はじめのことば

雪水 雪技

はじめのことば
  1. 殺到
  2. 魔法使いは振り向かない
  3. 孤独につく嘘
  4. こわがりな王様
  5. 自由人の不服
  6. ねむれぬ夜には
  7. 春のこおり
  8. たゆたうもの
  9. 強風におびえぬ心
  10. 聞こえる、あの咆哮
  11. 矜持
  12. 未来からの手紙
  13. つかれている
  14. もよう
  15. 運転
  16. 微睡は夏風に
  17. 瀕死の心へ告ぐ
  18. はじめのことば
  19. 古本を愛す
  20. 夢をも侵食するもの

殺到

ダイヤモンドみたいな星が
ひとつ天にかがやいて

みんな網をふりまわして
みんな箒をふりまわして

欲しい欲しいと騒いでいた

連日のニュースで取り沙汰されて
すっかりくたびれたブラウン管

皆の頭の上いちようにございます
慌てないよう、騒がぬように

魅せられた人類に
その声は届かない

魔法使いは振り向かない

魔法使いの舞踏会を覗き見て
その姿に心奪われた夜

それは見てはならないものだった
私は人間、踊れない

その魔法使いの踊りは
丘の上の妖精のための踊り

私はただ、焦がれるだけ

踊る魔法使いに恋をして
ひとり秘密の罪悪と
叶わない思いを抱いて

夢の中でまた眠る夢を見る

孤独につく嘘

ひびわれたのは
饗宴のおわりに
誰かのコンパクトミラー

おしろいをはたいて
誰かと群衆の中へ
消えたのだろうか

わたしは荒れ果てた
パーティーホールに
心細く立ち尽くす

心はがらんどう
誰も迎えにこない
知っていれば悲劇では無い

それは嘘だと
冷たい視線は射抜く

絶体絶命、脆弱なエゴ

こわがりな王様

永遠に変わらないものばかり
身の回りにおいて暮らして
自由人の身軽さを羨む王様

城の外では目まぐるしく
季節も人も変わる変わる
目がまわる王様は城にかえる

旅人の話を本で読んでは
その冒険譚を羨む王様

くるくる回る風見鶏が見える
東西南北の風にすら怯えてる

夢を見て眠る王様涙する

自由人の不服

愚か者と人は言う
動かないことが賢いらしい

不安をかき消すために
向かい風に高らかに歌う

最小限の荷物
最大限の不安

みんな俺に悩みを見出さない
俺は恐れている一寸先すら

それでもとどまることは
同じぐらいの苦痛だった

不安に食い散らかされる心
全てを麻痺させるために
続いてる旅路

ねむれぬ夜には

不安な夜は童謡を抱いていよう
大人も子供もこの星に生まれて
はじめてひとりぼっちを知る

どんなに繋がりを説かれても
この心細さは解かれることなく
いつも三日月のような心許なさ

耳に入り込むピアノの音
雨音、さざなみ、せせらぎ
或いはブルーライトに慰められて

今日を生きた誇りひとつ

春のこおり

薄くはられた
冷たいこおり

春になっても
とけないこおり

何時ぞやの思い
何時ぞやの夢見

そのままにして
うごけないまま

美しきもの
戻らぬもの

集めた自分に
永遠の冬を

たゆたうもの

流れと揺らぎに身を任せて
心のよどみ、とどこおり
それは何かを見つめてる

知っているのに見えない
幽霊みたいにうろついて
不安という衣のような

流れと揺らぎに預けて
清らかな川を思う日
すべてゆるされる日

何を背負って来たのでしょう
すっかりおろして軽くして
もう思いわずらうまい

強風におびえぬ心

煽られるたびに
しなるように

風に抵抗せずに
傘が壊れて人を守る如く

何にしがみついて
何に怯え暮らして
何に抗おうとして

私が相対的な現象でも

あらゆる懐疑を脱ぐ勇気を持つ
私の意識を信じる私の意思には
誰にも介在できない根源たる場
源泉は枯れるず澱まない

無形にして無限の魂

聞こえる、あの咆哮

獅子が咆哮する

谷底にいるのか
山頂にいるのか
荒野の最果てか
水平線の彼方か

どこにでもいる
この街中にいる
私の部屋に入る
金色の太陽光

獅子はいる
内在される
心そのもの
獅子は宿る

真に弱い者などいたのだろうか
私の感傷すら金色のはじまり

あの咆哮が聞こえたのなら

矜持

風も吹かない
暗転のさなかに

思い浮かべる
栄華の灯

変化には怯える癖

当たり前のこと
生きている証拠
幕はまだ降りていない

これからも変わる
常世は古典に委ねる

次のシーンに向かうか
諦めて舞台を降りるか

空席ばかりでも胸を張れる
そういうものしか私は演らない
私の矜持に消した灯

未来からの手紙

帰らないと決めた
若き日々に

今至る場所教えたるが
引き返すなと付け足す

熱病者の闘争
平熱にて穏当

それが日常でも
すべて無常だった

それでもいいから
ここまで来いよ

遠くの方から声がする
武装解除の後日談では
心はいつも怯えていた

戦いばかりが人生か
それに否と言う今だ

つかれている

山から降りてきた影は
都市をのみこんでいく

待っていた気がしていた
もうすっかりつかれた今

誰もが混乱のさなか
私は両手をひろげた

沈黙する海底
いつのまにか
眠りに落ちる

つかれている昨今
取り憑かれぬよう
御用心下さいませ

回覧板を見た今朝
水浸しの玄関先
海月の引っ越し

もよう

消えた線路
消えた道

行方不明の錬金術師

みんな化かされて
狐や狸を疑い出す

自らを疑う私は
洞窟の中に籠る

どこにいても
おなじだった

教室も洞窟も
会社も病院も
私の心模様は変わらず

異界からお誘い
それもお断り

どこにいても同じ
心模様が天気模様
等圧線の狭さが
息苦しい今日

運転

逃げた覚えはない
道を違えただけ

引き返すことが出来ないなら
違うルートを探して進むだけ

カーナビに頼らない
自動操縦は遠い未来

今は直感だけで進む
それは憧れた心のままに

今どこにいようとも
私の心情に変わりはない

心だけが世界
心の変化は
変わる景色

思い出は燃料
ある意味エコ

微睡は夏風に

生きてるとわかる
なまぬるい風

みながやさしい
傷口をさけるようにして

私は何について考えている?

もう考えるふりはやめたら?

魂だけが行き先を知っている
私の体は魂の目的のために動く

全て自然体でそうなってゆく

このなまぬるい風にふかれて

お気に召すままに

魂の赴くままに

瀕死の心へ告ぐ

つきまとっても叶えてやれない
自らを自らの手で終わらすことは

心の底が炎症を起こしている
一方で燃え上がらない気持ちへ
終止符を打ちたがる短気者

まだ何も見ていないくせに

予言者でもない
千里眼もないくせに

終わりに魅せられる心

叶えてやらぬ
惰性でいい
瀕死の心へ
続けよと告ぐ

はじめのことば

はじめるときには言葉がある
はじめたあとには私と言葉が続く

終わり方は決められない
道のりについて一切は
大いなる意思が働く

私は大海或いは荒野
私は街中或いは部屋

そこではじめたことをつづける
励み、努め、地獄と天国を見る

終わりには大いなる意思が働く
その時、いとまを頂くまで

古本を愛す

先読者の赤線が何故か愛おしい
古本が古本たる証のけなげさ

赤線が示すところに
その人が何を求めていたのか
ああ、この思想に、この言葉に

渇きを癒やされたことであろうかと

どこの誰とも知らぬ方の
熱中の痕跡が、時間も場所も超え

こんな田舎の片隅で混ざること
柔らかな邂逅、国語の時間

夢をも侵食するもの

変えられない物語の中で
堂々巡りをしていた今朝
随分と神経はすり減った

あの人を助けるために
銃弾を受けた夢を見た

私は死なないまま
撃った人間を見つめていた

何も変えられなかった
私一人の犠牲では
何も変えられなかった

決まりきっていた
知識が夢を壊した

随分と神経はすり減った

はじめのことば

はじめのことば

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-08-03

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