氷柱

雪水 雪技

氷柱
  1. BGM
  2. ある詩人への思慕
  3. ミッドナイト逃避行
  4. 心理研究
  5. 試されることにつかれたら
  6. レテの子守唄
  7. 仕分け
  8. 春夏秋冬雪景色
  9. 氷柱
  10. 迷路
  11. 古代文字タイポグラフィ
  12. 内在される真実
  13. 新時代、虚空の下
  14. 精算
  15. 永久孤独の種明かし
  16. 道すがら
  17. 蝶、舞う、空
  18. 太陽に灼かれる日
  19. いそいできた、ら
  20. 運ばれてゆく夜

BGM

レコードの山
実家の誰かの宝箱

知ってるのはここから

多分生まれる前から聞いていた

その人の魂揺らす音の上で遊んでた

多分生まれる前から聞いていた

今では骨身まで音を味わっている

カセットテープの山
実家の誰かの宝箱

多分生まれる前から聞いていた

いつでも、かける、ライフ、BGM

ある詩人への思慕

透明な硝子玉のような瞳に
魂の焔が宿るときには
世界はどれほど眩いか

あらゆる色彩が
際限なく入り込む
それらをとり囲む
言霊をも視る千里眼

天からの声、すべらかに
今、ここに落とし込む心

等しくものを見てみたい

あなたの帽子の下に

等しくものを見てみたい

あなたの雪景色に

ミッドナイト逃避行

海岸でくたびれた
僕はもう参った
生活苦の逃亡者

甘い果実の匂い
見知らぬ果樹園
遠くで手を振る
少女の影

その日の夕日は半熟でした
とろけて海にながれだす

逃避行はうまくいった
随分遠くまで逃げて来た

旅の終わりはピラミッド
僕とラクダのミッドナイト

波飛沫、

飛び上がる意識

心理研究

深層に置かれたのは
何のカードだったかな

きれいな花柄だったような
かわいい猫の絵だったような
子供の私が描いた絵だったかな

思い出せないものだから

顕微鏡や望遠鏡や万華鏡持ち出して

ひとつの調査に出かける日
そうして発掘した日には
隠れた私が日に当たる
その日はきっと一日晴れる

試されることにつかれたら

書いた名前が浮き上がり
窓からひらひら飛んでった

試験の時間、名前を忘れた

諦めて描いた落書きも
みんな窓から飛んでった

外から聞こえる笑い声
みんな落書き見て笑ってら

呑気なのはよいことだ
剣呑なのはつらいことだ

浮かんで沈んで繰り返す波の心臓
同じところにはいられない生き物

レテの子守唄

わすれてしまえ
忘却の川にて水浴びの日

わすれてしまえ
そうすれば次の風が吹く

わすれてしまえ
同じマップの周回は飽きたろう

わすれてしまえ
新しいもの入れるスペースだ

わすれてしまえ
沈むように今日はねむれ

仕分け

寂しい色彩
いつかの感傷

ゆめはゆめだけれども

朝に残ったのは
冷たくなった
私の器

泣いてもよくて
裂いてもよくて
焼いてもよくて

それでも
大切にしなきゃならないもの

その仕分けが
だんだんと、わかってくるのなら

痛みはその役目を果たせたのだろう

春夏秋冬雪景色

雪が降る
年中、私には

いつでも、
雪が降る

それは覆うため
それは語るため

すぐに溶けて
また降るのは
初雪のような
天気模様

薄く積もり
朝日に溶かされ
また降り出して

それは、感傷の形?
それは、自戒の形?
それとも、お化粧?

あらゆる念は
雪になって
心に降る

それが心象の風景

氷柱

十代の私は
冷酷を潜ませた

十代の私に
冬は優しい 

凍てつく寒さ
頭を冴えさせ

道化のあとの孤独
諦めたものへの悔恨
理不尽な大人への怒り

正論を尖らせた冷たい氷柱
それは溶けない心の氷柱になる

諸刃の剣だと知ったいつかまで
確かにあの日の私を守ってくれた

絶対零度は裏切らない

迷路

暮れる生い立ちの懐古
次の朝に向かう背中

誰も押してはくれない
自ら歩む意思のみ

志の有無によらず
時は今も刻まれる

残酷か無常か世の常か
名付けて納得したら終わる

とめどない思いひとつひとつ
書き記していくこと生業として

業も宿命もついて回るもの
この身ひとつ徒花になろうとも

古代文字タイポグラフィ

単語帳に
古代文字の
タイポグラフィ

解読急げ
試験は赤点?
それより知りたいこと

くだらないと言われたこと
それを必死にやりたい今

生産性に追われる未来より
創造性に富んだ今を信じる

過去から未来か
未来から今へか
あるいは全部がここなのか

心ときめく四文字に
恋文以上の熱情を見た

内在される真実

季節を決めるは外にない
その色決めるは外にない

過ぎ去りしものの栄華
儚きものへの憐憫を

外では青い春と呼ぶ

渦中にあっては青でも春でもない
灰と冬、白と秋、黒の夏

それらは内に、内に、内にこそ
真実がある

断じて外に決める権限は無い

歳が何だ、季節、色の内在は続く
真実は己の影

新時代、虚空の下

吐き出した本音
しかし開き過ぎた乖離

何処にも置き所のない
抑圧された年代物の自我

不発弾の如く
危険物扱い

若しくは面倒な一個体

意味の有無に存在をよせない

新時代の虚空はまっしろ
這い出た無記入のノートと一緒

もう閉められないパンドラの匣

もう謝らない
もう黙らない

精算

きかせてきた融通
譲り続けた位置

それらのツケ
全部自分の支払い

他人を許せなくなった時
それは私への恨みであった

私とばかり話してるのに
私の本音は何もわからない

コンサルできない
カウンセリングできない
語らない無言の子供時代

或いは踏みつけて来た二十代

毎晩峠を越えるが如く

永久孤独の種明かし

永久にこの道は交わらない

地球は丸いから
進んでるようでまた戻る

隣り合うは平行線のみ

繋がりの名称に縋りついても
道は常に一個人にひとつ

相対的であるから
あらゆる名称が生まれた

時に運命共同体の夢を見る

天と私が在る
世界は私

理不尽も
不条理も
あらゆる愛も
私自身である

道すがら

太陽に照らされた
街路樹の切株に
理不尽の憐憫を

もうもうとした
蜘蛛の巣には
繭への逃避を

あらゆるものを
白白とうつす
真夏の雪化粧

いたるところに
見えるエゴには
己の相対と共振

頭はふるえている

ふらふらと歩き
おもたい大気に
やるせなさ

孤独と思考が
心臓を締めつける夕暮れ

蝶、舞う、空

蝶が舞う
舞う、舞う

青空に映える
不思議なあお

砂利道の上で
大きな木を見上げる

誰かがいる気がした

見えないものに
囲まれて

天から降る音
ひとりの音

夢も現実も
パレットの上で混ざる

新しい色の発見

遠くで歓声が聞こえる

花火が上がる

静かで忙しい光景

蝶は舞う
舞う、舞う

太陽に灼かれる日

朝に見た
反対側は
夕陽に焼けていた

焦土と化し
ふつふつと
芽が出て
一気に草木が生い茂る

前方は朝日に焼かれてる
私はカーテンをしめて
やり過ごそうとする

朝日は隙間から忍び込む
そうして照らしていく
泣いても怒っても

私は照らされる
何度もむかえる
目にしみたのは
朝の焼け野原

いそいできた、ら

ぽつねんの空
しらとりが飛ぶ

ずいぶんといそいだ
ずいぶんとあせった

そんな道があったとさ
はやくあったとさになりたくて

そうだ、いそいだ
私はいつもいそいでいた

それでいて
あんらくをもとめていた
ゆるやかなるときを夢にみて

しゃんしゃんと
なきながらも
やってきて
ぽきん、と、今

運ばれてゆく夜

寝台列車に乗る
人々は泥のように眠る

何処へ向かうか
考えたくない

私は眠れず
列車の音を聞いていた

規則的なようで
不規則な音の列

永遠にこうしていたい

どうにもならない
自分の運命を
窓の外に見た

それは案山子のように
動かず立ったまま
私を見ていた

情緒を燃やし
列車は走る

氷柱

氷柱

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • ミステリー
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-07-27

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