海月に浮かぶ

目が()めてもひとりきり
手当たり次第探っても
誰の温度も残ってない部屋

手足が浮くようなそんな感覚
もう一度眠りに()こう
(けむ)に巻く様な夢見だけど


本当は、とても心が渇いて
浮かぶ水を探している

期待通りに何もいかないけど
離れた声は二度と戻らない


(ただよ)うだけ
出来の悪い不知火(しらぬい)だとしても
口を(そろ)えて(とな)えるのは
孤独の呪文(じゅもん)
さよなら僕らは
海に浮かぶだけの海月(くらげ)だから
完成手前の地図に黒く丸を付けた
闇は空 今はただ君に逢いたい



泳ぐ感覚を想い出した
明日の記憶も曖昧(あいまい)だけど
憶えている事は
悔しかった事だけ

自分の思想が憎くて嫌った
そういえばどこに置いたっけ
眩しいだけで役に立たない光
希望とそれに見合うだけの陽射し


本当、だよ とても怖いんだ
脚の出し方すら忘れてしまった

滅茶苦茶に動かすだけで
その場から動けない僕らの雨乞い(あまごい)



(たたず)むだけ
()びの付いた凪だとしても
足並みは揃わない
孤独の連符(れんふ)
淡さの中で笑うのは
どこかにいる君を知っているから
闇は(そら) 今もまだ君に逢いたい



口付けは魔法だった
繋ぐ ずっと繋いでいる
見えない線の呼び方を知りたくて

前に聞いたことがある
僕らはみんな魚だった
泳ぎ方を忘れる前にもう一度


漂うだけ
出来の悪い不知火だとしても
口を揃えて歌うのは
孤独の魔法
せめてあと最後にもう一度
(しび)れた躯体(くたい)を震わせて
立ち上がった僕の目の前には空

孤独の呪文
それは唱え続けるもの
やがて来る夜明けに備えて僕は
もう一度笑ってみよう


今もただ、君に逢いたい

海月に浮かぶ

海月に浮かぶ

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 恋愛
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-16

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