同族嫌悪

 四季を抱いて、ねむるのは、神さま。しらないところで、朽ち果てていた、椿が、わたしのてのひらのうえで、なにものにも帰化できなかった、さみしさ。むなしさ。などという言葉の、からっぽな感じは、いつもどこか、うわの空のせいだ。夏で、蝶が、めまいをおこし、いとも容易く囚われて、もう、じゆうにはとべないのかしらと、つぶやいて、わたしは、でも、わたしのせいじゃないと思っていた。蓮華が、あなたのそういうところがきらいなのと、わたしを、批難するようなまなざしで一瞥してから、うっとりと蝶を愛でた。愛でているつもり、なのだが、要は、じぶんかっての愛で、しばりつけているだけの、傲慢な愛だ。それは、わたしの、椿に対してのそれと、腹立たしいほどにイコールで、つまりは、ひとりよがりほど、滑稽なものはないのだと、ひとり嗤いながら、はんぶんほどまだ凍ったままのビールをのんだ。

同族嫌悪

同族嫌悪

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-19

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