夏の終わるかおり

夏とラムネ

夏が終わる気配がした

縁側では元野良の白い猫がだらんと伸びて
時折り風が吹いては軒先に吊る下がった風鈴が鳴いた
さっき飲みきったラムネの瓶は光をうけてきらきらひかり、青い影がアスファルトに落ちた

むかしは瓶の中のビー玉を取り出そうと思案したものだった
どう頑張ってもビー玉を手に入れられなかった私は駄々をこね、姉を困らせた
姉はしょうがなく駄菓子屋の景品だった綺麗なビー玉を私にくれたけど、それはどうしたって瓶の住人とは違って、私はもっと切なくなった

夏がおわる、のはひぐらしの声が聞こえたとき
ラムネの炭酸が抜けきったとき
夕日の色を受けて、ラムネ瓶はオレンジの影を落とした

夏の終わるかおり

夏の終わるかおり

夏の終わりを考える

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-21

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