烏の泣く聲

雪水 雪技

烏の泣く聲
  1. 夜の選択
  2. 夜の選択 2
  3. 双子座の夜
  4. 干支と参拝
  5. 千年後の文化史
  6. 遺跡の白昼夢
  7. 蓮の花が透ける
  8. 雀鳴く朝
  9. 宝さがし
  10. 歴史哀歌
  11. 笑う画廊にて
  12. 窓枠の色彩
  13. 銀灰色の生活者
  14. 砂時計をすくう
  15. 微笑
  16. 月光
  17. 全てを過ぎた夜
  18. うたう理由のような
  19. 烏の泣く聲
  20. 理想像は泣いている

Twitter詩まとめ12

夜の選択

灯みたいな命
こんなに簡単に
あきらめようとしてる

命の重さを知ろうとして
私はまちがいを犯していく
どこへむかうのだろう

私の魂を狩りに来てる
死神をもてなして
歪な笑みを浮かべて

私は何をしてるのだろう
私は自分を罰する以外を
知るために選んできた

錠剤を握って
何か考えてる

夜の選択 2

刺々しい心が
喉を突き刺し
臓物を串刺し
体は痛み出す

何の薬の調合でしょう

蝶々が飛んで
火の粉の中へ
鱗粉に引火し
大火となった

私の罪と罰と痛み

薬に頼り
幻想に縋り
文字列に逃げ

私は個をいかに捨てるか

誰も来ない道の上
動かぬ体を雨晒しにして
雷に打たれるときを待っている

双子座の夜

青の沓、金の沓
双子は交互に履き
天の川を渡って遊ぶ

ひらひら舞った
宇宙の蝶々を追いかけて

アンドロメダ銀河まで
かけっこする

とんで、はねて、
詩をつくって
彗星を見送り
昼寝をする

眩しい星の輝き
超新星爆発
双子は見届けて
また詩をうたう

かっこうの声がする
帰る時間は手を繋ぐ

干支と参拝

寅による試練
虹が祠の向こうにかかる

干支たちと参拝をする
神々が前方にて手本を見せる

虹は二重にかかる
濃い色彩が田園に広がる

神社の向こうに
祭りの出店たちが並ぶ

皆と一緒に運だめし
はれのひのにぎわい

千年後の文化史

千年前の図書館で
知らない思想の本を取る

本棚はガラガラで
もうここはお終いだと知る

分厚い上下巻の本
有識者の独白本は何巻も続く

今は無い製本の技術
今は無い絵の技法

全て図書館もろとも無くなる

今に残らなかった
かつて確かに在ったものたち

思念は漂う
ビル群の中

遺跡の白昼夢

白い壁
煉瓦づくり

年代測定
紀元前

触れれば
熱を持ったまま

まだ、生きている

ここで暮らした人々の
影が映り込む写真

息遣いが聞こえる
波の音にのまれて

美しい侍女が歌えば
うみねこが飛んでくる

溶けた硝子
生けられた花

何処からが過去か
曖昧になる遺跡にて

蓮の花が透ける

水に溶けてく蓮の花
透明になる花びらに

知らない景色が映る

その向こうに手を伸ばす

鳥が鳴いて
朝が来る

今日も私は変われない

散らかった部屋で
動けないままの心

持て余す焦燥感
何にも縋れない

夢の続きは悪夢に変わる

あの美しい蓮の花
もう一度逢えるのなら

雀鳴く朝

夜の黒い大波
いつも私をのみこむ

越えられぬ山のような
四肢を縛られ溺れるような

苦しく暗く不安の夜

雀が裾を啄んで
朝へ朝へと引き上げる

諦め息を止めようと
諦めもう終えようと

何度も何度も諦めた夜だ

勇敢な者などいない
ただ一匹の雀が裾を啄む

悲惨だらけの夜中に傷だらけ

宝さがし

検出された色彩
描画される歴史

古ぼけた知らない街の地図
知らない国の煙草の銘柄

遊び半分で始めた
宝探しの日々

集めた宝物
他人はガラクタと呼ぶ

金に換算出来ぬ何か
例えば物が持つ記憶

俗世が美術館になった日

ウィスキーボトルが見た
青空の青はどんな青か
それだけが知りたい

歴史哀歌

心的考古学
解剖された歴史

歴史から何も学ばなかった今日
また誰かの言葉に傷付く誰か

偉人の言葉は寄り添い
時に僕を突き放した

強い人に憧れた頃の話

今見てるもの
自分の視野の狭さ

夢見る心は気色悪い
愛だの恋だのそれしかない

耳を塞いで寝込む日
太陽を避ける日

まっくらやみだ

笑う画廊にて

青く高き山を描く
細部は夕陽の光を受ける

神話なき山を
あるがままに

大きな木を描く
夕陽を受けて真っ黒な木
カンバスに荒々しく筆をおいた

モデルとなった人物
後世では不明とされる

画家の名前は何種類もあり
その名前だけでひとつの絵画になる

沈黙の絵画
主題なき絵画
画廊は笑う

窓枠の色彩

桃色の空から雨が降る
青い青い水たまりに
掠れた白線が沈む

輪郭の曖昧な抽象画
印象的な光の模様
乙女の夢を描いた

春の忘れ物
駅舎に届く
私の帽子は
空に舞った

線路の終わり
ここで永遠に
スケッチをする

変わらない風景
変わりゆく景色

心象が映した
窓枠の色彩

銀灰色の生活者

最近は随分と心細いな
虚像を崩したあの日から
本当のたたかいが始まった

銀灰色の生活は
灯を濃くする
相反するもの

何処に向かうか
風のふくままに

わがままな自我を
泣かせたままに
わめかせるまま

神経は震えたまま
誰にも心を開かず

文字列に剥き出しの自我を
それは自画像の引用のよう

砂時計をすくう

追いかけても
永遠に辿り着けない
そんなところに来て
今、心寂しい道に居る

ここに至る時
あらゆるもの
落とし払いて

それなのに、

夕陽が沈むのを
止めようとする

過ぎ去るものを
とらえようとする

虚しくないか
悲しくないか

赤とんぼの見た
焼けるような田畑の色

書き記して果てたい

微笑

夢と絵の具を混ぜて描いた絵に
魂を吹き込む

絵は喋り出す
私の無意識の世界のこと

絵は笑い出す
私の悩みの種のこと

絵は泣き出す
私の心に負った傷のこと

絵は沈黙する
私のこれからのこと

騙し絵みたいな
抽象画みたいな
風景画みたいな
自画像を展覧会へ送り出す

微笑をうまく浮かべて

月光

星空に一輪の百合の花
月の涙で濡れている

いつかの汽笛の音を聞く
明日は雨が降るらしく

ツバメは低く飛んでゆく
そうして稲穂は実をつける

月の光で咲いた花
悲しい時の土いじり

指先が黒く染まるほど
何かが満ちる音がする

全てを過ぎた夜

夜のとばりを揺らす風
逢いたい日も枯れ果て
募った日はいつのこと

マンドリンの音がする
寂しい文学が奏でてる

いつかの宴の中にいた
私はどこにいても
寂しい人だった
賑わう声は
空虚な音

孤独は個人的事象であり
心象の風景を詠ったもの

大人になれと
鞭打った我身へ
謝る夜に眠れぬ涙

うたう理由のような

私をすくうため
私をみとるため
私をさらすため
私をみぬくため
私をのぞくため
私にふれるため
私にちかづくため
私をりかいするため
私をむかえにいくため
私をひとりにしないため

抱えきれないを
ここにすべて

これまでの浄化或いは解毒
そのために命を繋いでいる

ありのままに心のままに

烏の泣く聲

ひっそりと
ひっそりと

夜の音にまぎれて

お前の心に仕込んだ
ヤドリギが育つ夜だ
ツタをまいて
夜の王まで
届くために

千夜一夜も辿り着けない
不遇、不条理、カタストロフ

お前の心臓が跳ねるたびに
お前が命を感じるたびに
生まれるうたがある
詠われるうたがある

声、からすまで

理想像は泣いている

赤い屋根
青い屋根
白い教会
未明になる鐘の音

私の心に残る街
いつか見た風景
どこかの時代の
何気ない朝には
太陽があまりに高くて
私たちは目が眩んでた

雪の降る季節を思う
それは遠くて近くて
私たちの備えは頑健
固いパンを牛乳に浸して食べる

青いスカートの女性
慎ましやかで悲しそう

烏の泣く聲

烏の泣く聲

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • SF
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-07-14

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