ブレード・オブ・ナイツ force

第四章 沈黙の殺し屋

「おっらぁあああ!」
俺は迫り来る敵に向かって刀を思いっきり振り下ろす。当然峰でだ。
なぜこんなことをしているかというと俺たちはこの洞窟にいる盗賊をしばき上げ、捕まえるという依頼を受けなんだかんだで時間をくってしまったが今現在その洞窟に突入中というところだ。
「今ので何人目だ?」
「百三十一人です」
答えたのは赤みがかったショートヘアーが目立つ如月綺羅である。
「百! もうそんなに切ったのか……」
はっきり言うと人を切るのはあまり好きになれない。好きになってはいけないことだとは思うが……。
「もう出てきてもいい?」
岩の影からこっそりと顔を出してきた少女は黒い髪を揺らしながら小さな声で聞いてきた。少女の名は心菜美香。顔は綺麗に整っておりいわゆる美少女という言葉がよく似合う容姿だ。
「ああ、もうここらはいないだろうからいいよ」
俺は美香に出てくるのを許可したと同時に手の持った刀を消す。すると岩の後ろから出て来た美香は俺の腕にしがみつき離れない。
敵と戦い始めてからずっとこの調子なのだ。なぜかわからないが敵と戦い終わると俺の腕にしがみつき離れようとせずずっと無口でいる。まあ、俺は気にならないからいいが……。
「こわい……」
「へ?」
突然の言葉に声を裏返しながらも返した。言葉の発信者は美香だった。
「な、何が?」
さっき言ったことは撤回しよう。俺、かなりやばい。女の子にしかもこんな可愛い子にくっつかれて俺の理性が抑えられるか心配になってきた。それにこいつの元気がない顔が一瞬見えたとき意外と可愛いことに気づいてさらに俺の理性がまずい状況へと変わっている。
「慎二が死んじゃうんじゃないかって考えたら私……」
俺が死ぬ? そんなこと考えてたのかこいつ。
「大丈夫だ。俺は死なないよ」
たかが盗賊刈りで死んでたまるか。そんな言葉も付け加えたかったが理性を支えるのに精一杯で言えなかった。
「だって、私が関わってきた人はみんな――」
「安心しろ、俺はどこにもいかないよ。それにお前の昔話に俺も加えようとすんな。お前の昔話に興味はないし関わるつもりもない。お前は今を生きてるじゃないか。一体いつまでその昔話に囚われるつもりだ?」
こいつの昔の話はこの前聞いた。こいつも大変だったんだろう。だが、それはあくまで過去の話であって今の話ではない。そんな嫌な過去は捨ててしまえばいいし、忘れてしまっても誰も怒る者はいない。いや、否定するものはいちゃいけないんだ。
「ホントに? ホントにいなくなったりしない?」
ちょっと泣いているような声で聞いてくる美香。
「俺はこれでも嘘はつかないタイプだ」
なんでもなことを自慢げに言った俺のことをかすかに美香が笑う。そう、それでいいんだ。お前は笑っていてくれ。俺が好きなのは泣き顔のお前じゃなくて笑っているお前なのだから。
「イチャつくのはいいですが……いえ、良くはないですが、俺より敵が来ます。さっきよりはかなり少ないですが比べ物にならないくらいに強い装備をしています。たぶん――」
「それが幹部クラスだと?」
「はい、ですが敵のボスが見えないのは気になります。どうしますか?」
どうするもなにも答えは決まっているだろうに。
「簡単だ。一刻も早くこの依頼を成功させる。あいつらを倒せばあとはボスだけなんだろ?」
「ですね。では私はどうすればよろしいでしょうか」
俺は手を腰にやり消した刀を呼び戻す。そして刀を敵のいる方に向け、構えをとって後ろを振り向かず言った。
「さっきと同じだ美香を守れ、そしてお前自身も守れ」
「御意、お気おつけて」
「はいよ」
俺は半分投げやりな返事を返すと目の前にいる敵に集中した。
周りの声がだんだんと遠くなっていく。集中するといつもそうだ。この状態を簡単に説明するとしたら周りが見えないならぬ周りが聞こえないになるのだろう。この状態の入ると敵の動き、癖、歩き方ほぼ全てを把握することができる。
把握したらただ狙ったところにこの刀を打ち込めばいい。それでかたがつく。
見たところ敵は十一人。確かに重装備だ。下っ端がTシャツだとすると目の前の奴らは鋼が材料の甲冑みたいなものだろう。
武器は三人が剣、四人が斧、二人が槍、残りは爆弾だ。
なかなかにいい組み合わせだ。だが扱う人が全くのど素人みたいだ。
構えも何もない。ただ持って突っ込んで来るだけの集団だ。まあ、早々に盗みを職とする奴がそういったのを習得しているというのも考え難いがな。
そろそろ俺の射程圏内に入ってこようとする剣使いの一人に集中し始める。
剣を無造作に振ってくる敵の攻撃を避けながらタイミングを覚え、縦に振られた剣を回転してやり過ごしその回転の勢いで敵の首に峰打ちを食らわせた。
敵はよろけたがすぐに態勢を立て直し剣を振り始める。
「やっぱり一発じゃ無理か……それなら」
俺は後ろに大きく後退して着地とほぼ同時に敵に突っ込んだ。俺は敵の剣を弾き、突進の勢いを消さずにそのまま刀で連続で峰打ちを打ち込む。
一発でダメなら二発、二発でダメなら何発もってことだ。流石にこれにはかなりのダメージを負ったらしく打ち込まれた敵は気絶中だ。
「一人目」
次は後ろから攻めてきた敵の剣の柄を蹴り剣を離したところでさっきと同様、何発も峰を打ち込む。
「二人目」
そうして一瞬のうちに二人も片付けた俺を見て回りの奴らはみんな後ずさった。
そんな奴らに俺は微笑みながらこう言った。
「なあ、まだやるか?」

圧倒的だった。慎二と会ってから今まで負けそうだと思ったことは一度だってない。慎二は私が今まで会ってきた人の中で一番強かった。いや、圧倒的に強い。負けるなんて思わないほど強い。でも、それでも私は、私と接した人はみんな……。
――お前の昔話に俺も加えようとすんな。
瞬間、慎二が言った言葉が脳裏を横切る。
慎二の言葉が私の考えという氷を溶かしていくようだった。
その温かい言葉は私を心の芯から私を包み込むような感覚に陥らせてくれる。
その感覚が今の私には心地よく、さっきまで考えていた下向きな考えも消し飛ばしてくれた。
そんなことを考えていると目の前では構えをとったまま立ち尽くしている慎二と敵がいた。
「なんで止まってるの?」
「あなたは馬鹿ですか? 剣を持ったら降ればいいってものじゃないんですよ。タイミングを見て確実に仕留められる時にのみ剣を振るう。そうやって最小限の動きをするのが上級者なんですよ」
なぜか剣を持たない人に語られてしまった。
だが、その説明は理にかなっていて、現に慎二は今まで無駄のない動きで敵を行動不能にしていた。
「じゃあ、今、目の前の敵は上級者だね」
「はい? 人の話聞いてました? どう見たって初心者じゃ――」
「だって、あの人たち慎二の動きを見切ってるもん」
「え?」
「確かに初めの人達は初心者だったかもしれないけど今の人達は慎二の攻撃が確実に当たらないところまで離れるよ」
「まさか……う、そ、そんな……」
動揺してどうしたのだろう。
「早くこのことをあの方に教えてあげなければ」
そう言って綺羅さんは立ち上がり慎二の方へと向いたかと思ったら一瞬で消えてしまった。
私は驚いたがすぐに綺羅さんの二つ名が「神足」だったことに気づきあれが二つ名の力なのかと納得した。
「……って、あれ? 今、私。もしかして一人?」

なぜだろう。刀を振れない位置に敵がいるせいで冷戦状態になってしまった。
敵はさっきと変わらず俺より弱いはずなのになぜか手を出そうとすれば逆に俺がやられてしまう感覚みたいだ。
「……どうしたものかなぁ」
お手上げ状態である。何か打開策はないか? 何か俺が見落としている致命的なことは?
俺が黙々と考えていると後ろに人の気配を感じ少し後ろに振り向くとそこには綺羅がいた。
「どうした?」
俺はこの状況の打開策を考えるのに忙しいのだが。
「はい、敵はたぶんさっきの二人と違って手練の者と思われます」
「ほう、なんでそう思うんだ?」
「敵の動きがあなたには劣りますがかなりのものだと見えたからです」
そうか、それでこの状況が出来上がったわけか。そうなると困ったぞ。
「困ったな。そうなると結構手こずるかもな」
「それならご心配なく。私も戦えばすぐに終わるでしょう?」
「そうか。それもそうだな。じゃあ、背中は頼んだぞ」
「はい」
俺は敵に向かって綺羅と同時に飛び出した。
綺羅の足の速さにはいつも驚かされるが綺羅の凄さは早さだけではない。相手に攻撃をするときの攻撃スピードと威力が半端なものではない。顎を蹴り上げられたら洞窟の天井に頭が食い込むくらいの威力だ。
当然蹴られた敵は甲冑を着けているのもかかわらず蹴られた箇所がへこみ一撃で気を失っている。
俺も負けじと敵に峰打ちの連撃を打ち込むが圧倒的に綺羅の方が多くの敵を落としている。
「そろそろいいぞ!」
敵の数が少なくなってきたので『技』を使うために俺が言うと綺羅は俺の後ろにまさに一瞬で戻った。戻ったのを確認した俺は手に炎のたまを作りそのたまを敵に向かって投げた。
たまは敵に当たると広がり敵の体全体を包み込む。それを残りの敵全員に使った。
「あれは何ですか?」
「ん? まあ、見てればわかるさ」
それから、何分かたった頃俺は炎に包み込まれていた敵を開放した。
敵は黒焦げになって出て来た。
「ま、まさか」
「いや、死んじゃないぞ。高熱の中では何がなくなると思う?」
「……酸素ですか?」
「そうだ。酸素がなくなると人はどうなる?」
「息が……そうか、窒息で気絶させたんですね」
「まあ、そんなところだ」
本当は熱すぎて気絶したのがほとんどだろうがそれは言わないでおこう。
「なんとかなりましたね」
「そうだな」
終わって俺はある疑問が浮かぶ。
「そういえばよくわかったな。相手が手練だってことに」
「あ、それは……ああ!」
いきなり大声を上げる綺羅。
「ど、どうした?」
「美香さんを一人にしてしまいました」
「は? 美香を一人に……ってことは、まさか……」
美香が隠れていたであろう岩陰に振り向くとそこには誰もいなかった。
「あいつ、どこに……」
「どしたの?」
後ろからもう聞きなれた少女の声がしたので振り向いた。するとそこには美香が立っていた。
「お、お前、どこ行ってたんだよ! 心配したんだぞ!」
心配したのは嘘ではない。こんな洞窟の中、しかもまだ盗賊のボスが捕まってないのに、もしも敵のボスに捕まったりしていたら最悪の事態のことが脳から離れなかったのだ。
「ごめん。でもこの子がね」
そう言って手の中のコウモリを見せてくる。
「こいつがどうしたんだ?」
「この子が敵のボスに撃たれたんだって仲間のコウモリたちが言ってたの」
そういえばこいつの能力は動物と話せることだったなと思い出し、さっきの言葉の意味を考える。
「ということは敵のボスは銃使いか」
「多分ね」
美香はそんなことよりコウモリの方が気になるらしい。
俺はそんな美香を見て溜め息をして言う。
「見せてみろ」
「え?」
「そのコウモリを見せてみろって言ってんだ」
「うん」
美香は訳が分からずただなんとなくこっちに手を寄せた。
美香の綺麗な手も小さいがコウモリはもっと小さかった。
「まだ生きているな」
生きていることを確認した俺は手にコウモリの口と同じくらいの炎を作りそれをコウモリの口に入れた。
「何、今の」
「俺が作った精力剤だ。大概はあれで元気になる」
俺が言っているそばからコウモリは立ち上がり何処かへ飛んでいった。
「わぁ、ホントに元気になったね!」
「だから言ったろ、大概はあれで元気になるってさ」
俺たちが話していると美香の後ろにキラっと光ったことに気づき、さっきの美香との会話ことを思い出した。
敵は銃を持っている。ならさっきの光はスナイパーなどが使うスコープなのではないかと。
それを思った瞬間俺は美香を横に突き飛ばしスコープから外そうとしたとき小さなたまが細い線を描きながら俺の肩に直撃した。
「うっ」
肩が熱帯びながら、同時に痛みも帯びていく。撃たれたのだ。
「綺羅、美香を連れて外に行け」
状況がつかめないのか綺羅はその場に立っているだけだ。
そんな綺羅に俺はもう一度言った。
「綺羅! 美香を連れて外に行け!」
綺羅はやっとのことで理解し、美香を連れて行こうとするが今度は美香が動かない。
「どうした美香! 早く行け!」
俺の撃たれた箇所を見て動かない美香に俺は大声で言った。
「美香さん早く!」
「……いや」
「どうした美香」
俺は取りあえず死角であろう岩場に美香を押し込み俺も隠れた。
「嫌だよ慎二、死んじゃいや!」
抱きついてとうとう泣き出してしまった美香にどういう対応をすればいいかわからなくなってしまった俺。
「死なねーよ。俺は死なねぇから安心しろって」
死なないと言っても泣き止んでくれそうもない美香を見て俺はきっと昔のことを思い出しているのだと思いどうしようもなくなってしまった。
こいつにとって自分の周りの人が怪我をすることはトラウマなのだろう。だが、今はそんなことをしている場合ではない。動かないとこいつのトラウマに本当になってしまうからである。
「綺羅、敵は?」
「動きはありません。それよりも怪我の方をなんとかしなくては」
「そんなのは後でいい。それよりも今はこの状況を打開しなくちゃならん」
まさに一難去ってまた一難である。しかも今度の一難は俺の最も苦手とする銃だ。これはまずい状況になってきていると言える。
それよりも俺の肩から流れる血が止まらない。これはタイムリミットがあることを示す。血がなくなるのが先か、それとも俺たちが撃たれておしまいか、はたまた敵を倒すか。この三つの選択肢しか存在しない。
「美香、離れてくれないか? そんなに抱きしめれると血が早く抜けちまうよ」
皮肉っぽく言うと美香は離れてくれた。
離れてくれたところで俺たちは作戦会議をひらいた。
「で? どうするよ」
「そうですね。まず私が相手に突っ込んで行くのはどうでしょうか」
「お前、早くなるとまっすぐしかいけないだろ。それじゃあ撃たれておしまいだ」
言い忘れたが綺羅の能力のメリットは早くなることだが、デメリットは早くなるとまっすぐにした進めないことだ。
「それは……そうですが」
「流石に刀で銃弾を打ち落とすのは無理だしな」
打開できないのか? ここでおしまいなのか? そんなの俺が許さねぇ。何か、何かあるはずなんだこの状況を打開できるキーが。
「……そうか、俺が囮になって綺羅が捕まえればいいじゃないか」
「ですが、あなたは怪我をしているのですよ?」
「だからだよ、だから捕まえるのはお前なんだ怪我をしている俺より余程確率が上がるじゃないか」
綺羅が迷っている顔をしている。
「それともお前は俺がこんなところで死ぬ人間だと思っているのか?」
「いえ! 決してそのようなことは――」
「じゃあ、大丈夫じゃないか」
「……分かりました」
やっと納得してくれた綺羅。次は美香だ。
「美香、絶対動くんじゃないぞ」
美香はこくんと頷く。だが顔は暗いままだ。
「……安心しろ、俺が迎えに来てやるよ。だから待っていてくれ」
今度は目に光を灯しながら頷いた。
これで準備は万端だ。
「十秒後に出る。綺羅は同時に出てなるべく敵にバレないように敵を見つけてくれ」
「はい」
「よし、じゃあカウント始めるぞ。十、九、八……五、四……一」
ゼロと言った瞬間、俺は岩陰から出て全身を現わにした。
すると、銃弾の雨が飛んできた。
俺は五メートル離れたところから厚さ三メートルの高熱の炎の壁を創りだす。
銃弾は炎の壁の中で溶けて消えてしまった。
これで銃弾はこっちまで届かない。そう思ったのも束の間一瞬銃弾が止んだと思ったら今度は一発の銃弾が飛んできた。
その銃弾は炎の壁に当たったと同時に爆発した。なんと爆薬が仕込まれていたらしい。
「そんなのありかよ」
爆風に飲み込まれ吹っ飛ばされて洞窟の壁に激突してしまった。
気づくとまた銃弾の雨が飛んできた。今度のはスピードが早い。
銃弾は炎の壁を突き抜けて飛んできた。
「ちっ!」
俺は咄嗟に炎で近くにあった鉄を溶かし、刀でその鉄を目の前に広げた。
すると鉄は固まり、まるで盾のようなものになり銃弾を弾いていく。
そこまでの戦いで敵の二つ名が『沈黙の殺し屋』だということに気づいた。
まさか、殺し屋がボスだとは思わなかったが二つ名がわかった以上こっちに勝機が見えてきた。
この世界では二つ名がバレたらほぼ負け、だが両者の二つ名がバレれていれば残るは二つ名の力のみ。ちなみに俺は前に殺し屋系と戦って勝ったことがある。
そして今度は神足の綺羅がいる。前とは桁違いの力だ。
あと数分で勝負は終わる。俺たちの勝ちで。あと数分だけ耐えれば俺達の勝ちなんだ。
そんな思考を巡らせていても銃弾の嵐は止まらない。否、増している。
俺はただひたすらに銃弾を避けていた。その間俺の肩からは大量の血が流れ出てだんだんと視界がぼやけてきた。
とうとうバランスを崩して倒れそうになり寸前でなんとかしのいだがそこに運悪く銃弾が俺の頭を狙って飛んでくる。体が重くて避けられない。これは死んだな。
そう思い目を閉じると何かがぶつかった。目を開けるとそこには美香がいた。
俺と美香は倒れ込み美香は動かない。
「おい、美香出てきちゃダメだって言ったじゃないか」
美香を触ってる手が熱い。見ると手が赤く染まっていた。
血だ。しかも俺のじゃない。俺の体の上で動かない美香のだ。
「おい! 美香! 大丈夫か!」
美香はゆっくりと顔を上げにこっと笑う。その顔は痛みを我慢して無理やり笑っていた。
「え、えへへ、う、撃たれちゃった」
「バカ! 喋んな! 死にたいのか!」
俺は美香の撃たれた箇所を手で支える。
「し、慎二、聞いて?」
「だから喋んな!」
「お、お願い、聞いて」
「……」
俺はなにも話せなかった。美香の顔がとても必死な顔だったからだ。
「わ、私ね、私、慎二のこと……好き」
「……なんで今なんだ」
「今じゃないと、言えないから、だよ」
今じゃないと、だと? それは死んじまうってことかよ。
「お前は死なないよ、いや、死なせねぇよ」
「私ね、世界で、一番、慎二のこと、好き」
俺もなんだ、俺もお前のことが……好きなんだ。
まさか、二人共同じ思いだったなんてな。
「し、慎二は? 私の、こと、好き?」
言葉が途切れ途切れになっている美香に俺は言った。
「お、俺もお前のことが……好きだ、会った時からずっとそう思ってたよ」
「よかっ、た」
そう言って美香の首は力を失って俺の腕の中に収まる。
「そんなのってねぇよ……なんでこいつが死ななくちゃなんねぇんだよ」
こいつはまだこっちに来て全然時間が経ってないんだぞ。それなのに……。
「敵を捕まえました……美香さんどうかしたんですか?」
何も知らない綺羅が帰って来た。
「撃たれたんだ。俺を庇ってな」
美香はもう息をしていない。体も冷たくなってきている。これじゃあ俺の薬でも効果は期待できない。
「し、死んでしまったのですか?」
「……多分な」
美香の顔がだんだんと白くなっていく。体の血がなくなってきたのだろう。
俺は美香を抱きしめた。
「俺のせいなんだ。こいつは死ななくても良かったのに俺が付いてこさせたから、だから」
「……まだ、なんとかなるかもしれませんよ?」
綺羅が何やら思いついたらしい。
「どうするんだよ。どうすればいいだよ!」
「白虎さんに聞いてみると何かいい案を思いついてくれるかもしれません」

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盗賊との戦いもクライマックス!!

  • 小説
  • 短編
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  • 全年齢対象
更新日
登録日
2012-12-03

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