小さき仔らよ

電話ボックスの緑色のなかで膝を丸めて
祈るように眠っている白いいきもの

ほんとうにやさしいことってなに
ほんとうに やさしいひと 
やさしいことばをもってないから沈黙してしまう

あなたに繋がる電話線をさがしています
扉に伸ばす手が煤けてくずれ落ちていくから
きょうも灰が降る 
いつも砂嵐の画面をみている人影
ねえいつかビニル傘をもって、迎えに行きます

(ゆびきりげんまんうそついたらはりせんぼんのますゆびきった)

反射する蛍光灯の緑 おしまいの宇宙をやさしく照らしている 永遠なんてことばで、ポケットのなかのカッターナイフが錆び付く どうかおゆるしを

いつか鐘が鳴りさよならを言うの 
(永遠が嘘なら さよならだって永遠じゃないよ)
あなたが眼を覚ますとき、灰が降りやむように
夕やけのなか手を引かれて 温もりにゆめの続きを溶かして 帰ったらよく手を洗って、それから八時間、きっかり眠って。

小さき仔らよ

小さき仔らよ

  • 自由詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-13

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