呼ぶ声は

雪水 雪技

呼ぶ声は
  1. 恋する蛍
  2. 架空の天と海
  3. 生きてください
  4. 信じたものたち
  5. 進化論
  6. ショートカット
  7. 記憶は亡霊
  8. 2021年夏
  9. 脳幹に住むキリギリス
  10. 懺悔をしずめて
  11. 森のくらし
  12. 古びた歯車
  13. 呼ぶ声は
  14. 創生
  15. ぽんぽん菓子
  16. 流氷
  17. 影、走る
  18. 消滅
  19. インバネスの夢
  20. 望遠鏡

Twitter詩まとめ10

恋する蛍

蛍舞う
ひらひらと
光の線描いて

蝶に恋した真昼の田んぼ

蛍舞う
声も出ない
その輝きの切なさ

来世は花になり君を呼ぶ

蛍舞う
焦がれた夢
蛹から這い出でた姿

奇跡をこの目で見た日から

蛍舞う
清き水
甘い蜜

夏の大三角より光る夜

架空の天と海

架空の海を見ていた
藍色の海は暗く濃く
白波が押し寄せる

夜なのか
昼なのか

わからないまま
無いはずの海を見ていた

海の温度は高く
人は入れないはず
なのに浮き輪で遊ぶ人

その日はお祭りのようでした

夜なのか
昼なのか

太陽は見えないのに

夜より濃い藍色の海
ありありと浮かぶ

生きてください

あらゆる娯楽
あらゆる期待
あらゆる出会い
心の置き所が在るのなら

人はなんとか生きていけるものです

あらゆる音
あらゆる言葉
あらゆる文化

こんなにも生み出されているのです

私は夢を見る
私は胸を躍らせる
感嘆の声をあげて
熱を上げて眠る日には

明日も生きていようとおもうのです

信じたものたち

過去の私に遭う
緑色の手帳を膨らませて
青い成功を夢見た時代だ

信じてるんだね

駄目だった?

そのままでいいよ

何、教えて欲しいよ

神様が何もかも教えてくれない理由
未来予知の歯切れの悪さの理由
全部わかった夢にて

お前はそれでいいんだよ

無駄だった?

全然、無駄じゃなかったよ

進化論

あった筈のもの
無くなっている

今日と明日は違う人
辻褄合わせて生活している

死ぬまで変化し続ける
それにあらがい続けている

それこそ虚しいとき
何に成る必要がある

川の流れ時間の流れ
エントロピーの法則

そんなこと言われなくても
いやでも変わり続けてきた

だから在るように在る今

ショートカット

時短に追われて
寿命まで縮めるな

急ぎ過ぎて
あの景色を見逃すな

あの山の緑を忘れたくないな

僕らが急がなくても
今日も星の光は届いてる

過ぎた時間は戻らなくても
他の生き方あったとしても

今後悔することなんて無い
全部自分で選べたから

そこに自由は、確かにあったよ

記憶は亡霊

君が思い出す僕は
あの日確かに死にました

もう戻らなくなりました

君が思い出す僕は
無知で寛容だったろうか

そう演ってたけど
嘘は無かったよ

あの日死んだ僕は
今の僕に全て委ねました

そういや、君には
さようならも言えなかったな

だけど亡霊の後を追うな
忘れてしまえ、なにもかも

2021年夏

諸々の痛みがやわらぐ日
アイスを買いに行こう

諸々の支払いを済ませ
アイスを買いに行こう

今年は様々な種類を食べよう
今年の夏はアイスと決めた

何処にも行かず
アイスを楽しむ夏の風流

お腹を壊さぬようにすること
冷たいものの牙を忘れるな

晴れたらアイスを買いに行こう

脳幹に住むキリギリス

キリギリスの鳴き声の様
脳幹から音がしている

私の体は常に秋である

落葉、らくよう、老いて枯れる

置いていかないでと
手を伸ばしているのは
本能的行動で理性は釈然としない

冬、私の頭はいつも真冬だ
冷たい氷に小脳が冷やされる

かくも末端は燃えさかり
矛盾だらけの体内

眠るが易し

懺悔をしずめて

薔薇のコップに沈め
私のつまらぬ虚栄よ

赤く染まって溶けよ
私のつまらぬ自尊心

埋まらぬ欠乏
加熱する食慾

止まらぬ衝動
憂鬱のかたち

今宵も眠る前の儀式
胸焼けがするまで詰め込め

自暴自棄すら詩になれば
私のメシアが舞い降りる

そんな空想と戯言を
つまびらかに述べて祈る夜

森のくらし

山の麓で朝露をあつめる
きのこの食べごろの所をもいだ

木の皮を少し頂いて
樹液をあつめて帰路につく

窓辺に妹が見える
ぼんやり霧の森を見つめてる

暖炉に薪をくべて
木の実のお茶をそそぐ

妹は寒そうにしている
木の皮で作った羽織をかけて

病気の妹を寝かせて
きのこのスープを作る

古びた歯車

もうすっかり朝です
湖からギタアの音色
子羊がよく鳴いてます

白いカモメが私の目の前を
大きな翼で飛んでゆきます

また掴めぬ幻を見ています
今の私にはそれが全てです

目に見えるもの
耳に聞こえるもの

良きものでなければ
心の歯車がうまくないのです

幾千の幻を生み
やっと回る歯車です

呼ぶ声は

呼ぶ声がする
イヤホンから
脳の中から
微睡む私に

ねえ、と呼びかける

私は跳ね起きる
その後は何も無い

何の要求があるのだろう
呼ぶ声は誰だろう

女の声だ
誰かに似ていて
誰にも似ていない

ねえ、何が必要なんだ
私に何を求めるんだ

私は汗を流して
頭痛を起こして
また眠りに落ちる

創生

ぱあん
弾けた
あずきだ
豆鉄砲だ

心も頭も出せども出せども
何にも到達できなくとも
止める理由にならない
今に凝縮された何かが
さらに音を立てて弾けて
また何かを生むため蠢いて
進軍するように膨張を始める

あらゆるものにぶつかる
あらゆる傷をこさえて
ゆらぎを生んで
裂け目から言霊

ぽんぽん菓子

ぽんぽん菓子だ
ほら、空に浮いてる
熱が出る
喉がひりつく
いやな汗だ

ぽんぽん菓子だ
ほら、雀が食べる
くちばしで啄む
かわゆい雀だ

布団の上
曇り空だよ
暗雲は怖いよ
かなわない

ぽんぽん菓子は
出店のわたあめ
祭りの帰り道の
寂しさと安堵
おっかけてくる
ぼんぼりあかり
こわい夜だよ

流氷

しろくまに流氷は寂しい
青い海には寂寞の草原

どこを走っても果てはない
黒い馬が駆け回る焦燥の砂浜

しかたがない
わりきれない

そういう人が歩いてる
あの感情、感傷、金魚みたい

とうめいになりたがる人
とくめいで折り合いをつける

あきらめた瞬間の暗転
幕はおりないから
客も帰らない

影、走る

その夢に気をつけよ
たいへんに酔う夢

朝は目がいたむ
涙のあとを辿るな

誰とあった
何を見た

知らぬ
忘れた

嘘つき
嘘つき

五月蝿い
五月蝿い

うつつによる検閲
苦きシナプス映る

神経回路の信号機
故障か点検か不明

未明出掛けたお前を見た

ちがうよそいつは私の影
活動的なら影の方だ

消滅

あつい、あつい
、てのひら、
木の葉の上で
ころげまわる
はぐるま
こわれる

あつい、あつい
、はりのむしろ
そのうえで
わたしは
わたしを
だきしめ

あつい、あつい
、いしきのうえ
影、煙、白い
こないで
ゆうぐれ
こわいよ

消えていく
このすがた
このしそう
ぜんぶゆめ

あつい、あつい、

インバネスの夢

インバネスの見た夢は
うららかな春光、野山

秋風のつめたさ、黄金色
冬先のきびしさ、粉雪

紳士はステッキを持って
街をうつむき歩いている

その背中はまるく寂しい
くるしい生活のやまい

煙草を吸って白い空
曇りは彼を安堵させる

何も期待しないで済む
笑う黒のインバネス

望遠鏡

月は随分と遠くなる
寂しくて地球は泣いた

何もかも計算されて
星々の距離はありありと
数値化されていくことに
初めての孤独をおぼえた

距離などひとつの尺度である

厳粛な木星は一瞥し
天王星は黙秘する

寂しさを紛らわすように
星を繋いで物語をつくる
そのお遊びを見守る衛星

呼ぶ声は

呼ぶ声は

  • 自由詩
  • 掌編
  • ファンタジー
  • 青春
  • 恋愛
  • 全年齢対象
更新日
登録日 2021-07-10

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著作権法内での利用のみを許可します。

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