たけくらべ
純と愛子は幼馴染である。小学校から中学と、一緒だった。子供の頃から一緒に遊んでいた。いわば本当の兄弟のように。純は内気で、体が弱く、男の友達の中には、入っていけなかった。内気な少年の必然として、自然、与えられた学校の勉強に凝るようになった。その他、あらゆる学科で上位になった。だが、運動は全くダメ。逆上がりも出来ない。一方、愛子は明るく元気で自然、友達も出来たが、当然、女の特性として、数学はダメ。勉強は総じてダメだった。結果、純は愛子の家庭教師のようになってしまった。
「純君。教えて」
といった、ものほしそうな愛子の瞳を純はすぐ察知した。愛子も、あまりにも遅れている低レベルな質問を、他の人に聞くのは、恥ずかしいが、純なら恥ずかしくはない。
「ばか。こんな事も分からないのか」
と、からかいながらも純は丁寧に教えてやった。愛子は、
「てへへ」
と、笑いながらも、
「ああ、そうか。わかった」
を繰り返した。だが、困った事が出てきた。子供の頃は、スカートめくり、などと、ふざけていっていたものが、違う意味をおびだした。のである。愛子の間近に座っていると、愛子に起こり始めたアドレスンスの胸の隆起や、肉体の成熟が、同じく起こり始めている純のアドレスンスを刺激した。第二次性徴といっても、精神的には女は男に嵐のように起こる性欲の亢進に、気づかない。純は勃起したマラを気づかれないようにするのに苦労した。純は家でも亢進した性欲に苦しめられた。何より、勉強中にも起こる性欲のため、成績が下がることを恐れた。純は内向的で、優しい人間がおちいる性的倒錯だった。天性に宿っているマゾヒズムが第二次性徴の性欲の亢進で激しく純を悩ませた。純は女に踏まれ、裸にされ、縛られることを想像して興奮した。電車の中で、膝組みしている美しいOLを見るとつい足に目が行ってしまう。
「ああ。あの足に踏みつけられたい」
ある勉強を教えに愛子の家に行って、勉強が終わって、一休みになった。愛子は、
「おやつ、持ってくるわね」
と言って、パタパタと階下へ降りて盆にジュースにクッキーやら、せんべいを載せて戻ってきた。
「はい」
と言って、差し出しても純は黙ってモジモジしている。
「どうしたの」
愛子は純の顔を覗き込んだ。
「あ、あの」
純は口唇をカタカタ震わせている。
「ぼ、僕を踏んで」
言って純は真っ赤になって俯いた。
「えっ」
少女は一瞬、真っ赤になって我が耳を疑うといった表情になった。
「ぼ、僕をいじめて」
「じゅ、純君。マゾなの」
「う、うん」
少女は一瞬、ためらった表情になったが、しばし目前で、うなだれている純を思案げに見つめていたが、意を決したといったキッパリした口調で言った。
「わかったわ」
純は全てをまかすといった様子でドサリと畳の上に倒れ伏した。少女は椅子に座ったまま、そっと白いソックスに包まれた足を少年の頬に載せた。踏まれた途端、少年は、
「ああー」
と、眉を寄せて苦しげな声を上げた。
「え、遠慮しないで。もっと体重をかけて強く踏んで」
少年は靴下の下から叫ぶように言った。言われるまま、少女は体重をかけて猫をじゃらすようにグイグイ足を揺すった。
「ああー。いいー」
少年は目尻から涙を流しながら、被虐の喜悦の悲鳴を上げた。少年に言われるまま、少女は足で少年の口を塞いだり、目を踏んだりした。しばし少女は純の顔に足を載せてじっとしていた。純は、女に顔を踏まれている事を実感しているかのように顔を火照らせて、目を瞑ってじっとしている。
「愛ちゃん」
「なあに」
「今度はプロレスごっこしよう。愛ちゃんが関節技で僕をいじめるの」
「ふふ。いいわよ」
愛子は純をうつぶせにして、純の背中に乗り、手を後ろに捻り上げた。愛子は、
「チョーク」
と言って、首を閉めたり、口と鼻を塞いだりした。
「ああー」
純は、苦しげな声を出した。
「愛ちゃん。今度は、仰向けにして、乗って」
「わかったわ」
愛子は純を仰向けにして。その上を跨いで、どしんと胸の上に尻を降ろした。そして脇腹をくすぐったり、口を塞いだりした。純は愛子にくすぐられる度に、つらそうに眉を寄せ、
「ああー」
と苦しげな声をだした。愛子は、
「ふふふ」
と笑った。愛子の顔の真下には、純の顔がある。
純は目をつぶって、口を大きく開いた。
「愛ちゃん。唾を入れて」
愛子は、ふふふ、と笑って、唾を純の口の中に垂らした。
純はゴクリと唾を飲み込んだ。
「愛ちゃん。唾を顔にかけて、塗って」
愛子は、ふふふ、と笑って、純の頬に唾を垂らし、満遍なく顔に塗った。
「ふふ。何か面白くなってきちゃった」
愛子は、そう言って唾を塗られた純の顔を見た。
「愛ちゃん。向きを変えて」
「いいわよ」
愛子は純の足の方に顔の向きを変えた。
「さ、さあ。いじめて」
愛子は、純の玉をつかみ、力を入れて握ったり、引っぱったりした。
「ああー」
純が悲鳴を上げると愛子は、つかむ力をゆるめた。
「愛ちゃん。顔にお尻を載せて」
「えっ」
少女はためらいの表情になった。
「で、でも私、重いわよ」
「だ、大丈夫。お願い」
「で、でも、そんなの私が恥ずかしいわ」
「お願い。愛ちゃん」
「わ、わかったわ」
少女は、恐る恐る純の方に尻をずらしていった。そして、ついにそっと少年の顔の上に、申し訳なさそうに尻を載せた。愛子は足と手で体重を支え、出来るだけ純に体重がかからないようにした。
「ああっ。恥ずかしい」
少女は自分の尻が純の顔に触れると、切ない叫びを上げた。
「あ、愛ちゃん」
「なあに」
「手と足で体重を支えないで、全部載せちゃって」
「で、でも。私、重いわよ。そんな事して大丈夫」
「大丈夫だよ。重いと言ったって、たかが女の子一人の体重。どうって事ないよ」
愛子は申し訳なさそうに、少しずつ、手足の支えを緩めていった。ついに愛子は純の顔の上に座る形になった。
「は、恥ずかしいわ。純君にくさい所の匂いまでかがれちゃって」
「クサくなんかないよ。とってもいい匂いだよ」
愛子は真っ赤になった。
「重くない」
愛子は恥ずかしそうな顔で聞いた。
「だ、大丈夫。遠慮しないで、リラックスして」
純は愛子の尻の下から苦しげな顔から声を絞り出した。しばし、そのままの時間が経った。
「ああー。いいー。愛ちゃん。お尻を載せたまま、余裕を示すため、おやつでも食べて」
言われて愛子は煎餅を一つとって、四つに割って、そのひとかけらを口の中に入れた。愛子は煎餅をポリポリと食べた。
「ああー。いいー」
純は被虐の喜悦を上げた。
「一度、女の子にこうされたかったんだ」
静かな部屋に無言の時間が流れていく。純は今まで、ためにためてきた夢想の現実化の実感の喜びに浸り切っているという様子である。
「純君。つらいでしょ」
「ううん。大丈夫。気にしないで」
「気にするわよ。相当つらいはずだわ」
「僕は大丈夫。愛ちゃんはどんな感じ」
「は、恥ずかしいわ。純君にくさい所の匂いまでかがれちゃって」
「クサくなんかないよ。とってもいい匂いだよ」
愛子は顔を真っ赤にして尻をプルプル震わせている。
「もうちょっとこうしていて。僕は何ともないから」
愛子は石のように固まったまま、不動の状態をとりつづけた。しばしの静止した時間が経った。愛子が遠慮がちに相手の許可を求める恐れ恐れの口調で重たい口をやっと開いた。
「じゅ、純君。もうつらいでしょ。お、降りるわ。いいでしょ」
「うん」
純は十分満足したのか、素直に返事した。愛子はほっとした様子で、載せていた尻をのけて恥ずかしそうに俯いて座った。純はゆっくりした動作でムックリ起き上がった。純はもう、ためらいがふっ切れたという表情である。
「愛ちゃん。ありがとう」
「う、ううん」
愛子は顔を真っ赤にして答えた。
「愛ちゃん」
「なあに」
「僕を裸にして」
「ええー。どうしてそんな事するの」
「脱いで裸になったみじめな姿を女の子に見下されて、惨めになりたいんだ」
「わ、私はどうするの。私も脱ぐの」
「ううん。愛子ちゃんは脱がないよ。僕だけ裸になった、みじめな姿を愛子ちゃんが見下すんだ」
「わ、わかったわ」
そう言うや純は力を抜いて愛子に体をまかせるように寄りかかった。
愛子は純の服を脱がせ出した。ワイシャツを脱がせ、ランニングシャツも脱がせた。華奢ではあるが血色のいい瑞々しい上半身が露わになった。愛子は靴下を脱がせ、ベルトも緩めてズボンも脱がせた。愛子はパンツも脱がせて足からぬきとった。純は丸裸になった。純は男の恥部を手で隠しながら愛子の前に正座した。純は脱いだ服を全部まとめて愛子に、畳の上を滑らせて渡した。
「なあに。純君。純君の服を私がどうするの」
「僕は愛ちゃんに裸にされて、服を取り上げられちゃったんだ。だからどこかへ隠してきて」
「わ、わかったわ」
愛子は差し出された服を抱えて階下の押入れの奥に仕舞い、また、パタパタと戻ってきた。
純は脚を寄り合わせ、恥部を両手で隠して、恥ずかしそうに裸の体をモジモジと必死に隠そうというような素振りをしている。
愛子は元々お転婆なので、だんだんこの奇矯な遊戯を面白く思うようになってきた。
「さあ。愛ちゃん。椅子に座って、裸の僕を見下して。おやつを食べながら」
言われるまでも無く愛子は椅子に腰掛けて、膝組みしてストローでジュースを吸いながら、裸でモジついている純を、女帝が残酷な遊戯を楽しむようなイジワルな目つきで眺めている。
純はしばしボーとした表情で、いたが、犬のように愛子の前に四つん這いになった。
「さあ。愛ちゃん。僕の背中に乗って」
愛子は、ふふふ、と笑って、裸で四つん這いになっている純の背中に跨った。
「さあ。純君はお馬よ。いいと言うまで、右回りにぐるぐる回りなさい」
愛子は純の肩甲骨に、突っ張った手を載せて、バランスをとり、相撲取りの四股のように、股を大きく開いて、下半身のバランスをしっかりとった。純は膝を大きく開いて踏ん張って、肘をピンと伸ばし、背中に乗っている愛子を中心に、手と足を交互に一歩ずつずらして、右回りに回り始めた。愛子は自分を中心に回転しているのが面白くなって、背中でキャッキャッ騒ぎ、だんだん足は踵を浮かせ、足先はバランスをとるだけにして背中に体重を全部載せるようになった。
「もっと早く回りなさい」
と言って、尻をピシャリと叩いたり、
「今度は左回りよ」
と言って、回転の方向を変えさせたりした。遅いと尻をピシャリと叩いた。純は全体重がかかったまま、四つん這いでグルグルいい加減長く回っているうちに、だんだん疲れてきて、息が切れて手も痺れてきて、回転の速度が遅くなり、背をガクガク震わせるようになった。そうすると愛子は容赦なく、
「乗り心地が悪いわよ」
と言って、尻をキュッとつねった。とうとう純は体をガクガク震わせながら立ち往生してしまった。
「ゆ、許して下さい。愛子様」
純は泣き出しそうな情けない口調で哀訴した。愛子は、
「ふふふ」
と笑って、
「わかったわ。もう許してあげる」
と言って、立ち上がり、椅子に腰掛けて膝組みした。イジワルな微笑で純を見下して笑っている愛子の足元へ純はヨロヨロと近づき、
「お許しくださり、有難うございました」
と、恭しく言って、足をペロペロ舐めた。
「さあ。愛ちゃん。僕は愛ちゃんの奴隷だよ。いろいろ命令して」
愛子は、
「ふふふ」
と笑って、靴下を脱いだ。
「さあ。純君は私の飼い犬よ。四つん這いのまま、こっちへおいで」
「はい」
純は犬のようにいざりながら愛子の前に来た。
「さあ。足の指をお舐め」
愛子は純の鼻先で膝組した足をブラつかせながら、遠慮ない命令的な口調で言った。
「はい」
純は愛子の足の指をペロペロ舐めた。愛子は、
「あん。くすぐったいわ」
と言いながらも、マッサージのような心地よい快感に興奮しながら、浸って身を任せていた。純が土踏まずをペロリと舐めると、
「あん。くすぐったいわ」
と言って、足を反射的に引っ込めた。愛子は足を組み替えて、床につけていた足を純の鼻先に突きつけた。
「さあ。今度はこっちの足よ」
「はい」
純は同様にペロペロ舐めた。愛子はもはや純に足を舐めさせても何のためらいも感じなくなっていた。
「そのまま四つん這いになってなさい」
愛子はそう言い残して、部屋を出てパタパタと階下へ降りて、ドッグフードと牛乳と小鉢を持って戻ってきた。愛子は小鉢を出して、褐色の兎糞状のドッグフードを入れて、それに牛乳をかけた。
「さあ。お食べ。犬なんだから四つん這いのまま、舌ですくって食べるのよ」
「はい」
純は言われたように、四つん這いのまま、肘を曲げ、首を伸ばしては、牛乳で崩れたドッグフードを少量ずつ咥えては、少し咀嚼してから飲み込んだ。
「よしよし。牛乳も底がきれいになるまで全部、お飲み」
言われたように純は首を伸ばして牛乳に口つけしてはズーズーすすり、飲み込んだ。そして、底が見えてくると愛子に言われたように舌を出して、小鉢の底をペロペロ舐めた。顔を上げた純は、鼻の頭や頬っぺたには、牛乳が惨めにまみれている。愛子はクスッと笑って、
「よしよし」
と言って、ティッシュで純の顔を拭いた。
「愛ちゃん。あ、あの・・・」
と言いかけて純は真っ赤になってうつむいてしまった。
「いいわよ。何でも。私、もう、何を言われても驚かないから・・・」
「あ、あの。軽蔑しないでね」
「うん」
「誰にも言わないでね」
「うん」
「あ、あの・・・。女の子のパンティー履いてみたい」
純は蚊の鳴くような声で言った。愛子は、
「ふふふ」
と笑った。
「いいわよ。私のパンティーでよければ・・・。どんなのがいい」
愛子はそう言って衣装箪笥を開けた。
「あ、あの。出来るだけ女の子っぽいの。ピッチリしたの」
「私、そんなお洒落じゃないから、派手なのとか、セクシーなのはないわ」
これで我慢してくれる、と言って、愛子はピッチリした黄色のパンティーを取り出した。
「う、うん。ありがとう」
純はそれを受け取ると小さな声で、
「み、見ないで」
愛子はクルリと体を反転させ、後ろを向いた。しばしして、
「もういいよ」
との声。愛子が振り返ると、果たしてそこには真っ赤にうつむいてピチピチの黄色のパンティーをはいて、女の子のように膝を揃えて、横座りしている純の姿があった。男の余計なものが無理やりに詰め込まれて、モッコリと異様に膨らんでいる。あわやの動きではみ出しかねない。純は真っ赤になって、うつむいて、両手を膨らんだそこに、隠すように当てている。
「ふふ。純君。似合うわよ」
「ふふ。純君。とっても可愛いわよ」
愛子が揶揄する度に純はいっそうドギマギして頬が紅潮する。
「どう。女の子になった気持ちは・・・」
「・・・・」
「愛ちゃん」
「なあに」
「あ、あの。ブ、ブラジャーもつけてみたい」
純は真っ赤になって言った。
「いいわよ」
愛子は、ふふふ、と笑って、衣装箪笥からブラジャーを取り出した。
愛子は、うっとりしている純の胸にブラジャーを当て、背中でホックをプチン、プチンと、留めた。
純はパンティーとブラジャーを取り付けられた体をピクピク震わせている。玉がパンティーからはみ出さないよう、ピッチリ腿を寄り合わせている。
「ふふふ。純君。似合うわよ」
そんな揶揄を言われても純は黙ったまま、真っ赤になってピクピク体を震わせている。ソワソワともどかしそうにパンティーとブラジャーの上に手を当てて隠しながら。それは恥らっている女の姿だった。愛子は笑いながらマニキュアの小瓶や、メイク用のマスカラやら口紅やらを取り出して、純の前に楽しそうに並べた。
「はい。純君。手を出して」
「な、何をするの」
「メイクよ。純君は女の子になりたいんでしょ。うんと綺麗にメイクしてあげるわ」
躊躇している純の手を掴むと愛子はマニキュアの小瓶を開けて、刷毛で純の爪に派手な赤色の液を塗りだした。
もう純はボーとした表情で、ダランと力を抜いて、愛子のなすがままになっている。
「ふふ。純君の手、細くて、華奢で女の子みたい。マニキュアがよく似合うわ」
愛子はそんな事を言いながら笑ってマニキュアを塗っていった。ダランと垂れた華奢な手の爪に真っ赤なマニキュアが塗られている。
「はい。次は右手」
片手を塗り終わると、愛子はもう一方の手を掴んで、その手も彩色した。
「はい。おわり」
彩色し終わると愛子は刷毛をマニキュアの小瓶に戻した。
「どう。綺麗でしょ」
愛子はマニキュアが施された純の手首を掴んで、純の目の前につきつけた。愛子は、そう言って、手を離したが、自由になった、彩色された指は、いやがうえにも目についてしまい、純は手をモジモジさせている。
「じゃあ、次は顔ね」
と言って、愛子は薄紫のアイシャドーを塗り、ビューラーで睫毛をカールさせ、マスカラを塗った。そしてルージュの口紅を丁寧に塗った。愛子は純のピッチリ閉じている足を掴み、楽しそうに時間をかけてペディキュアを塗った。そして首にネックレスをかけた。そして楽しげな手つきで両方の耳に大きなハートの飾りのついたイヤリングを着けた。
「はい。出来たわよ」
愛子はパンパンと手をはたいて、メイクの道具を机の引き出しに戻した。愛子は等身大の鏡を純の正面に立てた。
「はい。女の子になった純君の姿」
純は恐る恐るの様子で鏡を見た。そして見ると同時に咄嗟に真っ赤になって目をそむけて俯いた。
そこには女の下着を履いて、派手なメイクを施されている純がいたからである。
「ふふ。可愛いわよ。よく見なさい」
愛子は純の顔を鏡に向けさせた。いやおうなく純のメイクされた顔が鏡にうつる。
「ふふふ」
愛子はそれを見て笑った。しばし純は鏡の中に写っている女の格好の自分を顔を真っ赤にして顔をそらして見ていた。
「愛ちゃん。縄で僕を縛って」
突然、純が訴えるように言った。愛子はニコッと笑った。
「わかったわ。じゃあ、縄を持ってくるから、ちょっと待ってて」
そう言って愛子は、部屋を出て、直ぐに縄を持ってパタパタと戻ってきた。
「さあ。両手を後ろに回して」
「はい」
純は華奢な腕をそっと後ろに回して、手首を重ね合わせた。愛子は重ね合わさった手首を捕って、縄尻をとった。手はダランとしている。愛子はピョンと椅子に腰掛けた。縄尻をグイと引くと縄がピンと張り、体がユラリと揺れる。純はおし黙って自分の世界に浸っているという感じである。
「ふふ。純君。こうされたかったんでしょう。捕まえられて、縛られる女の子に・・・」
純は黙っている。
「ふふ。純君。ちかく、純君のためにブラジャーとパンティーをデパートに買いに行きましょうね。もうこれからは一生、女物の下着だけで過ごすのよ。女物の下着だけで学校に来るのよ。きっと、ウットリして気持ちいいわよ」
純は顔を赤くして黙っている。
愛子は、ふと、純のカバンを手にして、中をゴソゴソあさりだした。
「あっ。愛ちゃん。やめて」
純は、身を捩って訴えたが、後ろ手に縛られているため、どうしようもない。
愛子は、カバンの奥に、カバーのかけてある本を見つけて取り出した。めくってみると、ドギついSM写真集である。女が丸裸で柱に縛り付けられていたり。後ろ手に縛られて、きれいに剃られたアソコをことさらエロティックに見せるために、褌のようにカッチリと縄が女の秘所に食い込むようにとりつけられている。脚は言いようも無いほど大きく開かれている。その他、尻を高々と突き上げている写真。竹や梯子を使って、実に恥ずかしいポーズにされている写真が項をめくるたびに現れた。愛子は息を弾ませながら食い入るように見た。
「すごーい。ものすごい写真」
「純君て秀才なのに、こういうのを隠れてこっそり見ているのね」
などと感心したような口調で言う。
「純君はマゾだから、こういうみじめな格好の女の人に感情移入して興奮してるんでしょ」
「愛ちゃん。僕をいじめて。僕、愛ちゃんになら殺されても幸せだよ。うんとうんと酷くいじめて」
純は顔を真っ赤にして言った。愛子は、ふふふ、と笑った。
「いいわ。うんといじめてあげる」
そう言って、愛子は縄尻をとった。
「純君。立って」
言われて純はヨロヨロと立ち上がった。少しでも気を緩めると玉がはみ出てしまう。勃起したペニスの先も、はみ出る直前である。純はそれらが何とか見られないよう、膝を寄り合わせ、腰をモジつかせた。愛子はそれを余裕で眺めている。
「ふふ。困ってモジついている純君。かわいいわよ」
「私ってサドなのかしら」
と言って愛子は、ふふふ、と笑った。
「じゃあ、家の中を散歩しましょうね」
そう言って、愛子は立ち上がって、縄尻をクイと引っ張った。愛子は純を連れて部屋を出て、階段を下りた。純は、
「真直ぐ。左。右」
と、愛子が後ろから指図するのに従って歩いた。
「ふふふ。パンティーがピッチリしてて、かわいいわよ」
「何だか捕虜にした女の子を引き回しているみたいで面白い」
などと言って。風呂場に入れて行った。
「ふふ。水、かけちゃおうかしら」
などと言って、パンティーが濡れない所まで、足に水をかけた。そしてタオルで濡れた足をふいた。風呂場を出て食卓につくと、愛子はイチゴケーキを持ってきた。純は、後ろ手に縛められて手が使えないので、どうしたらいいか、わからずに困った顔つきである。愛子は自分が一口食べると、純の皿のケーキを一切れ切って、
「はい。アーンして」
と言って、大きく開いた口の中に入れた。愛子は自分のケーキを一切れ切って、食べながら、純にもケーキを食べさせ、純がケーキを咀嚼して、ゴクリと飲み込むのを楽しそうに眺めた。
ケーキを食べ終わると。愛子は純を玄関へ連れて行った。
「はい」
と言って、ヒールサンダルを出し、純に履かせた。愛子もヒールサンダルを履いて玄関に下り、ドアを開けた。午後の蒸し暑いムッとするような空気が入ってきた。
「な、何をするの」
「ちょっとだから。その姿で庭に出て御覧なさいよ」
そう言って愛子は純を無理やり外に出し、急いでドアを閉め、ロックした。ドンドンと純が体をドアに当てている音が聞こえる。愛子は居間のソファーに、足を投げ出して、余裕で座った。正面はガラス戸でレースのカーテンがかかっている。純は庭に回って、ガラス戸ごしに身をすりつけ、訴えるように何かを叫んでいる。が、防音で、音が遮断されて、何を言っているかは分からない。純は玄関に戻って、インターホンを鳴らした。
「愛ちゃん。お願い。中へ入れて」
「純君はいじめられたいんでしょ」
「でも、それは、あくまで愛ちゃんとの二人きりの秘密ということだよ」
「でも、私の言う事には何でも従うんでしょ」
「ともかく入れて。こんな姿、人に見られたら大変だよ」
「それがスリルがあるんじゃない。私、一休みするから、純君もスリルを楽しみなさいよ。きっと純君もスリルが快感になるわ。純君の性格なら」
「そんな。愛ちゃん。お願い。家へ入れて」
そんな純の訴えを無視して愛子はインターホンをきった。愛子はソファーに横たわって、目を瞑り、わざと寝乱れた姿をとった。クーラーが聞いていて部屋は心地いい。愛子はソファーに身をもたせた。全身横たえられるソファーと、足にひんやり触れる心地よい皮の感触から、いろいろに体を崩した。スカートがめくれても気にならなかった。
しばし愛子は、ソファーの心地よい感触に身を任せていた。
グウという自分のいびきで、愛子は起こされた。時計を見ると時間は三十分経っていた。
愛子は、立ち上がって窓ガラスの所へ行った。庭には純はいない。愛子は玄関に行って、ロックを開いてドアを開けた。玄関の前に純が小さく縮こまっている。純は顔を上げた。
「愛ちゃん」
純は潤んだ瞳を愛子に向けた。
「ふふ。純君。よく我慢したわね。もう許してあげるわ。入りなさい」
純はソロソロと立ち上がって、家の中に入った。
「どう。スリルがあって気持ちよかったでしょう」
純は答えない。が、恥ずかしそうに頬を紅潮させている。
「否定しないって事は、気持ちよかったって事ね」
愛子は嵩にかかったように楽しそうに言った。
愛子はソファーに座って、純を隣に座らせた。愛子は、
「つらかったでしょう。よく我慢したわね」
と言って、純の体をいたわるように揉んだ。いたずらっぽく、乳首をキュッとつねったり、尻を撫でたりした。が。純はもはや逆らおうとはしなかった。
「あ、愛ちゃん。もう、どうにでもして」
純は目を瞑って叫ぶように訴えた。愛子は、
「ふふふ」
と笑って、
「ふふふ。いいわよ。うんとおとしめてあげる」
と言って、純の縄尻をとった。愛子は純にアイマスクをした。
「な、何をするの」
愛子は、それには答えず、純の縄尻をとって、外に出た。愛子の誘導、によって、純はどこへ行くとも知れず歩いた。
「あ、愛ちゃん。どこへ行くの」
純が不安げに尋ねた。愛子はそれには答えず、
「ふふふ」
と笑った。
しばし歩いた。純には、どこをどう歩いたのかも分からない。愛子の足が止まった。
そこは学校に程近い、荒れた社だった。周りは雑木林で囲まれている。一本の太い立ち木がある。ここは、生徒が煙草を吸ったり、お菓子を食べながらお喋りするために来ることもある所である。愛子は、一本の立ち木立に純の縄尻を回して、木に縛り付けた。そして目隠しをとった。
「あっ。愛ちゃん。ここは」
愛子は持ってきた純のカバンからノートを取り出して数学の教科書を下敷きにして、ボールペンをサラサラッと走らせた。
「な、何を書いているの」
純が不安げに言った。愛子は書き終わると、それを純の鼻先へつきつけた。それにはこう書かれてあった。
「僕は青葉台高校一年の山本純という者です。僕は秀才ですけど変態です。僕はマゾで女装趣味があります。通行人の方。どうか、僕の恥ずかしい姿をとっくり見て下さい」
純は真っ青になった。
「や、やめて」
必死で叫ぶ純を無視して、愛子はいたずらっぽく笑いながら、純の頭の上に、それを画鋲で紙をとめた。あたかも江戸時代の晒し者の罪人の前に立てる罪状の立て札のように。
愛子は純のカバンから、500ccのオレンジジュースのペットボトルを取り出した。
「はい。純君。暑いから脱水になるといけないわ」
「い、いいよ」
イヤそうに顔をそむける純の顎をつかんで、愛子はペットボトルの口を純の口に突っ込んで、無理やり飲ませた。周りの木々の中では蝉がミンミン鳴いている。純は眉をしかめ、苦しげな表情で、んぐんぐ言わせながら、最後の一滴まで飲まされた。愛子は純が飲むのを楽しそうに見つめている。
「はい。お茶も飲みたいでしょう」
「い、いいよ」
と顔をそむける純に愛子は無理やり、ペットボトルの口を突っ込んで、麦茶を飲ませた。愛子は、折ってきた木の枝で純の体を子供の悪戯のように、あちこちつついた。しばしして、純は足をモジモジさせだした。
「ふふ。どうして足をモジつかせているの」
と言って、愛子は純の脇腹を爪の先でスッとなぞった。
「あっ」
純が悲鳴を上げる。
「ふふ。どうしたの」
純はうつむいて黙っている。
「おしっこがしたいの?」
純は頬を赤らめて小さく肯いた。愛子は、
「ふふふ」
と笑って、
「じゃあ、私は帰るわよ。一時間したら、戻ってくるからね。しっかり通行人の人に見てもらうのよ」
愛子は祠の前に立ってパンパンと柏手を打った。
「どうか、私がいない間、誰も来ませんように」
そう言って愛子はクルリと背を向けて歩き出した。愛子が帰ろうとすると。
「待って。愛ちゃん」
と言う純の訴えを後に愛子はパタパタと帰ってしまった。
あとにはパンティーとブラジャーを着て耳にハートのイヤリングをつけ、ルージュの口紅をつけて木に縛り付けられた純が残された。杉木立に囲まれた社の一角の木に女の下着を身につけて、気に縛り付けられている光景は何とも珍妙である。
しばししてキャッキャッと騒ぎながら石畳を上ってくる二人の女の声が聞こえた。純はギョッとして体を震わせた。が、木に縛られているため、どうすることも出来ない。二人は事もあろうに同じクラスの銀子と桂子だった。二人は女物の下着を履いて、木に縛られている純を見て、ギョッとして顔を見合わせた。
「いったい、どうしたの。純君」
「お、お願い。見ないで」
二人は純の訴えを無視して近づいて純の顔を覗き込んだ。純は顔を真っ赤にして横を向いた。二人は純の頭の上にある張り紙を見つけて声を出して読んだ。
「僕は青葉台高校一年の山本純という者です。僕は秀才ですけど変態です。僕はマゾで女装趣味があります。通行人の方。どうか僕の恥ずかしい姿をとっくり見て下さい・・・だってさ」
「へー。人は見かけによらないわね。純君がマゾで女装趣味があったなんて・・・」
「数学が出来る人って変態が多いって聞いた事があるけど、やっぱり本当なのねー」
ことさら驚いたように銀子が言った。
「何言ってるの。そんな事聞いたこと無いわ。自分が数学が出来ないからって負け惜しみ言ってるだけじゃない」
桂子は銀子の頭をコツンと叩いた。
二人は顔を見合わせて腹を抱えて笑った。
「きっと今まで学校にも学生服の下にブラジャーとパンティーを履いて、通っていたのねー」
「でも誰が縛ったのかしら。これ、自分じゃ縛れないわ」
銀子が後ろ手に縛りつけられている純の手首の所を覗き込んで言った。
「きっと、誰か純君とこういう趣味の合うパートナーがいるのよ」
「誰かしら。うちの学校の生徒かしら。男の子かしら。女の子かしら」
「ともかく、マゾで見られたいって言うのだから、とっくり見て、いじめてあげましょう」
と言って、二人はコチョコチョ純の脇腹を二人がかりで擽りだした。
「ああっ。やめて。銀子さん。桂子さん」
純は顔を右に向けたり、左に向けたりして叫んだ。二人はだんだん図に乗ってきて、キャッキャッ言いながら純の体をあちこちをくすぐった。ブラジャーの上から胸を揉んだり、痴漢のように、パンティーの上から尻を撫でたりした。
「やめて。お願い。銀子さん。桂子さん」
二人はだんだん図に乗ってきた。
「ふふ。マゾの人の発言の『やめて』は『やって』の裏返しだわ」
そう言って二人は笑いながら、いっそう激しく純をくすぐりつづけた。
とうとう純は耐え切れなくなったように叫んだ。
「ああっ。やめてっ。お願い」
純は全身を捩りながら激しく足踏みした。
「純君。どうして足踏みしてるの」
そう言って二人は悪戯の手を止めた。純はさかんに足をモジモジさせている。その純の前には空のペットボトルが二本転がっている。
「ああ。そうか。パートナーの人に二本も飲まされて、尿意に耐えているのね。かわいそう」
「でも、そうされて苦しむ事がマゾの人には嬉しいんでしょ」
「マゾの人ってかわいそうね」
そう言いながらも、二人は純に猫のように近づいて、爪の裏でスッと体を撫でたりした。
「ああっ」
純は悲鳴を上げた。
「ふふ。純君。このまま激しく擽られたら本当にもれちゃうわよ。そんなのイヤでしょ」
純はベソをかきそうな顔で肯いた。
「だったら、もっと丁寧な言葉使いで恭しく頼みなさい」
「そうよ。私も何だか興奮してきちゃったわ。私達もあなたの女王様になってあげるわ」
と言って、銀子はチラリと自分のスカートをめくって見せた。
「銀子様。桂子様。どうかくすぐるのはお許し下さい。私は銀子様、桂子様の命令には何でも従う奴隷になります」
そう言って純は殉教者のようにガックリうな垂れた。
二人は、ふふふ、と笑った。
「わかったわ。私達、純君の女王様になって、たっぷりいじめてあげるわ」
銀子は落ちていた木の枝を拾って、モジモジしている純のパンティーの膨らんだ所に当てて、プニョブニョさせた。
「ふふ。モジモジさせている純君。とってもかわいいわよ」
「ふふ。いつまで我慢できるかしら」
などと揶揄の言葉をかけた。銀子は木に立てかけてある、純のカバンを持ってきた。
「これ。純君のカバンでしょ」
純は黙って肯いた。
「何でカバンがあるのかしら」
「パートナーの人が置いておいたのよ。きっと何かわけがあるんだわ」
「ともかく開けてみましょうよ」
二人は興味深そうに、その中をゴソゴソ漁った。奥にカバーのかけてある本を見つけて取り出した。めくってみると、ドギついSM写真集である。女が丸裸で柱に縛り付けられていたり。後ろ手に縛られて、きれいに剃られたアソコをことさらエロティックに見せるために、褌のようにカッチリと縄が女の秘所に食い込むようにとりつけられている。脚は言いようも無いほど大きく開かれている。その他、尻を高々と突き上げている写真。竹や梯子を使って、実に恥ずかしいポーズにされている写真が項をめくるたびに現れた。二人は息を弾ませながら食い入るように見た。
「すごーい。ものすごい写真」
「純君て秀才なのに、こういうのを隠れてこっそり見ているのね。やっぱり数学が出来る人ってむっつりスケベなのね」
などと感心したような口調で言う。
「純君はマゾだから、こういうみじめな格好の女の人に感情移入して興奮してるのね」
「でも、これ18禁でしょ。立派な犯罪じゃないの」
「そうねー。これは問題だわねー。今度のクラス会議で問題にしましょう」
「じゃあ、今ここで予行演習やってみましょう」
「さあ。純君。クラス会議の時間よ。いつものようにはじめて」
そう言っても純は口を開こうとしない。足をモジモジさせている。銀子は純の脇腹を爪の先でスッと撫でた。
「ああっ」
純は悲鳴を上げた。
純は頼りない声で語り始めた。
「で、では今週のクラス会議を始めます。な、何か議題のある人は手をあげて下さい」
「はい」
銀子が勢いよく手をあげた。
「は、はい。銀子さん」
純は足をモジモジさせながら言った。
「最近、我が校の生徒で著しく性的な風紀を乱している人を見かけました。具体的には言葉では言えないほどです。まず、こういう事に関する委員長の意見を述べて下さい」
純は眉を寄せ、足踏みしながら苦しそうな表情で言った。
「ぼ、僕たち学生の本義は勉強に励み、運動に励み、学業と身体の向上に勤める事にあります。そして母校の一員として、誇りと責任を持って絶えずモラルの向上を意識して行動すべきです。銀子さんは、その方を知っているのですから、まずは個人的に厳しく注意していただけないでしょうか。それでも聞かないようであれば、私に告げて下さい。今日は性風紀の乱れについて議論したいと思います」
「言ってる本人がこんな事やってるんだからねー」
「厳重に注意しないとねー」
「ダメよ。もうこんな事しちゃ」
と言って銀子は純の頬をピシャンと平手打ちした。
「でも注意したからって止めそうにないわよねー。名前を挙げてみんなで議論した方がいいんじゃないかしら」
そう言って銀子は純の脇腹を爪の先でスッと撫でた。
「ゆ、許してください。も、もういじめるのは。銀子さん。桂子さん」
純は泣きそうな顔で言った。
「さん、じゃなくて、様、でしょ」
と言って銀子は純の鼻をキュッとつまんだ。
「お、お許し下さい。銀子様。桂子様」
二人はベンチに腰掛けて純のカバンの中からノートを取り出した。そしてパラパラッとめくった。
「すごーい。この前、出された宿題の答えが全部もうきれいに書いてあるわ」
「どれどれ」
と言って桂子も覗き込んできた。
「わー。ほんと。模範解答ねー」
「近くにコンビニがあるからコピーしてきちゃおうかしら。いい。純君」
「は、はい。どうぞコピーなさって下さい」
そういう純の声は震えていた。足踏みもいっそう激しくなっている。二人はそれを見てクスリと笑った。
「いや。コピーは後でさせてもらうわ。手書きで移した方が頭に入るわ。私達も少し勉強しましょう」
「そうね。書き写した方が勉強になるわね」
そう言って二人は純の数学のノートを開いて書き写しだした。時々、顔を上げては激しく足をモジモジさせ、歯をカチカチ噛み鳴らしている純を見てはクスリと笑いながら。
セミがやかましく鳴いている。
しばしの時間がたった。
純は激しく足踏みして、全身を捩らせ出した。
とうとう純は悲鳴を上げた。
「ああー。お願い。銀子さん。桂子さん。あっち向いてて下さい」
二人はノートの手を休めて笑いながら顔を上げて純を見た。見る見るうちに純のパンティーにシミが広がっていき、堰を切ったようにジョロジョロと流れ出し、足を伝わって地面に広がっていった。
純はガックリとうな垂れている。
「あーあ。こんなにしちゃって。どうするの」
「出し切って気持ちよかったでしょう」
「濡れたパンティーじゃ気持ちが悪いでしょう。脱いで乾かしましょう」
そう言って銀子は純の腰の前に屈んだ。銀子はパンティーのゴムに手をかけた。
「や、やめてー。お願い。銀子さん」
「じゃあ、どうするの」
「このままにしておいて下さい」
「そういうわけにもいかないわよ。じゃあ、私のパンティーを貸してあげるわ」
そう言って銀子はスカートの中に手を入れて、履いていたパンティーを脱いだ。
「桂子。スカートを脱いで」
「えっ。どうして」
「純にスカートを履かせてあげるのよ。スカートを履いている間にパンティーを換えれば、見られないでパンティーを交換できるじゃない」
「わかったわ」
そう言って桂子はスカートのホックをはずしてスカートを脱いだ。そしてスカートを銀子に渡した。
「さあ。スカートを履かせてあげるわ。片足を上げて」
銀子は桂子のスカートを受けとると、純の片足をピシャリと叩いて上げさせた。そしてスカートをくぐらせた。同様にして銀子は反対側の足にもスカートをくぐらせ、スルスルと引き上げて、腰のホックをはめた。
純は上はブラジャーに、下は桂子のスカートという格好である。二人はプッと噴き出した。
「ふふ。純君のスカート姿、とっても似合うわよ」
銀子は純のスカートの中に手を入れて、パンティーをつかむとスルスルと降ろして濡れたパンティーを抜き取った。そして、それをビニールに入れた。桂子が、
「ふふふ」
と笑って、木の枝で純のスカートをソロソロと上げた。
「ふふふ。スカートめくり」
「あっ。いやっ」
純は膝を寄り合わせて抵抗した。
「桂子。悪ふざけはやめなさいよ。純君の数学のノートまで貸してもらえるのに」
銀子にたしなめられて桂子は、
「テヘヘ」
と笑って木の枝を捨てた。銀子は脱いだ自分のパンティーを純の足に通し腰の位置まで上げてピチンとはなした。純はほっとした様子である。
「どう。女の子のスカートっ便利でしょ。見られる事なく、下着を履き替えたり、取り替えたり出来るんだもの」
「その点、男の子は不便よねー。やっぱり女に生まれてよかったわ」
「何言ってるの」
そう言って銀子は桂子の額をツンとつついた。二人は顔を見合わせて笑った。
「どう。純君。桂子のスカートを履いた気持ちは」
「はい。お慕いする桂子様のスカートを履けてとても幸せです」
桂子は怒った顔で銀子の額をピシャンと叩いた。
「いやだわ。銀子。なに、変な事言わせてるのよ。恥ずかしいじゃない」
そう言って桂子は純を見た。
「それより。どう。銀子のパンティーを履いている気持ちは」
桂子が言った。
「はい。憧れの銀子様のパンティーを履けて無上に幸せです」
今度は銀子が桂子の頭をコツンと叩いた。
「いやだわ。桂子ったら。変な事言わせて。恥ずかしいじゃないの」
そう言って二人は顔を見合わせてクスクス笑った。
「でも純君の木に縛められたスカート姿、本当に可愛いわよ。金閣寺の雪姫みたいで。哀愁があって。今度、純君に私も下着だけで木に縛ってもらおうかしら」
銀子がそう言うと、
「私も」
と桂子が言った。二人はしばらく、うつむいて黙っている純をみとれて眺めていた。しばしの時間がたった。
「じゃあ、もうスカートを履いての哀愁は十分味わったでしょ。返してもらうわよ」
そう言って桂子は純のスカートのチャックをはずして、降ろし、スカートを抜き取った。そしてそれを急いで履いた。
純はブラジャーと銀子のパンティーという格好で木に縛られて、うな垂れている。
「スカート姿もいいけど、あらためて見るパンティーとブラジャー姿も哀愁があっていいわねー」
「じゃあ、もう、そろそろ帰りましょうか。十分楽しんだことだし」
「そうね。純君のパートナーの人に会っちゃうのも気まずいし」
銀子は純の履いていた濡れたパンティーをビニール袋に入れて、カバンの中に入れた。そして純の数学のノートをヒラつかせて。
「じゃあ、純君。数学のノート借りるわよ。パンティーは洗って返すわ。私のパンティーも洗って返してね」
そう言って純の数学のノートを鞄の中に入れた。二人は帰っていった。あとには木に愛子のブラジャーと銀子のパンティーを履いて木に縛られている純が残された。
階段をのぼってくる人の音がした。愛子だった。愛子は楽しそうな顔で。
「どうだったー。一時間。長かったー。誰も来なかったでしょ」
と、一方的に言った。愛子は地面に広がっている水びたしの地面を見て。
「うわー。すごーい。漏らしちゃったのねー」
と、嘆声を上げた。
「でもパンティーは全然濡れてないし。それに、私のじゃないわ。一体、どういう事かしら」
「ねえ。純君。何があったの」
「まあ、縄を解いてから、ゆっくり聞くわ」
そう言って愛子は純の縄を解いた。後ろ手の縛めも解いた。純はクナクナと倒れるように座り込んだ。
「はい。純君の上着とズボンと靴」
と言って、愛子は持ってきたバッグから取り出した。
「ねえ。そのパンティー誰の。何があったの」
と、聞いても純は黙っている。愛子は純を立たせて、ブラジャーをとり、ズボンをはかせ、シャツを着せ、靴を履かせた。そしてハート型のイヤリングをとり、口紅もティッシュでふいた。
「ねえ。どうしたの」
愛子が心配そうな口調で聞くと、純は、
「愛ちゃん。ひどいよ。僕もう学校行けないよ」
と言って、大声で泣いて愛子にしがみついた。愛子は
「よしよし」
と言って純の頭を優しく撫でた。愛子は何だか自分が純の母親になったような気がした。
たけくらべ