交差しない線
このまま、夏が、星を腐らせていくのを、傍観するだけの、ぼくら。
ただ、崩壊を、みているだけの人類を、ゆるしてくれるのだろうかと、くそまじめに悩む、シオンは、それでも、ハンバーガーを食す。雀鷹が、フライドポテトを一本ずつ、たいせつに、あじわうように噛みしめているのが、ちょっとおもしろい。どんなにみじかくても、だ。
二十一時までしかやっていない、ファストフード店で、客は、みんな忙しなく、けれども、レストランではないので、長居するのは、だいたい、おしゃべりしたい盛りの女子高生くらいかと思いながら、バニラシェイクをすする。ストローを噛む癖がある、ぼくを、窘めるのはシオンであり、あらゆるところに気をまわしすぎて、つかれやしないのかと心配になるのだが、シオンは、おせっかいがデフォルトのキャラクターなのだと、雀鷹が云うので、なるほど、そういうものだろうと割り切っている。地上は、ぼくらのしらないところからすこしずつ、おそらく、もう、何十年も前からじわじわと、滅びに向かっているのだと、シオンは語るし、でも、そのスピードは緩やかだから、きっと、ぼくらが生きているうちには滅びないと、雀鷹はおだやかに微笑む。けれども、ぼくらの子孫はどうなると、とげとげしく答えるシオンに、雀鷹は、こわいくらいに凪いだ海を想わせる調子で、未来のことはわからないのが世の常だろ、と言う。なるほど、と思うし、世の常なのか?と、首を傾げたくもなったが、ぼくにとってふたりのやりとりは、少々高尚(というよりも、単に自分の思想をぶつけあうだけの、永遠に繰り返す痴話喧嘩みたいなもの)で、実際のところ、あまり関わりたくはないので、傍観、沈黙を決め込んでいる。やはりぼくも、星が腐っていくのを、みているだけの人類なのだ。
はやくお家に帰りましょうと、店内のバックグラウンドミュージックが、ぼくらを追い立ててくる。土曜日。
交差しない線