短々落語「お忙しい最中」
400文字以内のショートショート落語臭
「お忙しい最中」
(え~この世には似て非なるものが沢山ございまして、一つ例えてみますと、国に立つと書いて「こくりつ」と読みますが、同じ漢字でも「くにたち」と読めば、東京にある市の名となりますな。で、東京の国に立つ競技場と書いてあるもんで、千駄ヶ谷からわざわざ国立駅まで足を運んでしまったというのはちょっとした笑い話でして)
おい、ご隠居いるかい
何だい、熊さん
お忙しい最中、悪いんだが、俺にもさいちゅうくれ、さいちゅう
何だい、さいちゅうって
与太郎にあげたやつだよ、さっき道端で奴にあって、うまそうに何か食ってやがるんで、何食ってんだってきいたら、薄皮であんが挟まったやつって言う、で聞けば、ご隠居に貰ったというじゃねぇか、で、まだ一つ手にもっていたんで、そいつをくれっといったら、いやだよ、ご隠居に貰いなってぬかしやがる、で包みに、さいちゅうと書いてあるじゃねぇか、で頂戴、さいちゅう。
熊さんそれはね、もなか、と読むんだよ
短々落語「お忙しい最中」
お後がよろしいようで。