遠雷
三十三度へ曝け出した皮膚が
夕映えを呑み込んでいく、
遠くに落ちたいなびかりに
視線がずっと縫い止められている
くぐもった昨日の雨音を聞いた
隠された暗号を探すような心持ちだ
透明な瘡蓋を抉るような心持ちだ
身体の音と混ざるまで、耳をひらく
ペトリコールの上を歩きながら
前腕に残った赤色を舐め取った
甘さを塩辛さで誤魔化すのは
アベリアを手折るより簡単じゃないか
五感をどこかに、どこへ、置き忘れられたら
遠雷が連れ去ってくれたのは、ひとつだけだ
替えのきかないかけらの、ひとつだけだった
遠雷