願望
世界最後のお話。
雪が降る。
荒廃した町、錆びれた電柱に。
何処を見ても人はいない。
崩れた廃ビル、陥没した地面に。
何処を見ても私一人だけ。
一体、どれだけの時間を生きただろうか。
交差点で一人立ち尽くす。
昔、聞いた音楽を思い出す。
大通りで叫んで暴れてみたいと思った。
私は誰もいない世界で、
踊る。
踊る。
踊る。
声が擦り切れるまで。
体が動かなくなるまで。
…最期が迫る。
私一人だけの世界がやっと終わる。
何も残せなかった。
何も救えなかった。
何もここにはない。
私の声は誰かに届いたのだろうか。
凍える体、薄れゆく意識。
世界はそれでも廻る。
ただ冷酷に。残酷に。
願望