秋の短歌

秋の短歌

織姫やかくも枯れなば天の川
渡る釣り船かひもなからむ

今来むと
思ひ燃ゆれば逢ふ瀬にも
はやき渡しにおふるまつかな

たかが蚊のかき集めたい嵩ならば
構わないから痒くするなよ

たかがこの「いいね!」で
君が幸せになるなら押してあげてもいいけど

馬刺しなら嫌いじゃないけど
生き馬の目なんか抜いても食べられやしない

日は遅くなりぬ
朝からひぐらしの声聞く
梅雨は明けたばかりぞ

少しだけマシになってる気がします
バカは死ななきゃ治らないけど

あの頃はバカだったなんて言ってみる
まるでバカが治ったみたいに

心にはお酒は痛み止めだから
違うよ誰かに見てほしいだけ

十五年経ってあなたの本を読む
あなたの気持ちが溢れ出してる

もう道を踏み外すことはないだろう
庭先に咲く花を見つめる

土曜日の奥多摩線は
登山靴、スマホ、マスクの見本市かな

月曜の自転車置き場のアブラゼミ
驚かさぬようサドル引っ張る

秋立ちて六日遅れてあかつきの
西の窓辺に行き着ける風

大空に編隊飛行の横田基地
わきの小道を毛虫渡れり

悪いけど世界は迷ってなどいない
人間様の我が強いだけ

秋空と女心を知る頃は
秋の田もかる冬になるらし

ぢいさんを追ひ越せずにゐる通勤路
先に通してくれたのは犬

母の家祖父母の遺影と共に寝る
祖父母の家で見てた景色だ

モフモフをさわってなでていじくって
あそびつかれた子どもたちねる

生きてさえいればいいときだってある
生が無意味に思えてる夜

欲しいもの分からないんじゃ
いくら手を伸ばしてみたって
手に入りゃしない

蝉のなく頃にはどこで何するや
秋の夜長に蟋蟀のなく

夢くらい
楽しいものを見させても
いいじゃないかよ
神様のバカ

僕のギター売ったら一万円でした
あなたは今も歌っていますか

ほらご覧記憶のドアが開いている
あんなキッスはもうできないね

知らぬ間に虫鳴く頃になりました
気づきましたか十五夜の夜

雲一つない十五夜だ
望遠鏡片手に昨日の酒を飲み干す

鳥の鳴く声に虫の音白むれば
秋の夜長もやがて終はりぬ

北高尾登り下りて堂所
相模湖満たすわが滝の汗

俺のこと「青春じゃんか」なんて言う
大人になんかなっちまったよ

この家の眺めも悪くないけれど
俺が欲しいのはこの景色じゃない

若者のジジイに対する悪意には
薔薇のような美しさがある

おふくろが沸かしてくれた
この狭いお風呂にもあと何回入れる

徒歩十分もかかる駅に出入りする
電車聞こえる静けさが好き

台風の後の湿った風に潜む
線香の香り島の匂いだ

俺ならばきっと踏み絵を踏むだろう
そしてすぐにも忘れるだろう

若き日の東京から来た君の言う
「さん」と「じゃん」に騙された私

旧暦の重陽なのに巣ごもりじゃ
登高すべき先も見えない

十三夜Yahooで探す君の名を
もしや名字が変わっているのか

十九の俺とおんなじことをする
子にもおんなじ秋風の吹く

解き方が合っててミスがなければと
いばりし君はパンツ見えてる

きちゅちゅきと真面目に言ひしヴェトナムの
君の言葉をなおす霜降

十代のあの感動に比べれば
なんて抜け殻みたいなrock 'n' roll

今日のこのクソつまらない日常も
いつかなるのかあの砂浜に

消しゴムの残したやうな雲がをり
飛行編隊曇天に舞ふ

スマホ見て顔照らすのもいいけれど
今日は鏡のような月夜だ

俺のいるこの立川の街路樹もちゃんと紅葉してるとちの木

ブロンズは真昼をそっと放射してメタセコイアに秋は沁み入る

夕焼けはまだ少し早い三時半芒の撫でる風のひとり吹く

ことならば秋に死にたしふるさとの紅葉の燃える日の落ちる頃

金毘羅の社に死せる蟷螂は一足先に冬の音を聞く

秋の短歌

秋の短歌

  • 韻文詩
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-07

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