七月の夜の精

あおい はる

 かわいいひとびと。夜を、淡いグリーンのワンピースを着て、歩き舞う。おんなのこたちの、長い髪とともに揺れる、花。ときどき、花びらが落ちる。ひらり、と。
 わたしと、ノア。呼吸の間隔がおなじで、身長は等しく、やさしさはそこそこに、いきているなかで堆積していったかなしみが、ふいに決壊しては、無垢なきもちで、だれかをきずつけることがある。きれいなものが、みんな、すべて、最初から最後まで、外側から内側まで、きれいなままでいられるわけがないと、ノアは云う。うまれてからしぬまでの、不変は、アンドロイドと無機物の特権なのだと。わたしは、そういうのはどうでもいいから、きれいなものになりたかったし、だれもきずつけないにんげんになりたかった。午后八時をまえに、シャットダウンするための準備をはじめる、街で、閉店を促す音楽を聴きながら、わたしと、ノアは、ファミレスの窓から、軽やかに跳ね、きまぐれに一回転し、踊るように歩く、おんなのこたちをみている。可憐、という言葉が、実にしっくりくる、彼女たちは、街の灯りに呼応して、ひとり、またひとりと消えてゆくのだ。食べかけのハンバーグは、すっかり冷たくなっていた。

七月の夜の精

七月の夜の精

  • 小説
  • 掌編
  • 全年齢対象
更新日
登録日
2021-07-12

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