短々落語「ちりとてじん」
400文字以内のショートショート落語臭
「ちりとてじん」
ご隠居、鹿に土と書いて何て読むんだい。
八つぁん、お前さんはいつも唐突だねぇ、まぁいい教えるよ。訓読みは、ちり、ごみ、つちけぶり、ひさしい、で音読みはジン。
意味は、ごみ、ちり、埃、土煙、俗世の汚い、久しい、じゃ。字形は鹿が走ったときの土煙からきている。塵も積もれば山となる、という諺をお前さんも聞いた事があるだろ。
ご隠居、これはいい意味なのかい?
この塵はごみではなく、物凄い小さい事を指している。つまり小事を疎かにするなという戒めじゃ。
それから仏教語に五つの塵とかいて五塵がある。これは煩悩を起こさせ人の心をちりの様に汚すもので色・声・香・味・触の事じゃ。だから塵も積もれば山となると言っても、ごみをむやみに捨てちゃいけないよ。例え小さい塵のごみ捨てでも積み重なれば、心を汚す煩悩つまりじんが増す事になるからね。
馬鹿が勘違いして、ごみの山を作らなきゃいいね。
あぁそうだ、つまり「ちりとてじん」だからね。
短々落語「ちりとてじん」
お後がよろしいようで。