幸せな男
誰かに優しくされたことはありますか?
人のために生きたと思ってる男の話し
あるところに人の為に尽くすことこそ幸せだと感じる男がいました。
男は昔から、誰か困っている人を見かけたり助けを求める声が聞こえたらすぐにそこへ向かって街の人たちを助けていました。
そうして、助けた後に人から「ありがとう。助かった」と言葉をかけてもらうことが何よりも嬉しく幸せに感じました。
街の人はみんな男を知っていて、街に欠かせない人気者だとみんなが口を揃えて言いました。
その一方で、男はいつも人に与えすぎていると、少しの人が言いました。
学校の課題が終わらずに困っているクラスメイトがいたら代わりにやってあげたり、外食をしている時に、お金が少し足りなくて困っている人がいたらその分を出してあげたり、売れない小説家が出した本が本屋に残っていたら全部買い上げたりと、一部では男はやりすぎなくらいお節介でした。
誰かが男に対して「無理をしなくても良いんだよ」と言っても、男は「好きでやってるし全然無理じゃないよ」と言ってまた誰かを助けに向かいます。
そして人からお礼を言われて、男は満足そうに帰っていくのです。
男は誰彼構わずに人助けをしていました。
迷子になった猫がいたら街中に張り紙をして里親をさがしたり、傘を忘れたホストが困り呆けていたら自分の傘を差し出したり、道の上で泥酔して倒れている警察官がいたら家まで連れて介抱したり、路地裏で大怪我をしているヤクザがいたら、迷わず病院へ送り届けたりしました。
そんな男には3人、親友がいました。
1人は高校の時の部活で仲良くなった。
1人は小学生からずっと一緒に遊びに行く。
1人はまだ首も座らない頃から一緒にいた。
そんな、長い付き合いでも腐りきらない縁の友達がいました。
お互いがどれだけ離れようと、連絡を断たず、定期的にご飯を食べて楽しく話をする。
とても仲の良い友達です。
そして、男は少年から青年、成人へと成長しました。しかし、男は変わらずにずっと誰かを助け続けました。
誰かを助けて、お礼を言われて、どこか心がぽかぽかと幸せに感じる。
そんないつもの毎日が男はとても好きでした。
ある日、久しぶりに高校の時の親友とご飯を食べに出かけました。
お互い、仕事が忙しく久しぶりに会うので男はとても楽しみにしていました。
約束の日になると、いつもの待ち合わせ場所で他愛もない会話をしながらいつものカフェに入りました。
しかし、今日はいつもと違いました。
親友が男に助けを求めたのです。
この街で誰よりも男を知っている親友の三人は滅多なことでは男に助けを求めません。
助けを求めたらどんなことをしてでも助けてくれることを知っているからです。
そんな親友の一人が、男に助けを求めました。
話を聞いてみると親友は、知らぬ間に両親に借金を肩代わりされていたらしく、気がついたら首が回らないほどのお金を払わなきゃいけなくなっていました。
毎日働いて、給料は利子の支払いで殆どが消えて、働いて、払って、働いて、払って。
親友はとうとう心が折れてしまいました。
そうして、とうとう男に対して助けてくれと叫びました。
男はすぐにどうにかすると言い、親友に借金の額を聞くと飛んでカフェから出て行きました。
まず男は、自身の口座から全てのお金を下ろしました。
それでもまだ借金は返しきれません。
次に男は、家にある家財からなにからを売りに出しました。
男の家から物がなくなり、お金がたくさん手に入ったが、まだ借金は返しきれません。
そして男は、知り合いにいる金融屋さんから沢山のお金を借りることにしました。
とても沢山のお金を借りてようやく、親友の借金を返すことが出来ました。
男はたくさんの借金を抱えましたが真面目に働けば数年で返せる金額だったので困ることはありませんでした。
親友は、男に対してたくさん「ありがとう」と言いました。たくさん泣いて強く抱きしめながら、ありがとうと言いました。
男は、大好きな友人の助けになれたことが何よりも幸せに感じました。
なんと充実した日々を過ごすことが出来たかと、男はとても満足そうに、また人助けの多い日々へと戻って行きました。
前より少しだけ忙しくなった日々でも、男は変わらずに、目につく困っている人を助けました。
そんな毎日でも、男は元気よく、健康的に過ごしていました。
ある日、男の元に小学生の頃の親友から連絡が届きました。内容は交通事故に遭ってしまい入院しているというものでした。
男はすぐにやっている仕事を終わらせると、親友が入院している病院へとお見舞いに向かいました。
看護師に案内されるまま、奥へ奥へと進んでいくと、1人用の病室へと案内されました。
男が病室へ入ると、顔を包帯に巻かれた親友の姿が目に入ってきました。
特に目元を頑丈に巻かれた親友に、男はそっと静かに動いてしまいました。
親友は男に気がつくと、誰かを尋ねた後に男だと気づいて喜びました。
男は親友の横たわるベッドのそばにある椅子に座ると、具合はどうなのかと尋ねました。
親友の怪我は、事故に反して想像以上に軽かったこと。
保険金も予想より多くもらえることになったこと。
しかし、障害者手帳が必要になるかもしれないということ。
事故の際、割れた車の窓ガラスは親友の目へと向かいました。破片は両方の目へ深々と突き刺さり、親友の視力をあっという間に奪ってしまいました。
男と親友は、体を向かい合わせながらたくさん話しました。
体が無事でよかった。事故で命を落とした人がいなくてよかった。しばらくは休養が取れる。ゆっくり休むいい機会だ。
男は優しく、また親友も優しく話をしていました。
親友の仕事は、絵を描く仕事でした。
生活できるほど売れているわけではありませんが、自分の生み出した作品を買ってくれる人がいると喜んで絵を描いていました。
男も親友も、絵の話題だけはさけて話をしました。
これからはまた違った生き方を模索してみるよ。
親友は、悲観的にならず前向きでいると
男は気付きました。
親友の手の震え。声の震え。そして、目元に巻かれた包帯が濡れていることに。
男は、それは親友からの静かな助けてのサインだと思いました。
男はすぐに提案しました。
目の移植手術をすることができないのか、と。
親友は、隠された目元をこちらへ向けると急いで拒否しました。
私は、目がどれだけ大事か君よりも知っている。そんな大事なものを簡単に渡しちゃダメだ。
親友はとても複雑そうにしていました。
そんな大事なものを失ってしまったキミの助けになりたいんだ。
男も一向に食い下がりませんでした。
なにも両の目を渡すつもりはないよ。片方だけ。もしそれで、もう一度キミが絵を描くことができたら、ボクに絵を描いてよ。
最後に根負けをしたのは、親友の方でした。
とてもずるい取引だと、男に文句を垂れながら、どこか希望の糸が垂れているようにも感じていました。
男はすぐに病院の担当医を呼んで、事情を説明しました。
ことはトントンと進んでいき、男の右目は義眼になり、親友の右目は光を受け入れるようになりました。
退院するとき、片目の二人組が病院の前で話をしました。
この恩は一生忘れないと。
キミの助けになれたならこれ以上の喜びはないと。
男と親友は、軽く挨拶を済ませるとお互いの岐路へと着きました。
男の視界は、右側が少し狭くなったような気がしました。
けれども日常に支障はなく、義眼のおかげで怖がられることも全くありませんでした。
いつも通り、男は仕事をして人助けをする日々へと戻っていきました。
職場の人も、知り合いもみんな男の境遇を知っているので心配しました。
けれども男は健康そのもので、人離れしている様に驚きながらも、みんな安心しました。
男はそれからもいつもの日々を過ごしながら、今までの親友二人とも、定期的にご飯を食べに行きました。
変わらない様子に、男は安心して日々を過ごしていました。
男は、季節が移り変わり街が赤や緑、黄の電飾で彩られ始めると、年に一度の用事に思いを馳せます。
生まれてから家族ぐるみでの親友、幼馴染の誕生日がちょうどその時で、年に一度にその時期に会ってご飯を食べるのが恒例の行事になっていました。
男は、節約して捻出した外出費を手に親友と一緒にご飯を食べに出かけました。
親友は結婚していて、喋れるようになったばかりの子供もいます。
男はそんな幼馴染で親友のことが大好きでした。
お互いが忙しいので頻繁に会うことはできないのですが、一年に一回だけでも親友と会って、親友の幸せそうな姿と話しを聞くのがとても心地良いと感じていました。
毎回、男と親友はいつもとは全く違う場所に出かけて新しい景色を見ながらご飯を食べに行きました。
二人は、新しい思い出を増やしながら、懐かしい思い出に馳せて、また一年後の約束をしながらぐったりと帰っていくのです。
それが今の、二人のいつもの過ごし方になっていました。
今回は親友がイルミネーションが良いと言ったので、外のイルミネーションを見ながら屋台の食べ物を買って食べ歩くことにしました。
横並びに歩きながら食べ物の容器を片手に、キラキラと光るイルミネーションに照らされて、二人は近況や思い出話に、花を咲かせました。
しばらくして男は違和感を感じ始めました。
男と親友はいつものいつもの立ち位置があり、親友が右、男が左に立つことが多くありました。
しかし今回は、親友はどうしてか男の右側に立ち歩いています。
男がさりげなく位置を交換しようと思っても、なぜか親友はその位置を譲りません。
また、イルミネーションが頭上に飾られているにもかかわらず親友の顔は少しだけ俯いているように見えました。
親友は強い人だと男は知っています。
いつでも誰かを助けて、それでいて甘やかさない。男に似て非なるその在り方は、もどかしく憧れるものでした。
それゆえに親友は、我慢強い人であることも知っています。
そんな親友の様子が少しおかしいことがとても心配になりました。
男は親友を呼び止めました。
親友は返事をして止まりますが、男の方をチラリとも見ません。
親友の瞬きの数が減っていきます。
イルミネーションを見たいと言ったのは顔を照らされる心配がないから。
食べ歩きにしたのは、横並びならば向かい合う必要がないから。
顔が少し俯きがちだったのは、イルミネーションのことよりも頭いっぱいになっていることがあるから。
男は立ち止まった親友に近づき、正面に立ちました。
いつのまにか、親友の目からはキラキラと涙が溢れていました。
親友には五歳になる子供がいます。
とても可愛くて、少し掠れた声を持つ元気な子です。
しかし生まれてすぐの時、病院で様々な検査をしたときにある病気がその子を蝕んでいることがわかりました。
心臓が弱く、激しく動くと耐えきれずに動きを止めてしまうというものです。
そして体が大きくなるにつれても耐えきれずに、その動きをいつか止めてしまうというものでした。
男はとても驚き、そして辛くなりました。
親友はここ最近、毎回のように自分の子のことを幸せそうに話していました。
危なっかしくて目が離せない。自分で寝返りをうった。初めて自分のことを呼んでくれた。ようやく自分の足で立った。作ったご飯を美味しそうに食べてくれた。私に大好きって言ってくれた。
涙は親友の中から溢れて、こぼれ出し続けています。それでも親友は、男の目をずっと見据えていました。
それはまるで男の行動に釘を刺すように。
男をよく知っている親友は、男がどんな行動に出るのか全てわかっていました。
それゆえに、男にはこの問題を抱えてほしくないと思いました。
久しぶりに見た男は、返済に追われていて、右目を失っていて、それでいて尚他人の辛さをもらおうとしているように見えます。
あなたには何もできない。この悲しみはあなたには理解できない。この悲しみは時間が癒してくれる。いずれまた、違う幸せを私はきっと手に入れている。
親友は思ってもないことを言いながら、止まらない涙を流す目を背けて、それじゃあまた一年後にね、と言い放って帰っていきました。
残された男は、その場で何をすることもなく取り残されてしまいました。
男もその場を後にして、家へと帰っていきました。
家に帰ると携帯に、親友から突然帰ってごめんなさい。次は私に奢らせて、と短い文が届いていました。
男は、助けられなかった大好きな人を思いながらその日の残りを過ごしました。
また男はいつもの日々に戻っていきました。
幼馴染で親友のことは気にしてしまうけれども、釘を刺された以上、男は行動ができないのでそれならばいつも以上に手助けする人を増やしていきました。
それからまた、いつもの日々が始まりました。
仕事をして、人助けをして、親友と定期的に会って、そして色んな人から感謝される。
嘘です。
男は気がついていました。
すでにこの日常は、男が思っているいつもの日々ではないということにです。
街の人たちは、男を見るとヒーローのような扱いをするようになりました。
何もしていないのに感謝をされ、男のいないところで男の評価が上がる。
男は何もやっていないのに、感謝をされてしまいます。
嬉しいはずなのに、どこか後ろめたい。
どれだけ誰かを手助けしても、ずっと罪悪感を感じているように感じてしまいます。
親友の涙を、男は忘れることができません。
イルミネーションの暖色の光によってキラキラと光りながら、どこか冷たい色を輝かせている涙がどこか心の中に残り続けてしまうのです。
親友は優しいので、きっと男のことを思って関わるなと釘を刺したのだと、男は理解していました。
なんとかして、男は親友の助けになりたかったのです。
しかし、男が手を貸すと親友はどこか苦しんでしまうのではないかとも考えました。
男の日々でもう一つ変化したものがありました。
いつも通り、高校の親友と会うといつものように話しをしていました。
しかし、やはりここでも、ありがとうと言われることが多くなり、またごめんと言われることも増えました。
親友の目に映る男は、対等ではなくなってしまいました。
小学校の時の親友と会うと、またいつものように話をしていました。
お互いシンパシーを感じる事はあるのですが、どこか親友の目には感謝と深い悲しみの色を生み出しているように見えました。
みんながみんな、男に感謝をしていました。
男は、みんながありがとうと幸せそうにまた、いつもの日常に戻っていくのがとても大好きでした。
しかし、今はどこかみんなの中に男という恩が鎖となって縛り付けているように感じてしまいます。
男は自分がみんなの毒になっているのだと気がついてしまいました。
幼馴染の親友も、どこかその事に気がついていたから頼らなかったのかもしれません。
男は、泣いてしまいました。
自分の行いは、みんなを幸せにすると信じて疑わなかったのですが、結局みんなを本当の意味では幸せにできていなかったのです。
男はエゴの塊だったのです。
たくさん泣いて、たくさん叫んで、男は途方に暮れてしまいました。
男はどこか空っぽになりました。
初めて仕事を休みました。
初めて家に一日中いました。
初めて、誰の手助けもしませんでした。
男には考える時間ができました。
そして、次の人助けを最後にしようと決意しました。
大好きな幼馴染の親友のために、最後の人助けをしようと。
そして、もっとも迷惑のかからない方法を取ろうと。
みんなから毒を取り除き、親友の子を助ける方法は一つでした。
男の心臓を移植するのです。
しかし、男の国では生きている人間の心臓を移植することはできません。
それに男が死んだとみんなが気づいてしまったら、毒を残したままになってしまいます。
死んでもみんなに迷惑をかけるなんてことはしたくありません。
なので、迷惑のかからないように人に手伝ってもらうことにしました。
男はすぐに、今まで手助けをした人の中の一人に相談をしてみることにしました。
今までに男は、様々な人を分け隔てなく助けてきました。お年寄りから子供、警察官からヤクザまでです。
そのヤクザの人を助けた時、この恩は絶対に忘れない。困ったことがあったら連絡してくれ。と連絡先を渡されていました。
今の男にはぴったりの相談先だったかもしれません。
すぐにヤクザの事務所で会うことになり、男はその事務所で今までの行いや考え、そしてこれから行おうとしていることをヤクザに伝えました。
ヤクザは驚き何を馬鹿な事を言っているんだと言うふうに宥めながら話を聞いていましたが、次第に男の話を聞き続けていると真面目な顔つきになって黙りこくりました。
流石に無茶なお願いだったかもしれないと男は、また目の前の人を困らせてしまったことに辛くなりました。
ヤクザはゆっくりと口を開くと、男の行動は間抜けなものだが、信念の貫き方はとても共感できる。そして、その信念を貫くことはとても辛く淋しいものだと知っている。そういう風に男の願いを叶えるとヤクザはその場で約束しました。
男とヤクザは、どのようにして男の存在をなくしていくか相談していきました。
そして、一つの案を考えました。
すぐにそれを実行したいと男は言うと、ヤクザは携帯を手に取り様々な人たちと連絡を取りはじめました。
手術をする日は、明日。
男は家に帰ると、大家さんに今日引っ越すことになったと話し家を引き払いました。
男は持っているものを全て捨てました。
親友たちには、海外へボランティアに行くと絵はがきを書きました。
仕事場にも、辞表届けを出して男にはもう何も抱えるものがなくなりました。
男は昼間だと言うのに、公園のベンチでゆっくりと過ごしました。ベンチは木の葉に受け止められなかった日の光が、まだらに男へと降り注いでいました。
男は思いを馳せます。自分の存在しない世界。
その街には、誰かに助けられて人生が少し楽になった人たちが住んでいます。
でも誰もが助けられたと言う気負いをせず、前へと進むことのできている世界です。
助けてくれた誰かは、きっとどこかでまた人を助けて幸せそうな顔をしているのです。
誰かの大好きな三人の親友も、きっとこれから男という毒が抜けていくと思います。その時、きっと男の考える幸せな世界があって、それはとても良いことで。
その世界を見ないことを少し惜しいと考えてしまいますが、そんなことよりもその世界に想いを馳せている瞬間がとても幸せな気がしました。
男をとめる人はいません。
次の日、幼馴染の親友の元に病院からドナーが見つかったと連絡がありました。
ドナーの身元は明かせないが健康的な男性の心臓が提供されたので今すぐに手術を行えば、あなたの子供は助かるだろうと話されました。
親友は涙を流しました。
自分は今とても幸せだと。
しかし誰かの不幸の上に成り立ってしまった幸せなのかもしれないと、ふと考えてしまいました。
どこか男の顔が浮かんでしまいます。
今朝突然に届いた便りは、理由は男らしくあるものの、どこかいつもを好む男らしくない行動のように思えてしまいました。
絵葉書には「僕はもっと幸せになれるとこにいるから、君もきっと幸せになれる」と丁寧に文字が書かれていました。
乾いた木々や草が所々に生え、赤褐色の土がどこまでも続く先に日が沈んでいる様子の絵葉書の写真を見ると、暫くは会えそうにないねっと呟きました。
カレンダーが何度か捲られて病室に空きが一つできた頃、いつもの日々が戻ってきました。
みんなは学校へ行き、仕事へ行き、ご飯を食べに行き、友達と会って、本を読んで、絵を描いて、歌を歌って、家族と過ごして、いつものカフェで親友と会って、欠けたピースの無い日常がそこにはあります。
しかもその街は特別みんな親切で、困っている人がいたらすぐに誰かが手助けをしています。
この街ではみんながみんな誰かに助けられたことのある人ばかりで、みんなも誰かを助けて過ごしています。
誰かの高校生の時の親友は、真面目に仕事をして大切な人を見つけて幸せに生活を送っています。
誰かの小学生の時の親友は、描いた絵が評価を され今では余計なことを考える暇なく絵を描き続けています。
誰かの幼馴染の親友は、家族が全員揃ったことがとても久しぶりでどこか浮ついた空気の中で、これからやりたい事をたくさん話し合っています。
誰かを知っているヤクザは、誰かの信念のためにたまに絵葉書を買っては適当な人へと送っています。
この街に、誰かのために辛くなる人はいなくなりました。
それからカレンダーがいくつか買いかえられた後、いつもの公園に胸に手術の跡を残したある少年がいました。
その少年は誰かの役に立つのがとても大好きで色んな人の手助けをしていました。
しかし、少年はいつも「ありがとう」と言われるとたくさん涙が出てしまいます。
悲しくもないのに胸がきゅっとなり、いつまでも涙が止まらなくなるのでした。
幸せな男
優しさはエゴであると男は気づいていると思います。
良いことをしているはずなのに悪いことをしている気分になる男は結局どの世界線でも同じ結末を迎えると思います。