短々落語「粋な床屋」
400文字以内のショートショート落語臭
「粋な床屋」
今日はどういたしましょう。
そうだね、2センチほど切っておくれ。
かしこまりました。
(チョキチョキと髪を切り始める)
入り口にあった盆栽、マスターが作ったのかい。
えぇ、なんせ髪切りがカット専門の10分になったでしょ、だから時間が余っちゃって。それで盆栽を始めたら、はまりましてね。あんな小さな鉢にでも大自然の美を表現できますでしょ。で、段々とわが子のように可愛くなっちゃって。旦那、もみあげは、どうしましょう。
そうだね、自然な感じで。ところであの盆栽に名前はあるのかい。
えぇお恥ずかしながら、こけももちゃんと呼んでます。
(髪を切り終え、鏡をだし後頭部を映す)
いかがでしょう。
うん丁度いい。
横はいかがでしょう。
うむちょっと、もみあげをよく見せておくれ。(目を凝らし)なんだいこれは。
えぇ自然な感じと言われましたので、「枯山水こけもも」風に仕上げました。お気に召しませんか。
いや粋だ、もみあげに侘び寂びがある。
短々落語「粋な床屋」
お後がよろしいようで。