うらしま太郎7

ある街に、うらしま太郎、という若者がいました。
彼は、真面目な、サラリーマンでした。
ある日、うらしま太郎、が、会社の仕事が、終わって、アパートに向かっている時です。
路上で、数人の男が、一人の女に、からんでいるのを、うらしま太郎、は、見つけました。
男たちは、ガラの悪い、人相でした。
行き交う人々は、やっかいな、いざこざ、に、巻き込まれたくなのでしょう。
見て見ぬふりをして、通り過ぎて行きます。
しかし、うらしま太郎、は、正義感が強いので、近くの、ビルの陰から、その様子を、見てみました。
「おい。何で、三日も、休んでいたんだよ」
と、一人の、ガラの悪い男が、女の襟首をつかんで迫りました。
「オレは、あんたに、会いたくて、毎日、通ってるんだぜ」
と、別のガラの悪い男が、女に、詰め寄りました。
「申し訳ございません。風邪をひいてしまって、休んでいたのです」
と、女は、泣きそうな顔で、ペコペコ謝りました。
その後も、うらしま太郎、は、二人の男と、女の会話を聞いていました。
そして、大体の状況を把握しました。
女は、キャバクラに勤める、キャバクラ嬢で、男二人は、常連の客で、彼女が、三日、休んだのを、不快に思って、からんでいる様子です。
うらしま太郎、は、正義感が強いので、二人の男たちの前に、出ました。
「あんたたち。風邪をひいて、休んだのなら、仕方ないだろう」
と、うらしま太郎、は、二人の男に、強気の口調で、言いました。
「何だ。てめえは?」
男の一人が、うらしま太郎、に、聞きました。
「単なる、通りすがりの者だよ」
うらしま太郎、は、答えました。
「ただでさえ、不快なのに、正義感ぶりやがって。やっちまえ」
男二人は、うらしま太郎、に、襲いかかりました。
しかし、うらしま太郎、は、空手を身につけているので、チンピラ二人を、やっつけることは、わけもないことでした。
キエー。ウリャー。
うらしま太郎、は、空手の、パンチとキックで、二人を、倒しました。
二人のチンピラは、うらしま太郎、には、歯が立たないと、思ったのでしょう。
「おぼえてやがれ」
と、捨てセリフを吐いて、去って行きました。
あとには、キャバクラ嬢が、残されました。
彼女は、すぐに、うらしま太郎、の、所に駆け寄りました。
「どうも、有難うございました。私は、源氏名を、亀女と言います。あの客たちは、しつこくて、やたら、体を触ってくるので、私も困っていたのです」
と、彼女は、うらしま太郎、に、礼を言いました。
「いや。別に、当然のことを、しただけですよ」
と、うらしま太郎、は、言いました。
「あの。お名前は?」
女が聞きました。
「私は、うらしま太郎、と言います」
うらしま太郎、は、答えました。
「あ、あの。うらしま太郎、さま。助けて頂いた、お礼を、ぜひとも、したいです。どうか、キャバクラ竜宮城に、お越し頂けないでしょうか。料金も、半額、割り引きにさせて頂きます。指名度ナンバーワンの、きれいな、乙姫、という、女性もいます」
と、女は、言いました。
「そうですか。それなら、行きましょう」
そう言って、うらしま太郎、は、亀女と、一緒に、歩き出しました。
表通りから、路地裏に、ちょっと、入ると、キャバクラ竜宮城、と、書かれた店がありました。
うらしま太郎、は、亀女と、一緒に、店に入りました。
亀女は、奥の席に、うらしま太郎、を、連れて行きました。
うらしま太郎、は、その席に座りました。
「ちょっと、お待ち下さい」
と、亀女は、言って、店の奥に、行きました。
そして、すぐに、一人の、きれいな、ホステスを連れて来ました。
「うらしま太郎さま。亀女を助けて下さって有難うございました。私は、源氏名を、乙姫と、申します」
と、言って、恭しく、一礼しました。
「いやー。きれいな人だ」
と、うらしま太郎、は、乙姫を見て、思わず、言いました。
乙姫は、うらしま太郎、の、横に腰掛けて、酒、や、料理を出したり、歌を歌ったりして、うらしま太郎、を、もてなしました。
かなりの時間が経ちました。
「いやー。楽しかったです。有難うございました。乙姫さま」
と言って、うらしま太郎、は、立ち上ろうとしました。
すると。
「ちょっと待って下さい。うらしま太郎、さま」
と、乙姫が、うらしま太郎、に、耳打ちしました。
「どうしたのですか?」
うらしま太郎、が、聞きました。
乙姫は、回りを、チラッと、見てから、そっと、うらしま太郎、に、耳打ちしました。
「うらしま太郎さま。あなた様は、いじめられていた、亀女を、助けるほどですから、勇気のある方だと思います。実を言いますと、亀女が、いじめられていた、のは、あれは、客引きのための、お芝居です。この店は、指定暴力団、山口組、が経営している、違法な、悪質キャバクラなのです。「日給、最低3万円。住居保証。健全風俗店」、と言いながら、私たち、ホステスは、暴力団事務所の中の、6畳の、狭い一室に、押し込められているのです。そして、稼ぎの、9割は、暴力団に、ピンハネされているんです。そして、暴力団に見張られていて、辞めたくても、辞められないのです。親への仕送りも、しなければなりませんが、わずかな収入では、自分の生活費だけで、精一杯です。みな、困っています。そして、お客さんから、法外な料金を、ぼったくっています。どうか、私たちを助けて下さい」
と、乙姫は、泣いて、うらしま太郎、に、頼みました。
「そうだったのですか。それは、ひどい。わかりました。あなた達を助けましょう」
と、うらしま太郎、は、言いました。
「うらしま太郎さま。これを、お持ちになって下さい」
そう言って、乙姫は、うらしま太郎、に、玉手箱を、渡しました。
「何ですか。これは?」
うらしま太郎、が、聞きました。
「この中には、催涙ガスが、入っています。きっと、お役に立てると思います」
と、乙姫は、言いました。
「わかりました」
と言って、うらしま太郎、は、玉手箱を、受け取りました。
そして、店を出ようと、レジに行きました。
「料金は、10万円です」
レジの男が言いました。
「それは、ひどい。たかが、1時間、飲んだだけで。しかも、料金は、半額、割り引き、と聞きましたよ」
と、うらしま太郎、は、抗議しました。
「ええ。半額、割り引きですよ。しかし、この店は、高級キャバクラなので、料金は、1時間、20万円なのです。だから、半額、割り引き、で、10万円なのです」
と、男は、居丈高に言いました。
「そんな、お金は、ありません」
うらしま太郎、は、毅然とした、態度で言いました。
すると、さっきの、ガラの悪い男二人が、出てきました。
「おい。にいちゃん。遊んでおいて、金を払わないって法は、ねえだろ。金を払いな」
と、恫喝的に、うらしま太郎、に、迫りました。
「金が、無いなら、キャッシュカードで、現金をおろせ」
ガラの悪い男の、一人が言いました。
店の中には、ATMが、設置されています。
「さあ。これで、金をおろしな」
ガラの悪い男の、一人が言いました。
「オレは、そんな恫喝には、屈っしないぞ」
うらしま太郎、は、そう言って、乙姫から、渡された、玉手箱を、を、ガラの悪い男たち、に向かって、開けました。
すると、催涙ガスが、出て、ヤクザ三人は、
「うわっ。これは、何だ?」
「催涙ガスじゃねえか。目、や、咽喉、が痛くて、耐えられん」
と言って、ゴホゴホ、と、咳き込みました。
うらしま太郎、は、ハンカチで、口を塞ぎながら、キエー、ウリャー、と、男三人を、叩きのめしました。
そして、乙姫や、亀女、その他の、ホステス全員を連れて、急いで、店を出ました。
そして、タクシーを拾って、彼女たちを乗せ、自分も、乗り込んで、かなりの遠方の駅まで、行って、彼女たちを、降ろしました。
うらしま太郎、は、駅前のコンビニに入って、ATMで、かなりの額の金を、おろしました。
そして、その金を、ホステスたちに、渡しました。
「さあ。あなた達は、これで、逃げなさい」
うらしま太郎、は、言いました。
「有難うございます。うらしま太郎、さま」
そう言って、ホステス達は、は、電車に乗って、それぞれ、自分の実家にもどりました。
うらしま太郎、は、警察署に行って、暴力団の経営する、違法キャバクラ竜宮城、の、実態を話しました。
警察も、重い腰を上げて、マル暴が、動き出し、指定暴力団、山口組、の事務所に乗り込み、暴力団員、全員を逮捕しました。



平成30年11月4日(日)擱筆

うらしま太郎7

うらしま太郎7

  • 小説
  • 掌編
  • 青春
  • 恋愛
  • コメディ
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-28

Copyrighted
著作権法内での利用のみを許可します。

Copyrighted