うらしま太郎8
深い深い、深海の底に、乙姫が、竜宮城で、一人ぼっちで、暮らしていました。
乙姫は、上半身は、人間の体ですが、下半身は魚です。
つまり人魚です。
乙姫は孤独でした。なぜなら、人魚は女だけだからです。男の人魚というのは、いないのです。
それは。
女の人魚は、ロマンチックで、美しく見えますが、下半身が魚の男の人魚というものが、はたして美しいでしょうか?
美しくはありませんよね。
読者の中で、下半身が魚の男の人魚の、「絵」、を見た人がいるでしょうか?
いないでしょう。
男の人魚は美しくありません。
ですから、「美しさ」、という理由で、男の人魚は存在しないのです。
なので、乙姫は、孤独でした。
「ああ。私も、男の人に恋したいわ」
と、思っていました。
そう思って、乙姫は、時々、人間に見つからないよう、そっと、岩陰から、陸の人間を、見ていました。
ある日、乙姫は、岩陰から、ある漁村を見ていました。
すると、一人の、イケメンの青年が、いつも、浜辺を通っているのに、気づきました。
彼は、漁師で、いつも、××漁港から、船で、漁に出ていました。
その青年は、優しく、誠実そうな、青年でした。
乙姫は、その青年に、恋して、しまいました。
(ああ。あの人と、親しくなりたいわ。竜宮城で、一緒に住みたいわ)
と、乙姫の、青年に、対する思慕の念は、募っていきました。
しかし、どうやったら、あの青年を、竜宮城に、連れてこられるのか、その方法は、わかりませんでした。
乙姫は、毎日、漁村の、岩陰から、青年を、見つめていました。
ある日のことです。
子供たち、が、浜辺で、ビッコの、犬、を、棒で、叩いて、虐めていました。
その時、乙姫が恋する青年が、その場を通りかかりました。
青年は、子供たちに、向かって、
「これこれ。ビッコの犬を虐めるのは、可哀想じゃないか。やめてあげなさい」
と、諭しました。
しかし、子供たちは、
「ヘンだ。嫌だね」
と、青年の注意を聞こうとはしませんでした。
「じゃあ、これを、あげるから、犬を虐めるのは、やめなさい。これで、お菓子でも買いなさい」
そう言って、青年は、子供たちに、千円札を、渡しました。
子供たちは、
「へん。たかが、千円ぽっち、じゃ、嫌だね」
と、言いました。
青年は、
「じゃあ、これだけ、あげるよ」
そう言って、青年は、1万円札、を、財布から、取り出して、子供たちに、差し出しました。
子供たちは、
「わかったよ。じゃあ、犬を虐めるのは、やめてやるよ」
と、言って、1万円、を、受け取って、近くの、マクドナルドに、入りました。
それを見ていた、乙姫は、
(ああ。やっぱり、優しい方なのね)
と、一層、その青年を好きになりました。
乙姫は、竜宮城に帰って、どうしたら、あの青年を、竜宮城に連れてきて、付き合うことが、出来るか、考えました。
いつになく、乙姫が、食事も食べずに、悩んでいるので、乙姫の、忠実な下僕である、亀の、亀蔵が、
「乙姫さま。どうしたのですか?最近、ソワソワして」
と、心配して聞きました。
「あのね。私、最近、陸の、人間の、男の人に、恋しちゃったの。××漁村の、うらしま太郎、という人なの。でも、彼は私のことは知らないわ。それに、彼は私のことを、どう思うかは、わからないわ。それに、彼は、人間で、私は、海の中に住む、人魚でしょ。一緒に暮らすことなんて、出来ないわ。それでも、私の恋心は、抑えられないの。それで、毎日、片思い、で、悩んでいるの」
と、乙姫は、言いました。
「ああ。うらしま太郎、さんに、会いたいわ。会いたいわ。でも、人魚がいる、なんて事が、人間社会に知れたら、人間を驚かせて、世界中に、ニュースで流されてしまうし、人間は、絶滅危惧種を保護する、とか、体裁のいいことを、言って、私は人間に、捕まえられてしまうでしょうから、人魚は、人間に、人魚の存在を知らせてはいけない、ことになっているし。でも、私。うらしま太郎、さんに、会いたいわ。ねえ。亀蔵。何かいい方法はないかしら?」
と、乙姫は、切ない、胸の内を吐露しました。
それを聞いていた、亀蔵は、しばらく悩んで、考え込んでいましたが、おもむろに、口を開きました。
「そうですか。乙姫さまが、そんなに悩んでおられるのであれば、私が、何とか、いたしましょう」
と、亀蔵は言いました。
「何とかするって、どうするの?」
乙姫が聞きました。
「うらしま太郎、さんを、乙姫さま、に会わせるのです」
亀蔵が言いました。
乙姫は驚きました。
「ええー。亀蔵。一体、どうやって、そんな事が出来るというの?」
乙姫は、聞きました。
「それは、まだ、100%、成功するか、どうかは、確信できないので、もし、失敗、したら、申し訳ないので、今は、言えませんが・・・」
と、亀蔵は言葉を濁しました。
「・・・そう。それならば、お前が、どういう方法で、うらしま太郎、さん、を、私に会わせてくれるのかは、聞かないけれど・・・期待するわ」
と、乙姫は言いました。
「わかりました」
と、亀蔵は、恭しく言いました。
乙姫は、内心、かなり、亀蔵に期待しました。
というのは、乙姫は、海を支配する、女王で、亀蔵は、乙姫に忠誠を尽くしているので、亀蔵は、きっと、うらしま太郎、を自分に、会わせてくれるのでは、ないか、と、思ったからです。
今までも、乙姫は、亀蔵に、いろいろと命令してきましたが、亀蔵が、乙姫の命令を、出来なかった事、というのは、ありませんでした。
ですから、かなり、期待しました。
(亀蔵は、どういう方法で、私を、うらしま太郎、さんに、本当に、会わせてくれるのだろうか?)
と、その翌日から、乙姫は、そのこと、ばかりを、気にして、ソワソワして、いました。
そのため、何も手につきませんでした。
といっても、乙姫は、海を支配する女王なので、別に、特に、何か、しなくてはならない仕事、というものが、あるわけではありませんが。
・・・・・・・・
数日が過ぎた、ある日のことです。
乙姫は、クークー寝息をたてて、寝ていました。
すると。
「乙姫さまー」
と、亀蔵の、大きな声が、して、乙姫は、目を覚ましました。
「どうしたの。亀蔵?」
乙姫は、寝ぼけまなこの目を擦りながら、ベッドから、起きて、竜宮城の玄関に行きました。
「乙姫さま。うらしま太郎、さん、をお連れしてきました」
と、亀蔵が笑って言いました。
乙姫は、吃驚しました。
なんと、亀蔵の甲羅の上には、憧れの、うらしま太郎、が、乗っていたからです。
うらしま太郎、は、甲羅の上から、降りました。
そして、深々と、乙姫に、頭を下げました。
「あなたが、乙姫さま、ですね。私は、うらしま太郎、という、しがない漁師です。お目にかかれて、光栄です」
と、うらしま太郎、は、礼儀正しく挨拶しました。
乙姫は、驚きで、心臓が、ドキドキしていました。
しかし、憧れの、うらしま太郎、が、笑顔で、挨拶してきたので、乙姫は、顔を真っ赤にして、
「あ、あの。私は、乙姫と申します」
と、あせりながら言いました。
乙姫は、人魚なので、顔と上半身は、人間ですが、下半身は魚です。
なので、魚のように、海の中を自由自在に泳ぎ回ることが出来ますが、竜宮城の中は、空気で満たされていて、人間の家と同じです。
乙姫は、竜宮城では、ゆったりした、ムームーを着ていました。
「あ、あの。むさくるしい所ですが、どうぞ、お入りください」
と、乙姫は、うらしま太郎、を、竜宮城のリビングルームに、招きました。
むさくるしい、とは、言ったものの、まがりなりにも、竜宮城は、大きな、立派な、お城です。
本当は、むさくるしくはない、ゴージャスな、お城なのです。
しかし、日本人は、謙譲の美徳を重んじるので、むさくるしく、なくても、むさくるしい、と、言うのです。
「では、失礼します」
と言って、うらしま太郎、は、リビングルームのソファーに腰かけました。
「亀蔵。ちょっと」
と、言って、乙姫は、亀蔵を、手招きして、呼び、リビングルームを出て、乙姫の寝室に、亀蔵を、連れて行きました。
乙姫は、うらしま太郎、に、聞かれないようにして、亀蔵に聞きました。
「亀蔵や。一体、どうやって、うらしま太郎、さん、を、ここへ連れて来ることが出来たの?」
乙姫は、亀蔵に聞きました。
「では、私が、うらしま太郎、さん、を連れてきた、経緯を話しましょう」
と言って、亀蔵は話し出しました。
「うらしま太郎、さんは、以前、悪ガキたちが、ビッコの犬を、いじめているのを、やめさせたでしょう。うらしま太郎、さんは、いじめ、を、見ると、とめずにいられない、優しい性格です。そこで、私は、今日の夕方、陸に上がって、浜辺で、悪ガキたちが、学校から、帰宅するのを、待っていました。案の定、悪ガキたちが、やって来て、私を見つけると、(やーい。やーい。ドン亀。のろま)、と、言って、私を棒で、突き出しました。私は、首、や、手足、を、甲羅の中に、引っ込めました。すると、悪ガキたちは、(わはは)、と、笑って、甲羅の中を棒で、突きました。悪ガキたちは、(スッポンの肉を丸焼きにして、食べようぜ)、と言いました。そして、私を、ひっくり返してしまいました。そして、また、(わはは)、と、笑って、私を棒で、突きました。しばらくすると、漁を終えた、うらしま太郎、さんが、やって来て、(これこれ。そんな、意地悪をするものじゃないよ)、と、子供たち、を叱って、私を、助けてくれました。私は、うらしま太郎、さんに、(有難うございました。おかげて命が助かりました。助けてくれたお礼として、海の底の竜宮城に、ご案内したい、と思います。どうか、来て頂けないでしょうか。竜宮城には、きれいな乙姫さま、も、居ますよ。私は乙姫さまの忠実なしもべで、乙姫さまは、私を可愛がってくれているので、お礼をしたいと思っているでしょう)、と言ったのです。うらしま太郎、さんは、誠実な性格なので、人の頼みを、断れない、だろうと、私は、予想していました。すると、案の定、うらしま太郎、さんは、(じゃあ、竜宮城に行きます)、と言ったのです。そこで、私は、うらしま太郎、さん、を、背中に乗せて、海の中に、潜って、ここに連れて来たのです」
と、亀は語りました。
「そうだったの。有難う。亀蔵」
そう言って、乙姫は、寝室を出て、うらしま太郎、が居る、リビングルームに戻りました。
そして、うらしま太郎、に、恭しく、挨拶しました。
「うらしま太郎さま。話は、亀蔵から聞きました。この度は、私の大切な、亀蔵を助けて下さって、まことに有難うございました。心より、お礼、申し上げます。ぜひとも、お礼したく思っております。お礼として、うらしま太郎さまを、もてなしたく思っております。どうぞ、ごゆっくり、竜宮城で、おくつろぎ下さい」
と、乙姫は、あたかも、うらしま太郎、を、初めて知った、という態度を演じました。
知らぬ顔の半兵衛、というやつである。
「さあ。大事なお客人ですよ。豪勢な料理を、作って持って来なさい」
と、乙姫は、パンパン、と、手を叩いて、家来の魚たちを、呼びました。
家来の魚たちが、ゾロゾロ、やって来ました。
家来の魚たちは、豪華な料理、や、酒を、持って来ました。
そして、乙姫は、鯛、や、ヒラメ、に命じて、舞い踊りを、させました。
乙姫は、うらしま太郎、の、隣に座って、うらしま太郎、に、酌をしました。
「うらしま太郎、さん。お味はいかがですか?」
乙姫が聞きました。
「とっても、美味しいですよ」
そう言って、うらしま太郎、は、料理を食べました。
乙姫は、それを聞いて、とても、嬉しくなりました。
「あ、あの。うらしま様。私、人魚で、下半身は、魚です。でも、どうか、このことは、秘密にして頂けないでしょうか?」
「ええ。人間世界では、人魚は、架空の動物、ということに、なっていますからね。しかし、本当に、人魚がいるとは、知りませんでした。人魚が、いる、ということが、人間世界に知れたら、人間たちは、海底を探索して、あなた、を、やっきになって探し出すでしょう。それは、あなたにとっては、迷惑でしょう。僕は、口が堅いですから、あなたのことは、誰にも言いませんよ」
と、うらしま太郎、は、言いました。
「有難うございます。うらしま太郎さん、って、とっても、優しい人なんですね」
と、乙姫は、嬉しそうに、言いました。
長い時間の宴会が、行われました。
さて、その日も、夜になりました。
乙姫は、うらしま太郎、に恋しているので、何とか、彼を、長く、竜宮城に、ひきとどめておきたい、と、思いました。
「あ、あの。うらしま太郎さま。今夜は、遅くなりましたから、泊まっていかれませんか?」
と、乙姫は、言いました。
「ええ。そうですね。じゃあ、そうしましょう」
と、うらしま太郎、は、言いました。
「それは、どうも、有難うございます」
乙姫が言いました。
「では、うらしま太郎様。どうぞ、お休み下さい」
と、乙姫は、竜宮城内の一つの部屋に、うらしま太郎、を、案内しました。
布団も敷いてありました。
「お休みなさい。乙姫様」
そう言って、うらしま太郎、は、布団に入りました。
その夜中のことです。
うらしま太郎、の寝ている部屋が、スー、と開きました。
乙姫が、入って来ました。
乙姫は、スースー寝息をたてて、寝ている、うらしま太郎、の傍らに座って、小声で話しかけました。
「あ、あの。うらしま太郎様」
乙姫は、うらしま太郎、の体を、揺すりました。
うらしま太郎、は、眠そうな目を擦りながら目を覚ましました。
「あっ。乙姫様。何でしょうか?」
うらしま太郎、が、聞きました。
「あ。あの。うらしま様。亀蔵を助けて下さったお礼です。夜伽に参りました。どうぞ、私を、好きなように、なさって下さい」
そう言って、乙姫は、うらしま太郎、の布団の中に、入って来ました。
「うらしま太郎様。どうぞ、私を、好きなように、なさって下さい」
乙姫は、言いました。
うらしま太郎、は、あせりました。
「・・・・で、でも、亀を助けただけで、そこまでしていただかなくても・・・」
うらしま太郎は、誠実な性格なので、躊躇しました。
「あ。あの。うらしま様。うらしま様は、私が嫌いですか?私は人魚です。下半身が魚では、気持ち悪いですか?」
「いえ。そんなことはないです」
「あ、あの。うらしま様。私が嫌いですか?」
「いえ。そんなことはないです」
「あ、あの。うらしま様。私。うらしま様、が、好きなんです」
「・・・・ぼ、僕も、乙姫さまが好きです」
この、うらしま太郎の、発言は、乙姫に、強引に言わせた感があった。
誠実な、うらしま太郎、は、女の心を傷つけることが出来ないのです。
「嬉しい。相思相愛ですね。そうとは知りませんでした。では、とうぞ、私を好きなように、なさって下さい」
「わ、わかりました」
そう言って、うらしま太郎、は、乙姫の、着ていた、ムームー、を、脱がしました。
そして、乳房に着けていた、ブラジャー、も、とりました。
うらしま太郎、は、乙姫の、豊満な、乳房を揉みしだきました。
そして、乙姫の乳首を、つまんで、コリコリさせたり、乳首を口に含んだりしました。
「ああっ。気持ちいいっ。最高だわ」
乙姫は、激しい、喘ぎ声を出しました。
無理もありません。
乙姫は、今まで、一人ぼっちで、生きてきたので、人間の手による、愛撫を受けたことが無いからです。
うらしま太郎、は、乙姫を抱きしめて、ディープキスをしました。
うらしま太郎、は、乙姫の口の中に、自分の舌を入れていきました。
乙姫も、うらしま太郎、の、舌に、自分の舌を、絡めました。
乙姫の、口の中から、粘液質の唾液が、どんどん、出てきました。
うらしま太郎、は、それを、吸いました。
(ああっ。いいわっ。最高)
と、乙姫は、興奮しました。
無理もありません。
乙姫にとって、ディープキスなど、生まれて初めてのことだからです。
しかも、相手は、乙姫が恋する、イケメンの、うらしま太郎、です。
「うらしま様。気持ちいいわ。最高だわ。うんと私を抱きしめて」
乙姫は、興奮して、ハアハアと、息を荒くしながら、叫びました。
うらしま太郎、は、乙姫の願いをかなえるべく、乙姫の胸を揉んだり、首筋、や、あらゆる所に、キスしたり、ディープキスしたりして、乙姫を愛撫しました。
「ああっ。気持ちいいわっ」
乙姫は、人間の男に愛撫される喜びに、最高の快感を感じていました。
その夜は、明け方まで、うらしま太郎、は、乙姫を愛撫し続けました。
乙姫は全身、汗だくです。
「乙姫さま。もう、このくらいにしませんか?」
うらしま太郎、が言いました。
「はい。うらしま様」
乙姫が言いました。
乙姫が了解したので、うらしま太郎は、乙姫のペッティングをやめました。
うらしま太郎、は、乙姫を、自分の横に、仰向けに、寝かせました。
そして、乙姫と、手をつないで、二人、並んで寝ました。
乙姫は、激しい、愛撫による興奮で、疲れ切っていたので、すぐに、クークー、寝息をたてて、眠りにつきました。
・・・・・・・・・・・
翌日、昼頃、うらしま太郎、は、目を覚ましました。
昨日の夜、激しく愛撫しあった疲れで、乙姫、は、クークー寝息をたてて、うらしま太郎、の横で、寝ていました。
乙姫、が熟睡しているので、うらしま太郎、は、乙姫、を、そっと寝かせてやろうと思って起こしませんでした。
昼を過ぎて、亀蔵が、部屋に、やって来ました。
「乙姫様。うらしま太郎様。昼食が出来ています。食堂に来られますか?」
と、聞きました。
うらしま太郎は、乙姫を起こそうか、どうか、少し迷いました。
しかし、起こすことにしました。
それで、乙姫の体を、ゆさゆさ揺すりました。
「乙姫さま。乙姫さま」
と、うらしま太郎、は、乙姫に、声をかけました。
乙姫は、虚ろな眼を開けました。
「あっ。うらしま太郎さま。おはようございます」
と、乙姫は、眠そうな目を擦りながら、言いました。
「乙姫さま。もう、昼を過ぎています。今、亀藏さんが、昼食が出来たので、食堂へ行くか聞きにきたのです。どうしますか?」
うらしま太郎が聞きました。
「わかりました。それじゃあ、お食事を食べます」
そう言って、乙姫は、起き上がりました。
そして、うらしま太郎、と、一緒に、食堂で、昼ご飯を食べました。
乙姫は、昨夜の事を思い出してか、嬉しそうでした。
「うらしま太郎様」
「はい。何でしょうか?」
「あ、あの。これから、うらしま様のことを、あなた、と呼んでもいいでしょうか?」
乙姫が聞きました。
「え、ええ。かまいませんよ。乙姫さまが、そう呼びたいのならば」
うらしま太郎が答えました。
「嬉しい。有難うございます。うらしま太郎様」
乙姫は大喜びしました。
・・・・・・・・・・・
昼食の後、うらしま太郎、は、乙姫に、地上の人間の様子を、話してやりました。
乙姫も、海の中のことを、うらしま太郎、に話しました。
うらしま太郎、は、トランプ、や、将棋、などを、作り、乙姫に、ルールを教えてやりました。
乙姫は、飲み込みが、早く、すぐに、トランプ、や、将棋、の、ルールを覚えました。
そして、二人で、トランプ、や、将棋、をして、遊びました。
乙姫は、初心者なので、うらしま太郎、が、「ここは、こうやるんですよ」、と、教えてやりました。
乙姫は、「ああ。なるほど。なるほど」、と、言いながら、うらしま太郎、の、手ほどき、によって、遊び方、を理解していきました。
その後、乙姫は、三線、を弾きながら、沖縄の、音楽を歌って、うらしま太郎、を、もてなしました。
・・・・・・・・・・・
さて。
その日の夜になりました。
うらしま太郎、は、「乙姫さま。おやすみなさい」、と言って、うらしま太郎、に、あてがわれた、部屋に、行きました。
うらしま太郎、が、布団を敷いて、布団をかぶって、寝ていると、スー、と、部屋の戸が開きました。
そして、乙姫が入ってきました。
乙姫は、うらしま太郎、の入っている、布団の中に、入って来て、
「あなた。抱いて」
と、甘い口調で言いました。
乙姫は、もう、うらしま太郎、の、妻になったような、態度でした。
うらしま太郎、は、優しい性格なので、女心を傷つけることが、出来ません。
なので、うらしま太郎、は、
「はい。わかりました。乙姫さま」
と言って、乙姫を抱いてやりました。
うらしま太郎、は、乙姫の乳房を揉んだり、乳首をコリコリさせたり、乳首を、吸ったり、首筋にキスしたりしました。
「ああっ。いいわっ。気持ちいい」
乙姫は、髪を振り乱しながら、喘ぎ声を出しました。
しかし、乙姫は、下半身が魚なので、人間の女の性器がありません。
なので、うらしま太郎、は、下半身の処理が出来ません。
乙姫は、そのことに、申し訳なさ、を感じていました。
「あなた。ごめんなさい。私だけ、一方的に、気持ちよくなっちゃって」
乙姫が言いました。
「いいんですよ。乙姫さま」
うらしま太郎、は、寛容な性格なので、自分が射精できなくても、不満はありませんでした。
うらしま太郎、に、とって、「愛」とは、奪うものではなく、「与える」ものだったのです。
なので、乙姫との、性交も、乙姫が望むように、乙姫を気持ちよくさせてあげる、ことが、目的でした。
しかし、乙姫には、そんな、うらしま太郎、の心は、わかりません。
乙姫は、うらしま太郎、が履いていた、ブリーフを下げました。
そして、足から抜きとりました。
うらしま太郎、は、一糸まとわぬ丸裸になりました。
「あっ。何をなさるんですか。乙姫さま」
うらしま太郎、は、驚いて言いました。
「あなた。私だけ、一方的に、気持ちよくなるのは、わるいわ。あなたも、気持ちよくしてあげるわ」
そう言って、乙姫は、うらしま太郎、の、おちんちん、を、握りました。
そして、ゆっくり、しごき出しました。
そして、もう片方の手で、うらしま太郎の、尻の割れ目、を、スー、と、なぞったり、脇腹を、スー、と、なぞったりしました。
「ああっ」
乙姫の、たくみな、愛撫に、うらしま太郎、の、おちんちん、は、勃起してきました。
乙姫は、うらしま太郎、の、勃起した、おちんちん、を、口に含みました。
そして、舌先で、うらしま太郎、の、亀頭を、チロチロ舐めながら、うらしま太郎、の、おちんちん、を含んだ口を、ゆっくり前後に動かし出しました。
「ああっ。乙姫さま。そんなことは、なさらないで下さい」
うらしま太郎、は、そう言いながらも、乙姫のテクニックに興奮して、激しく勃起してきました。
乙姫は、口の往復運動を、一層、速めました。
「ああー。出るー」
うらしま太郎、の精液が、乙姫の口の中に、放出されました。
乙姫は、うらしま太郎、が、放出した、精液を全部、ゴックン、と、飲み込みました。
「あなた。どう。気持ちよかった?」
乙姫が、嬉しそうに、聞きました。
「え、ええ」
うらしま太郎、は、照れくさそうに、顔を真っ赤にして言いました。
「よかったわ。あなたが、気持ちよくなってくれて」
乙姫は、嬉しそうに、ニッコリ笑って、言いました。
・・・・・・・
こうして、どのくらいの期間か、わかりませんが、竜宮城で、うらしま太郎、と、乙姫の、生活が続きました。
乙姫は幸福でした。
なにせ、憧れの、うらしま太郎、との、結婚生活のような日々なのですから。
しかしです。
ある時。
うらしま太郎、が、乙姫に、真顔で、言い出しました。
「乙姫さま。そろそろ、私は、陸へ帰りたいと思います」
と、うらしま太郎、は、言いました。
「えっ?」
これは、乙姫にとって、青天の霹靂でした。
「どうして?あなた?」
乙姫は聞きました。
乙姫には、どうして、うらしま太郎、が、陸へ帰りたい、などと、言い出すのか、わかりませんでした。
それも、無理はありません。
海の中の全ての、魚は、乙姫の家来ですから、食事も、料理も、身の回りの事、全ては、家来の魚たちが、やってくれるのです。
乙姫は何もしなくていいのです。
しかも、魚たちは、乙姫を敬愛しているので、嫌々、乙姫の命令に従っているのではなく、乙姫に仕えることに、無上の喜びを感じているのです。
乙姫が命じれば、魚たちは、喜んで、乙姫のために、舞ったり、歌を歌ったりして、乙姫を楽しませるのです。
何不自由のない、贅沢な生活です。
ですから、乙姫は、どうして、うらしま太郎、が、「陸へ帰りたい」、などと、言い出すのか、わかりませんでした。
「あなた。どうして?どうして、陸へ帰りたい、などと、言い出すのですか?」
乙姫は再度、聞きました。
うらしま太郎、は、神妙な口調で話し出しました。
「乙姫さま。私は、漁師です。人間は、働かなくてはならないのです。しかし、今、陸では、新型コロナウイルス、という感染症が、猛威をふるっているのです。それで、私の、漁業組合でも、一人、感染者が出てしまいました。ある組織で、感染者が出ると、組織に所属する者は、感染している可能性があるので、感染を広めないために、みな、仕事を、一時、やめて、2週間の隔離生活をしなくては、ならないのです。本当なら、PCR検査をして、感染しているか、感染していないか、確かめる必要があるのですが、日本では、PCR検査の、体制が、遅れていて、検査を、すぐに受けることが出来ないのです。そこで、感染の可能性がある者は、仕事を休んで、2週間の隔離生活をしなくては、ならないのです。なので、海の底の、竜宮城なら、他人に感染させる、心配もありませんし、隔離生活には、もってこい、です。しかし、もう、かなりの期間が経ちましたし、私も、味覚、や、嗅覚、や、呼吸困難の、症状が、出ていない、ことを、考えると、感染していないか、あるいは、感染していても、もう、免疫が、ウイルスに勝って、抗体が出来ている、と思います。ですから、陸へ戻りたいのです」
と、うらしま太郎、は、言いました。
これを聞いた、乙姫は、吃驚しました。
乙姫は、うらしま太郎、は、てっきり、陸の生活とは、訣別して、自分と結婚してくれたものだと、思っていたからです。
乙姫は、しばし、言葉が出ませんでした。
乙姫は、思わず、(愛は。私たちの愛はどうなるの?)、と、叫びたくなりました。
「それと・・・・」
と言って、うらしま太郎、は、しばし、ためらってから、言いにくそうに、
「実は。乙姫さま。私は、陸に、大切な妻がいるのです。このことは、最初に言っておこうと思いましたが、乙姫さまの、私に対する態度から、どうしても、言えませんでした。申し訳ありません」
と言いました。
乙姫は、唖然としました。
乙姫の心に、不条理に対する、憤りが、沸々と噴出してきました。
乙姫は、心の中で叫びました。
(ひどい。私たちは結婚したのに。私を愛している、と言ったのに。夫婦の契りも結んだのに。それなのに・・・さんざん、私を、弄んでおいて。最初から、私と結婚する気などなく、私を、慰み者にして、用が済んだら、捨てるつもりだったのね)
という、憤りが、乙姫の心の中で、沸々と、沸いてきました。
うらしま太郎、としては、乙姫が、自分に好意を持っていることに、すぐに気づいていましたから、全てのことは、乙姫を、喜ばせてあげようと、思ってしたことなのですが、女に、理屈は、通用しません。
女は、何事でも自分勝手に物事を、解釈して決めつけるのです。
乙姫は、嫉妬に狂いました。
しかし、うらしま太郎、に、乙姫に対する、(愛)、が無い、と、わかった以上、もう、夫婦生活は、出来ません。
うらしま太郎、は、乙姫を、もう抱いてくれないでしょうし、一緒に居ても、楽しくありません。
捨てられた女の復讐心、憎悪、が、乙姫の心の中で、燃え盛りました。
(人間って、平気で浮気するのね)
(浮気をすることに罪悪感を全く感じないのね)
(私は、また一人ぼっちになってしまうのね)
(人間は、人魚を、ロマンチックな、この世あらぬ美しい、架空の存在として、憧れているけど、いい気なもんだわ。下半身が魚では、生活が不便きわまりないのは、わかりきっていることじゃない。車椅子の身体障害者と同じだわ。人間の女たちに、本当に、人間をやめて、人魚になりたい、という人なんか、絶対、一人もいないわ。一時のコスプレを楽しんでいるだけじゃないの。みんな、自己欺瞞している、ということに、自分でも気づいてもいないわ)
乙姫の怒りは、うらしま太郎、一人だけにとどまらず、人間一般に、敷衍してしまいました。
しかし、嫉妬心を、あらわに表現して、とりみだす、ことも、みっともない、という、ことも、乙姫は心得ていました。
まがりなりにも、乙姫は、この世の、全ての魚に、慕われている、海を支配する女王なのですから。
なので、乙姫は、
「わかりました。憧れの、うらしま様と、楽しい日々を過ごせたことに、心より感謝もうしあげます」
と、心の中で思っている、こととは、正反対のことを、恭しく言いました。
しかし、一度、火がついた、女の嫉妬心を消すことは出来ません。
(この恨み、どうしてくれりょ)
と、乙姫は、乙姫は、うらしま太郎、を、憎みました。
乙姫は、一つの復讐の方法を思いつきました。
(あっ。いい手があるわ)
と、乙姫は、気づきました。
数日が過ぎ、うらしま太郎、が、陸に帰る日に、なりました。
「乙姫さま。楽しい日々をありがとうございました」
うらしま太郎、が言いました。
「いえ。どうたしまして。私の方こそ、とても、楽しかったです」
と、乙姫は、嬉しそうな顔で言いました。
「うらしま太郎さん。私と、付き合ってくれた、お礼です。どうか、この、お土産を持って行って下さい」
そう言って、乙姫は、うらしま太郎に、玉手箱を渡しました。
「ありがとうございます。乙姫さま」
うらしま太郎、は、亀の背に乗って、竜宮城を出て、陸にもどりました。
「やあ。久しぶりの陸だな」
と、うらしま太郎、は、ほっとしました。
うらしま太郎、は、一体、自分は、どのくらいの期間、竜宮城にいたんだろう、と思って、通行人に、
「あのー。今日は、何年、何年何月何日ですか?」
と、聞きました。
「今日は、西暦、2020年9月5日ですよ」
と、通行人は、言いました。
(そうか。それじゃあ、オレは、3カ月、竜宮城に居たんだな。まあ、そのくらいだろうと、思っていたけど)
と、うらしま太郎、は、納得しました。
家に帰ると、愛する妻が、「あなた」、と言って、駆け寄ってきました。
「あなた。一体、3カ月も、どこへ行っていたの?」
と、妻が心配そうに聞きました。
「すまん。三カ月も、留守にして。行った所は、ちょっと、言えないんだ」
「そうなの。それなら無理には聞かないわ。でも、帰ってきてくれて、安心したわ。すぐに、御馳走をつくるわ」
そう言って、妻は、台所に行きました。
うらしま太郎、は、当然の事ながら、乙姫が、どんな、お土産をくれたのか、気になりました。
「じゃあ、せっかく、乙姫さまが、玉手箱の、お土産をくれたんだ。何をくれたんだろう?きっと、キャビア、や、粒うに、や、いくら、などだろう。よし。開けてみよう」
うらしま太郎、は、ワクワクしながら、玉手箱を開けました。
すると、モクモクと、玉手箱の中から煙が、出てきました。
「うわっ。何だ。こりゃ」
うらしま太郎、は、驚きました。
同時に、見る見るうちに、うらしま太郎、は、歳をとって、しわくちゃの爺さんになってしまいました。
「あなた。食事を作りましたよ」
そう言って、妻が食事を盆に乗せて、持って来ました。
妻は吃驚しました。
なぜなら、夫は、いなく、代わりに、一人の、しわくちゃの爺さんが、居たからです。
「あなたは、一体、誰?」
妻が聞きました。
「オレは、お前の夫の、うらしま太郎、だよ。一気に、老人になってしまって、驚いただろうが、声は変わっていないから、わかるだろう。それに、右頬のホクロも同じだし。着ていた服も同じだ。だから、納得できるだろう?」
と、うらしま太郎、は、言いました。
妻は目をパチクリさせて、驚きました。
しかし、確かに、声は、夫の声で、右頬のホクロも同じです。
それに、爺さんになってしまっても、その顔には、若い時の、うらしま太郎、の、面影が、残っていました。
妻は、訳が分からないまま、納得しました。
「わ、わかったわ。確かに、声は、あなただし、右頬のホクロも同じだわ。顔にも、あなたの、面影があるわ。でも、一体、どうして、こんなに、一気に、老けてしまったの?」
妻が聞きました。
「それは、ちょっと、言えない、事情があるんだ」
と、老人になってしまった、うらしま太郎、が言いました。
「やれやれ。してやられたな。乙姫が、ここまで、嫉妬深いとは、思ってもいなかったよ」
と、うらしま太郎、は、ため息をつきました。
・・・・・・・・・・
その頃。
竜宮城では。
「ウシシ。うらしま太郎め。今頃は、玉手箱を開けて、老人になっているだろう。ざまをみろ」
と、乙姫が、勝ち誇ったように、高笑いしていました。
いうまでもないことですが、玉手箱の中身は、人間を一気に、老化させる魔法の秘薬だったのです。
うらしま太郎、は、老衰になりました。
翌日、うらしま太郎、は、心筋梗塞、と、脳梗塞、を、起こして、寝たきり、の状態になってしまいました。
しかし、妻は、うらしま太郎、を、まめまめしく、精一杯、看病しました。
妻には、まだ、子供がいませんでした。
数日が過ぎました。
「礼子。お前は、まだ若い。オレが死んだら、オレの弟の、うらしま二郎、と結婚してくれ。アイツなら、お前を幸せに出来るよ」
老いた、うらしま太郎、が言いました。
しかし、妻は首を振りました。
「私が、愛するのは、あなただけよ。たとえ老人になってしまっても・・・」
「弟の、二郎も、お前が好きなんだよ。どうか、二郎と結婚してくれ。オレは、お前を、若い身空で、さびしい、女やもめ、にしたくないんだ。どうか、二郎と結婚してくれ」
その夜、うらしま太郎、は、急性腎不全から心不全を起こし、死んでしまいました。
妻は、「あなた」、と言って、うらしま太郎、の体にしがみついて、号泣しました。
妻は、「わかったわ。あなたが望むのなら、私、うらしま二郎、さんと結婚するわ」、と、泣きながら言いました。
妻は、一年間、喪に服しました。
一周忌が過ぎると、妻は、義弟の、うらしま二郎、と結婚しました。
そして、二人の間には、可愛らしい、男の子が産まれました。
うらしま二郎、は、こうした悲劇が二度と、起こらないように、兄、うらしま太郎、の体験を元にして、童話を作りました。
しかし、乙姫を悪人にしては、可哀想なので、そこは、事実を変えました。
それが、昔から、現在まで、語り継がれている、「うらしま太郎」、の童話なのです。
令和2年12月16日(水)擱筆
うらしま太郎8