深夏
二時の吐息は、淡く、真夜中の暗くて、深い、底みたいなところからながれてくる、空気が、夏なのにつめたい。
わすれていた、きみの声。
トーンと、色。
夕景にそえた、白い花が、あっというまに枯れて、わずかばかりの罪悪感と、焦燥。
身近にころがっている、生命のおわり。
だれを好きになってもくりかえす、あやまちは、まるで、産まれたときからつながれている、足枷。
窓をあけて、ぬけてゆく、冷房の風。たばこをくわえて、ああ、やめたいのに、と思いながら、火をつける。やめなくてはと思いながら、息を吸い、いまさらかとあきらめながら、紫煙をくゆらせる。目を覚ましたときにつくった、カフェオレの、グラスの表面が、いつのまにかぬれている。ねむっているひとも、ねむれないひとも、ねむらないひとも、いま、みんな、それぞれの居場所で、呼吸をしていて、守られていても、傷つけられていても、愛されていても、ちがう肉体のからだでも、異なる精神をもっていても、なにかしらが等しく、等しいが故に、この星にそんざいすることをゆるされている、というのは、ベッドでひとり安らかな寝息を立てている、ネオのことば。
深夏