短々落語「願かけ」
400文字以内のショートショート落語臭
「願かけ」
熊さん、知ってるかい?
なんだい、ご隠居。
落語が小学生の国語の教科書に載る時代になったよ。
なにかい、小学生が落語を習うのかい。こいつは面白れぇ、これで日本の将来は、笑いのウツボでさぁ。
熊さん、それを言うなら、ウツボじゃなく、笑いの坩堝だよ。くれぐれもうつつを抜かすんじゃないよ。
あいよ
(年が明け、一月睦月の寒いころ)
ご隠居てぇへんだ。
どうしたんだい、熊さん。
寄席に沢山の若者が並んでらぁ。おいよせ、なんつって。
それがどうしたっていうんだい。
何でも皆が皆、赤い本をもっているんだ、だから、おいら不思議に思ってね、今聞かないと、夜もよちよち寝られねぇと思ってね、そうそう、おいら地下鉄をどこから入れたか考えだすと寝れなくなっちゃうタイプだろ、でね、ちょいと尋ねたんだ、そしたらどうやら皆さん、大学の受験生らしい。
熊さん、それは紫紺亭の十八番を聴きに行ったんだよ。
なぜだい。
落ちがないからね。つまり願かけさ。
短々落語「願かけ」
お後がよろしいようで。