カラフル・サマー

 チョコレートアイスドリンクを片手に、微笑んでる。ネムが、わたしにくれた、花の首輪が、枯れ落ちたとき、わたしは、ネムの所有物ではなくなるのだろうか。想像のなかで、歪む、愛があって、そこには。もう、一生、溶けないように凍結したい。わたしは、この首輪を失っても、ネムのものだと、どこの神さまに誓えばいいのかと思って、でも、それって結局、ネムが叶えてくれるものだと思い直して、つまりは、ネムが、わたしの神さま。
 どこかの平和な街で、わたしと、ネムが、ずっとみていたい夢を、だれかがフィルムにして、それを抱きしめて、ねむりたい。ネムが、うつくしい、夕陽色の髪をなびかせて、わたしをみている。花の首輪を、たいせつに守ろうとしているわたしを。ふたりの住処が、砂の城だったとしても、わたしはネムと、しあわせになりたいのだと思う。それって、よくある世間の、いわゆる一般的で、万人受けする平凡な祈りだとしても、どんな形であれ、しあわせは、生きとし生けるものには平等に、あたえられるべきなのではないか。ネムが人形で、わたしが異星人だったとしても。ネムが海洋生物で、わたしが微生物だったとしても。ネムと、わたしでは、未来になにも残せないとしても。
 ネムの、チョコレートアイスドリンクを持つ左手の爪は、向日葵を想わせるイエロー。
 わたしは厚底のサンダルで、熱々のアスファルトをこすり、じゃり、と鳴らす。
 なつかしい、学校のプールのにおいがして、静かに胸が焦げる。夏。
 底抜けに、青い。

カラフル・サマー

カラフル・サマー

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-24

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