短々落語「饅頭屋こわい」
400文字以内のショートショート落語臭
「饅頭屋こわい」
店主、お勧めは何だい。
えーうちは桜餅が有名で三つ入りが定番、二入りもよく出ます。
どれどれ、この桃色に綺麗に染まっているやつかい。
えぇそうでやす。最近顔料が高騰し、手に入らないもんでして職人が身を削って染めております。
あぁそうかい、それにしても随分と一つが大きいねぇ。
えぇそうでやす。うちは個数ごとの入れ替わり専属制をとらせて頂いております。あっちの指3本機械で落とした者が3つ、あっちの指2本ない者が2つ入りの担当でございます。やはり糯米も品薄で、こちらも職人が身を削りながら作っております。
一ついくらだい。
外装の蓋ありと蓋なしで値段は異なります。蓋ありで一つ百円、なしで一つ十万でございます。
えっなにかい、蓋なしの方が高いのかい。
えぇ蓋一つ百万となりますので。何しろ命がかかっているものでして。
それを言っちゃ、身も蓋もありゃしない。
旦那、馬鹿な事を言っちゃいけません、五つも四つもございます。
短々落語「饅頭屋こわい」
お後がよろしいようで。