夏の終わり
夏を回想する少女
「今年は花火を見れなかった」
不満げに瑠璃子は言い、道端の石ころをちょいと蹴った。
瑠璃子の白いサンダルから覗く親指は深い青に染まり、光を反射してちらちら輝くホログラムは川底に隠れる魚の鱗を思わせた。
「でも手持ち花火はしたよ。西瓜だって食べたし、ラムネも飲んだ。」
欲張りは良くないよ、と瑠璃子を諌めながら思い出す。
手持ち花火の日、あんなに危ないからよしなと言ったのに瑠璃子は真っ白なワンピースを着てきた。
線香花火の小さな灯
真っ白なワンピースの瑠璃子
誰のいない河川敷で、川の音だけが聞こえる
真っ暗闇に浮かび上がる瑠璃子は夏の亡霊のようだった
「打ち上げ花火は来年に持ち越しかな」
夏の終わり