西日

 斜陽。オレンジ色に輝く、チャリのハンドルを掴む手。幽かに聴こえる鐘の音。鐘の音。張り巡らされた電線に、カラスはいない。”帰りましょうね…”
たゆる響きに、オレンジ色の光の中に、古帳の独特なにおいが、おどっているみたい。
 こうしてぼおっとしているときは、不思議な気持ち。無意味なんだろうな、この時間は。立ち止まって変に考えるのは、悪いこと。怠惰だ。どうしようもなく思考停止する脳を、必死に否定して、呼び起こそうとする。でも私はこの、これが好きなんだよな。

西日

西日

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-08-03

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