短々落語「つるとかめ」
400文字以内のショートショート落語臭
「つるとかめ」
昔々の事じゃった、かめが車内で立っていると、優先席が一つ空いたそうな。かめがそれを見つけると、我先にと言わんばかりに向かったそうな。誰にも邪魔されず、やっとこさ腰かけようとした時じゃった、細身のつるが、つつーと横から入り座ってしまった。流石に甲羅にカチンときたかめはこう思った「ちぇ、席を譲る気なんぞ毛頭ない、このつるが!」とね。暫くして水天宮につくと、釣り人、そう浦島太郎風の男が、棚にある荷物、そう玉手箱風の甕を置き忘れたまま席を立ったんじゃ。かめは、しめしめと思いその席に座ったんじゃ。と、棚から先の甕が落ちて、かめの頭に当たった。そして床に落ちた甕の蓋がパカッと開くと、そこから白い煙がモクモクと立ち上ってきた。すると、
すると、どうしたんだい。ご隠居。
すると髪の毛はすっかり抜け落ち、つる禿げとなり、かめは老人に化けた。それでようやく周りが納得した、めでたしめでたし、という与太話さ。
短々落語「つるとかめ」
お後がよろしいようで。