幾星霜

 ほしがしんでた。こういうのを、かなしい、という気持ちだけで片づけてしまうのは、わたしの道理に反するなぁ(実際のところ、そんな大層なものではないけれども)と思いながら夜空の、不確かな星座をさがしている。腐っていくばかりなので、次第に、あしもとがぬかるんでくる。
 星から、星をみている。
 人類はみんな、やさしかったのだとおしえてくれたのは、コールドスリープから目覚めた過去のひとだった。にんげんはもう、いないと思っていましたと、そのひとは言って、わたしは、ほぼいないも同然です、と答えた。夏、という季節が殺人的に暑かったのはもう、幾千年前のことで、それどころか、四季、なんてものはいつのまにか、溶けて混ざりあって、なにもなくなった。感覚は乏しく、神経は鈍り、肉体は脆弱し、生命は泡沫と例えらえて、わたしとネムは、それでも、唯一の生き残りという、途方もなく壮大で、絶望にも似た使命感に脅されて、骨になることを免れてきたのだと、過去のひとに話した。
 過去のひとは泣いてた。
 あたりまえだと思った。

幾星霜

幾星霜

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-06

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