万にひとつのこえ

雪水 雪技

万にひとつのこえ
  1. かたくななあまり
  2. たわむれ
  3. アルケー
  4. 分離の証拠
  5. 一文のための一生涯
  6. 異国の夢
  7. 窓を割りたい頃
  8. 遺跡の遺言
  9. 縫い目のわたしへ
  10. 午前2時
  11. アーキタイプ
  12. 傷には触れないように
  13. 青いオオカミがとおる
  14. ふるえる鼓膜
  15. 歴史思索
  16. わたしのおと
  17. 地球の目がひらく日
  18. 万にひとつのこえ
  19. 埋葬
  20. 心残り

Twitter詩まとめ24

かたくななあまり

ひとつも割り切れなかった心

世の中グレーだと彼等は言った
最初から用意された灰色の上
最初からかいてるあぐら

そのうちわかるよという呪詛

つまらないこと大層に語り
ありがたがられる流れは三文芝居

それが大人なら子供でいるよ

心はひとつも割り切れなかった
それが敗因だと言われても

たわむれ

ねむる誰かのおもみ
自分はそれの友達
自分はそれが自分

視点はめまぐるしく
一人何役もこなして

ただひとつの物語
虫食いだらけの物語

友達になろう
恋人になろう

恋は嫌だよ
いずれ冷める
夢のない夢を見る

夢の中でも寝込む私に
友達は数字の暗号を見せた

いつまでも友達
それだけの話

アルケー

天使を見たか
白の死霊か
形は不明瞭

彫刻になるもの
それは美とされた
形の中にそれがある

曖昧な思想に
溶け込む砂糖
まやかしでもよかった

溶けていく骨
私の形を見ないで
出来上がったものを触る

愛は対極にいつもいる
こっちを見てる
見ないでと呟く

万物の始源をはじめから定義して

分離の証拠

繋ぐものばかり探して
なんでもいいから像をつくる

繋ぐものばかり探して
見えないものは文字に起こした

私たちはひとつになれず
長い間彷徨って来た種族

それよりありふれたものに
なんらかのあたたかみを見て
それに幸せと名付けて抱いている

それは素晴らしい行為らしく
道すがら見ていた

一文のための一生涯

一文で十分
なのに見つからない

ただの一文
書けないでいる

つまらない文字ばかり
ばらばらと落ちてくる

何になろうとした?
わからないけれど
はじめるしかなかった
否、はじめたかった、ようやく

無言で頑なな目はひかるけど
何が怖いのかもわからない
ただつかれているばかり

異国の夢

知らない国へ行き
もてなされていた
つたない英語で話す

洞窟の中で過ごす
迷路みたいなのに
都会的な様相

帰りの飛行機に
お土産を詰める
金色の履き物を忘れる

機内は閉塞的な教室で
がらりと木の戸を開けて
流れる景色を見ながら叫ぶ

金色に輝く人形の塔
黒板に書かれた文字は吹き飛んだ

窓を割りたい頃

言えないことを
色付きのペンで
書きつづる少女

暗いままの教室
みんな逃避して
無意味に騒いだ

その光景に嫌気がさした
少女はペンを折った

私は急いで窓を開けて
寒波を教室に入れ込んだ
目を覚ませ、叫んだのは

少女か、私か、
わからないまま

進路指導をされる
また繰り返す人生の岐路

遺跡の遺言

修学旅行は空中庭園
庭園は飛行する
その下には地球

数多の遺跡を訪ね歩く
殆どがレプリカ
戦いの跡だけが
きざまれ悲壮感

壁画の絵は物語
色彩ははっきりと
寂しくないように
ひとつの部屋に棺

青いパンと緑のジュース
テーマパークは目が回る

帰り道は逃走劇

歴史の亡霊たちから逃げ帰る

縫い目のわたしへ

わかりにくいこと
ほほえんで回避

わたしはほんと
不調法なもので

誰も信じちゃいけないよ

それでも人を愛しなさい

矛盾したものが
血液に混入して

矛盾を嫌いながら
そういう自分は好き

末期的ちぐはぐ
縫い目はがたがた

酷い出来上がりの
ワンピースを着て

どこにも行けない真夏の昼間

午前2時

雨の中走った
逃げるように
コンクリート
びしょ濡れに

手をつかまれ
投げられた先
わらったのは
いつか信じた
人たちだった

もういなくなった
落胆の底で
信じるのは
自分自身の
脆弱な精神
薪をくべろ

雨の中震えるのは
もう終わりと虹

午前2時冷や汗
目を覚ましてる
夢の中で何を叫んだ?

アーキタイプ

魂の形を知っている
だからそれをつくる

なのにうまくいかない
また反故紙が増えていく

実際つくりはじめるなら
それは大いなる一歩だ

つくらないで
かたるばかりは
くずれてもつれる

私はまたつむいでる
無駄なことであっても

生産的でないと
後ろ指さされても

それでも私はつむぎだす

傷には触れないように

私のいない風景を
寂しい心で見る夢

潜在的なにか
無意識下のなにか

やめてくれともがいて
惰眠を貪るのも考えもの

私のいない風景は
風通しよく見えた
余計に悲しくても
もう何も言えない

忘れられないことは
忘れなくてもいいから

この傷には何もない
探してくれるな

私はいないのだから

青いオオカミがとおる

ゆうべ
聞いたか?
彗星の如き遠吠え

ほら、オオカミの、列だ
みな、ひれふして、目を合わすな

月夜にはかならず
ひとりではならず

オオカミを見たら
あのひとみを見たら

お前の脆弱な魂など
ひとのみだ、と脅される

ああ、違う、俺は俺だ、と
オオカミを映すみずうみに

俺の顔が映るだけ

ふるえる鼓膜

きこえるのは
たしかなのか

さあ、でもこの鼓膜に
しんどうするものは、

なんであれ
とらえられる波だ

物質そのものに
そなわる意味を
蓄えて蓄えて
何に備えている?

これは、波である
或いは、紐である

悲しみはさざなみ
寂しさはうずしお

巻き込まれるまま
それが生だと叫ぶ

歴史思索

地図をひらいたら
見えてくるだろう

誰がそこにいたのか
お前は知っているだろう

そこにあった感情を
そこにあった政を

つまびらかにしてくれ
有史以前のできごとを

無言の紋様に無言のヒトガタ
岩のサークル、その意味を

何故、
僕らを置いていってしまったのか

どうか、教えてくれまいか

わたしのおと

かえるばしょは
じぶんの音だ

五線譜の上に
かならずある
じぶんの音は
ひとつの故郷だ

低くとも
高くとも
じぶんの音

同調し過ぎて
見失うなと
楽譜の警告

どこへ行っても
必ずこの音へ
戻ってこい

精神よ
心よ
魂よ

じぶんのただひとつの本当

ただひとつを極めて
心地よく鳴らして

地球の目がひらく日

野うさぎの跳躍をもった精神
どこまでゆけるかかけている

地底で開いた地球の目玉は
ぎょろぎょろと地上を見ている

蒼天の空を羨ましく妬ましく
思う心は誰のものであったか

野うさぎは私ではない
私は野うさぎではない

地球の目玉は誰の目玉
何故濁った天井を見ている

奇妙な論題は机上にて

万にひとつのこえ

いつまでもうたう
たゆたう魂のこえ

遠い昔から旅をして
なおも、燃えさかっているか

その炎で何を燃やしたい
もしくはその松明で何を照らしたい

そこまで大義はない
そこまで義理はない

ただ、目印にはなろうか
ひとつの地点、ひとつの星として

万にひとつの存在
明日には忘れ去られても

埋葬

点と線が結ばれて
今日の世界は軽やかです

光が入り込む朝には
直線のやさしさを見ます

残る暑さが何かを訴えて
私たちは冷えた水に幻を見ます

さようなら、を言いましょう
切実な思いにもピリオドを

さようなら、を言いましょう
季節の埋葬、そして信じます

つぎの光と闇をこえること

心残り

もう誰もいない研究室に
ふらふらと入り込み
ひとりでぼんやり過ごす

外は薄いオレンジ色
夕暮れのにぎやかさ
もう誰もいない部屋
そこに居場所はもうないのに

私は懐かしい部屋で眠る
誰も来ないのを知っている
自分から出ていった
いつかの居場所

連絡ノートの落書き
もう何も無いのに

万にひとつのこえ

万にひとつのこえ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-08-07

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