー
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-23

CC BY-ND
原著作者の表示・改変禁止の条件で、作品の利用を許可します。

CC BY-ND
  1. 台本概要
  2. 登場人物
  3. 上演貼り付けテンプレート
  4. アバンタイトル
  5. Scene 01
  6. Scene 02
  7. Scene 03
  8. Scene 04
  9. Scene 05
  10. Scene 06