本屋へ行く少年

浅野浩二

ある少年がいた。その少年は、学科のシケンができた。だが少年は、心の悩みをもっていた。少年は、ある写真集をみた。それは少年にとってショックだった。心のなかで、描いてしまっていたイメージどうりのものだったからである。女が裸にされて柱に、しばりつけられて、みじめなかっこうにされ、黒子のような男が女の背後から、子供っぽいいたずら、をしている写真だった。少年はそれまで女の裸の写真をみても、何も感じなかった。しかし、その写真はちがった。少年は、その写真集をほしくてしかたなくなった。それで、少しは離れた町へ行き、小さな本屋へ行った。そこにきれいな同じ年頃の少女が店番をしていた。そこには、そういう奇矯な本が売ってあった。店には客がほかにいない。少年は、手をふるわせて、店番の少女に、その本を出し、お金をおいた。少女は口にはださずとも、少年をケイベツした心をもっていることは、伝わってきた。だが少年は少女にケイベツされることがうれしかった。少年は学校では、よく勉強したが、時々、耐えきれなくなり、その店に行き、奇矯な本を買い、少女にケイベツの心をもってみられたくなって、そうしていた。少年は、勉強熱心で、読書好きで、よく図書館へ行った。少年は文学書をよむのが好きだった。ある時、少年は、本を読んでて、ふと、顔を上げると、その少女がいた。少年は、死ぬほどあせった。心臓がとまるかと思った。途中で出ていくのもきまりがわるくて、閉館まで、いた。少女は少年に気づくと、自分に理解できない、かわった動物をみるように、少年をちょっと見てから、自分の読んでた書物に目をもどした。閉館時刻になったので少年は図書館をでた。少年がバス停で待っていると、ふと横をふりむくと、少女がいた。少女は、きわめて自然に、
「大丈夫?」
と聞いた。しばらくしてもバスはこないので、少女は、
「バス、こないわね。駅まで行くけど、ちょっと歩かない?」
と、言った。少年は少女とともに歩きだした。少女は、何かうれしくなって、少年の手を握った。少年も握り返した。少年は、うれしくなった。少女も同じだった。二人は夕やけのしずむ、太陽に向かって歩いていた。このまま、どこまでも、こうして歩きつづけられたら、と少年は思った。少年の心の病が少しなおっていた。

本屋へ行く少年

本屋へ行く少年

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted