願望

湖楠*

世界最後のお話。

雪が降る。
荒廃した町、錆びれた電柱に。
何処を見ても人はいない。
崩れた廃ビル、陥没した地面に。
何処を見ても私一人だけ。

一体、どれだけの時間を生きただろうか。
交差点で一人立ち尽くす。

昔、聞いた音楽を思い出す。
大通りで叫んで暴れてみたいと思った。

私は誰もいない世界で、
踊る。
踊る。
踊る。

声が擦り切れるまで。
体が動かなくなるまで。

…最期が迫る。
私一人だけの世界がやっと終わる。

何も残せなかった。
何も救えなかった。
何もここにはない。

私の声は誰かに届いたのだろうか。
凍える体、薄れゆく意識。

世界はそれでも廻る。
ただ冷酷に。残酷に。

願望

願望

  • 小説
  • 掌編
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-07-21

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