短々落語「湯豆腐」
400文字以内のショートショート落語臭
「湯豆腐」
(豆腐屋で)
ご免よ
いらっしゃいまし、今日は何を
うん、これから客人を招き一席設ける。実は先日小石を品に挟むへまをやってね、そのお詫びと、あわよくばまた品を買って貰えないか商談も兼ねてね。でその大事な一席で湯豆腐を振舞おうと思う。で主役は豆腐。そこでお前さんだ、お前さんの豆腐は実に旨い、ただ少し値が張るのが玉に瑕、まぁ一長一短という処だね
えぇ旦那、うちの豆腐は一長一短ありますが、この味まで長い年月がかかりましてね、なかなか一朝一夕にはいかぬものですから
そうだね、では一長一短の一朝一夕にはいかぬ豆腐を頂こうかね
おいくつで?
もちろん一丁
旦那、旨いと褒める割には、実にしみったれだね、旦那も一長一短だ。大事な一席の湯豆腐がたったの一丁かい。それじゃぁ一席も一朝一夕にはいかぬ
じゃぁもう一丁、合せて二丁
あいよ旦那、この湯豆腐で、詫びも商談もうまくいきますぜ
なぜだい
それは「いっせきにちょう」だからでさぁ
短々落語「湯豆腐」
お後がよろしいようで。