遺棄されたものを迎えに

雪水 雪技

遺棄されたものを迎えに
  1. 遺棄されたものを迎えに
  2. バベル
  3. タルタロス
  4. 根源からの信号
  5. にゃあの石
  6. 闇鍋の時代
  7. 無題
  8. 自由意思不在論
  9. 権力の過負荷
  10. 嘘つきの良い子は死にました
  11. 簡単に救われない宣言
  12. エゴイズム
  13. 不平不満の効用(用法容量をお守りください)
  14. 獅子の国
  15. 雀の行方
  16. 灯火
  17. もつれて崩れて裏切られても
  18. 舞台の亡霊と供養の演者
  19. 全てが私ならば
  20. 夢の中で死ねるのなら

Twitter詩まとめ15

遺棄されたものを迎えに

虚空に見た動く化石
骨たちが列をなして
埋葬された夢を探す
彷徨う亡霊を避けて

(ここに私たちの故郷があります)

世界的美術館の
心象風景画には
画家最期の言葉

添えられた果物
陰影すらぼやけ
形は曖昧な絵画

(ここに優しい思い出があります)

静物と無機物
銀色と乳白色
不可侵の記憶

バベル

唐辛子の味がした
これは痛覚らしい

舌がしびれる日に
電流が走った午後

倒壊した巨大な塔
作業員たちが騒ぐ

言葉が通じなくなった日のこと

あんまり勢いよく
建設を急いだ所為
天へ噛み付いた罰

後世色々な説がありまして

ああ舌が痺れる
次に放つ言葉は

辛い、私のあの日は辛かった

タルタロス

地底からぎょろりと
大きな目玉で見ていた

地上の人たちの俯き顔

疲れ果てた人類の
朝夕の行軍を

ただ見ていた

吸盤は岩石にくっつき
大きな体が地殻に引き摺り込まれ

吐いた墨は自らを染めてゆく
こんな苦しい運命よりも

あの疲れた顔には
さらなる絶望を見ていた

根源からの信号

解析不能の音波
海の中からの声

聞いたことがある
しかし不明の音符

いつ聞いたのだろう

昨日の微睡の中
胎児の頃の記憶
有史以前の記録

リフレインする海底からの誘い

フラッシュバックを繰り返し
それでも到達できない地点に

有機体の根源的なものの予感
僕らのソース、始まりの数列

にゃあの石

猫の目をした石
石は「にゃあ」となく

それは不思議と
お姫様が森へ来て

「にゃあの石や」
と猫撫で声で呼んだなら

返事は「かあ」
怒ったお姫様

かあとは何事かと
声のする方へ石投げた

「ぎゃあ」と
悲鳴が上がる

お姫様は恐ろしくなる
蛇の目をした石に睨まれる

お姫様は雨蛙になった

闇鍋の時代

芸術の神の厄災
恐怖の大王の悪態

同時多発のデカダンス

陰謀論に尾鰭が付く
風刺より悪意が勝る

魂無きガラクタの量産
無意味こそ良しとされた

白黒ばかり
針金ばかり
無味無臭の
展覧会

悲劇と不条理
闇鍋時代が到来

人類の感性は疲弊して
その疲れ切った足音が
悪夢の筆を走らせる

無題

メタファー
の、ための
メタファー
ファファファ

綿菓子が濃ゆくまるまって
繭になってしまえば
茹で上げられるよ
気をつけないと

ファファファの音階
したり顔の既得権益

食品サンプルは
どんなに精巧でも
食べることはできない

ファファファ
ファファファ

本質は何処の渡鳥
流行より普遍

自由意思不在論

クオリアをも
クラウド共有

拡散しないと
生きていけない

有機体の揺らぎが繋ぐ

お前の感覚を疑うお前

鏡の前で
ゲシュタルト崩壊

お前の意識を疑うお前

暗転した舞台
もう終わり?

なんだかすっきりしない

「それがいいんだよ」

鏡の前で女優は崩れる

耳鳴り止まない
歓声は聞こえない

権力の過負荷

チグリス川とユーフラテス川
ラプラスの悪魔
文明と哲学

不都合なものは全部悪魔
それは都合がいいな

猫が飼われてどれ程経つ?

エジプトのピラミッドの秘密
知ってるのは猫だけらしいよ

スフィンクスの本当の意味
知ってるのは猫だけらしいよ

秘密は全部、猫に聴こう

おや猫語禁止令だとさ

嘘つきの良い子は死にました

嘘つきの私は良い子

その子は死んだよ

つまらない価値観と
吐き気を催す暴言に

戦ったけど
保身の前で
討ち死にだ

嘘つきはよくないなあと
思いましたから

もう嘘はつかないと
決めましたから

詩を書いた
でも書いても書いても

私ってなんだかわからない
ついた嘘の数だけ書かなきゃね

簡単に救われない宣言

濾過して濾過して
この世界に落とす雫

水がきれいになるように

誰も入れてはいけないよ

さみしい方がらくなんだ

ひとりじゃないよ

なんて

知らない人の言葉に
救われたくないから

わたしはさみしいをえらぶよ

わたしはわたしの永遠の理解者

知らない人に
着いてったら
あぶないよ

エゴイズム

何も思い患うな
何も考えないで

 つまり沈みゆく時間

何も知らないで
何も夢見ないで

 かえらないままで

白く溶けた時間
まきもどらない

 後悔は人のあかし

それはつよがり
それも人らしい

 らしくない時も

 らしくある時も

崩すも壊すも
 
 わたしの権利と責任

不平不満の効用(用法容量をお守りください)

悪態も必要
不平も必要

腐らないために
前に進むために

絶望も必要
自暴自棄になる日も

運命を受け入れるために
それでもなお生きていくために

聖人君子である必要はない
いつも穏やかでいられたら天国だ

宿命すら自分で選んでる

未来が暗くても
明日が見えなくても

感じる心があるのなら

獅子の国

獅子の首が
大樹となる
太陽の象徴

大樹の周り
暮らすライオン

死のない物語の世界

幸せなライオンの一家
生まれたばかりの子供

嬉しそうに吠えて
この大樹を愛した

太陽の獅子は守る
野生と自然と愛を

慈雨の獅子は眠る
次の獅子の首に
役目を受け継ぎ

獅子は優しく
獅子は強く
故愛する

雀の行方

消えた雀の消息を
尋ね歩いて炎天下

雀や、雀

私をひとり置いて
どこ行った?

大空に帰ったか
それとも私が逃げたのか

どうして雀を探してる?
何を求めて探してる?

もうどこへ向かっているかも
わからない空の下に

飛べないとわかってる
何もかもわかってる

ただ聞き分けたくない今日

灯火

なにもなせないこと
大義を求めないこと

それは同じなのに
空洞になる心地が
神経を支配していく

消え入りそうな灯

熱情を無くして
結局目的を探す

囚われてるのは何?

それから解放される日
開き直れるかどうか

蝋燭の火みたいに
ゆらゆら揺れてる

確かに燃えている
確かに燃えている

もつれて崩れて裏切られても

もつれだす
くずれだす

もろいなあ

なのに

しぶといなあ

いつも綺麗さっぱり
諦めて生きてきてる

フリをしていた

でもいつも
割り切れなかった
諦められなかった

だから今、こう在る

見えていたものは
いつも理想郷
信じていたものは
いつも裏切る

それでもなお
息さえしていれば

舞台の亡霊と供養の演者

どんな結末でも
演りきらなければ

舞台の上の亡霊
永遠にそのシーンを
繰り返し苦しみ続ける

思念

例えばどんな結末でも
何もかも失おうとも

その役だけは
演りきらなければ

ずっと嘘をついたなら
現実は虚構だとしても

脚本家は私
演出家は私

最悪なシーンの後には
最高のカーテンコール

全てが私ならば

時間は曖昧な概念
どれだけ没入するか

体感するものは現実か
痛み苦しみがあるなら
喜びだって掴んだ筈だ

相対的な繋がりこそが
輪郭を作り出すツール

胸が詰まる思いも
弱気になる心も
弱りゆく体も

私を思い出すために
全てが必要なプロセス

苦しき時に生み出した言葉
本質の体温に近づく

夢の中で死ねるのなら

夕闇に燃える森の中
私は死んでいった

寂しく寒い車の中で
懐かしい会話をした

誰の為かわからない
玩具を買ってあげて

私は夢の中でだけ
安寧を手にしていた

重くのしかかる空気
息を詰めていた

生まれ変われたと
思えるのなら

そう、思えるのなら

遺棄されたものを迎えに

遺棄されたものを迎えに

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • ミステリー
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-07-18

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